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018-025 正義の戦いとはズレがある

023 俺は生きる理由を見失わない

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 さあ、オートセーブだったろう? もう一度ボス戦の手前からロードし直してくれ。あんなのは初見殺しのアクションアドベンチャーゲームだ。死んで覚えれば次は上手くやれる。

 ……。

 おい、女神! 無視すんな!!

 ……。

 聞いてるくせに無視すんな!?

 …………。

 異世界転生者、両成敗に失敗しこの世を去る。そんな終わり方を誰が望んでいるんだよ。



 深い傷を負った俺は痛いのか熱いのか。身体はどうなっているのか分からない。とうに意識はぼんやりでスローモーションにもなる。この洞窟の冷気に今頃気付いてか、寒くて震えだしてくる。

 そんな折にサイレンの音が俺の脳内に響いた。まさか異世界で救急車なんてものが動いているわけがない。ましてや洞窟だ。これはたぶん俺の前世の記憶だろうな。

 俺は、この転生前に出会ったあの女神が嫌いだ。馬が合わない。性格が本当に悪い。このサイレンも、あの女神が意図的に聞かせている嫌がらせに違いないからな。どうせ人の死に目に笑ってんだろ。しかし……。

「……そうだよ。俺は死ねないんだった。大事なことを思い出させてくれてどうも。でも、ちょっとやり方が最低過ぎるぞ」

 女神の嘲笑ちょうしょうが聞こえた気がして、俺の意識はチャンネルが切れるみたいに落ちた。

 そして目覚める。見覚えがあるような、無いような、岩肌の洞窟みたいな場所に直立。

「って。なんか俺、透き通ってない!?」

 俺は半透明だった。ロードデータじゃなくて死者目線!? どうなってんのよと回転していたら、ちょうどケンシとユーミンが半透明の俺を見ていたようだ。

 石みたいに固まっちゃって。まるで幽霊でも見てるみたいだ。そういえばこの二人は、どっちが魔物を多く狩れるか勝負していたんだったな。

「結局お前ら。どっちが多く狩れたんだ?」

「ぎゃあああああ!!」

 しばらく会話しなかった間にケンシとユーミンは俺のことを忘れたのか。絶叫しながら猛ダッシュで引き返して行った。

 後ほど声が聞こえるなと思えば「幽霊! 幽霊! 幽霊!」のセリフだった。当然聞き覚えがあった。なるほどなと理解したら、やっぱり「幽霊はNGなんだな」と笑っている俺の姿も見え始めた。

「あ、あれ? 転生者殿? あ、あれれ?」

 一本道で隠れるところも無いため半透明の俺はプイプイに見つかってしまう。だが「あれれ?」と立て続けに言ったのは、プイプイの横にいたはずの俺が消えて、半透明だった俺がちゃんと実体化したという不思議現象が起こったからだ。

 ケンシとユーミンはゾッとしたことだろう。だからあえて俺は「幽霊かもな」と驚かし、あとは何にも無かったかのように合流して先へ進む。

 この先では、ルリアと隊長と副隊長が戦いを始めている。
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