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018-025 正義の戦いとはズレがある

024 俺は二度目を失敗させない

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「あの姿では逃げるだけだ。一度ブラッドガローになってもらおう。そうすれば嫌でも戦える」

 その案を仲間の四人は了解する。副隊長は短い詠唱と共に唱えた。その魔法は太陽神の力を得る。

「レグネグド・ダ・ルミナス!!」

 二度目に目の当たりにした大きな魔法だった。っていうかセリフも地の文も二度目だ。つまりここまでは同じシナリオで進んだ。

 太陽神レグネグドが現れる。そいつが技を出されたらルリアはブラッドガローに変身し、俺なんかじゃ手を付けられなくなるな。

 だったらその前が勝負だ。正直、今からやる事は気が進まない。だが俺にはこれしか無い!

 俺は両手を合わせて神様に祈るポーズを取った。長年の生活で自然とこれが出たが、もしかしたら西洋的なポーズの方が良かったかもしれない。でもそれはどうやってやるのか知らん。

 それから詠唱だな。

「えーっと、女神よ! な、名前は忘れた……今度覚えとく。それより時間無いから頼む! 力貸してくれよ!?」

 女神は答えてくれた。太陽神を呼び出した時よりも、もっと巨大な魔法陣が天井付近に現れている。魔法陣の位置はそこかよ!? なんて思うが、分からん。やってみる。

「おお、転生者の魔法か。すごいぞ!」

 ああ、そうだ。エグい魔法なんだ。俺はあの作品とあの美少女が大好きでな……。

「いくぞ! エク◯プロージョン・ドッカーン!!」

 それは文字通りドッカーンといった。俺の爆炎魔法。あの子は見ていてくれたかな……。爆風で天井が砕けて落ちて、炎が石を溶かして熱々のマグマにしているけど。

 そう……。全員ここで死ぬのさ。なんて悪役は言いそうだが、俺はやり過ぎた。こんなはずでは無かった。

 しかしだ。しかしだよ? 呼び出された太陽神は神だから昇天して逃げるとして。特待偵察チームはさすがレベルの高い戦士である。彼らはいわゆるテレポートを使う。危ないと分かれば瞬時に洞窟の外へ出られる。

 じゃあここでテスト問題です。こんな大窯おおがまの中で、最も生き残る確率が低いのは誰でしょう。そう、俺ぇ~。そんな神がかったことが出来ない一般人転生者の俺ぇ~。

「転生者殿!!」

「はっ!?」

 呼び掛けられた方に伸ばす手あり。男の手だとは知らないで、俺は必死にそれを掴んだ。すると俺は洞窟の外へ逃げられた。爽やかな風が吹く青空の下でプイプイが手を離す。

「危機一髪だったな。転生者殿」

 なんてことだ。プイプイは俺のことをもっと好きにさせて一体どうするつもりなんだ。
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