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044-050 最低な男は絶望の末に思い知る

049 俺は男の機能が使えない

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 朝日が昇ったら俺は、とある男を探した。男は先に起きていて湖の水で沐浴中だ。

 半透明なのに朝から丁寧なことするんだな。と、関心している余裕は俺には無かった。

「レイゼドール。言霊ことだまって信じるか?」

 呼び出して水から上がらせたら、俺はほとんど無意識でそう言っている。もちろん相手からは「はあ?」って顔をされた。

 それには俺も「はぁ……」となる。元気がない俺をののしっても面白くないと、レイゼドールは思ったのだろう。

 誰かが乗り捨てた木製ボートがひっくり返っている。そこに俺を座らせてから「どうしたよ」と聞いてくれた。

 ありがとう。これは男同士でしか話せない悩みなんだ。

「昨晩、女騎士が俺を襲ってきた」

 こう言うと、殺しに来たのか!? あの女め!! と、血相を変えるのが凡人パターンである。レイゼドールは偉人なので返しが違う。

「……どうだった」

 溜めた言葉のあとには生唾を飲んでいた。

 俺は落ち込んでいるので、張り倒そうとはならず。静かに首を振っている。

「何もしていない。出来なかった」

 レイゼドールは自分の膝を叩いて「おいおい」と頭を抱えている。そうやって失望してもらって構わない。でも続きがあるんだ。俺から言わせてくれ。

「……興奮しない。女騎士に会ってから、ずっと。どんなに近くに居ても、裸を見ても、触っても。全く俺は興奮しない」

 言いながら記憶をたどり、俺の言葉は途切れない。

「前に村の娘さんの喘ぎ声を聞いたことがある。その時は興奮した。でも冷静だった。その後で魅惑的な女性とキスをした。そこでは俺はある程度興奮していたと思う。その後で会うのが女騎士。確かにセクシーさは皆無だけどな、あれだけのことをしておいて女騎士にだけ欲情が湧かないのは、異常なんじゃないだろうかと思うだろ」

「ちょ、ちょい待ち! なんかすげえハーレムしてないか!? そっちの転生生活!」

 俺は怖くて震えている。正直、今のはレイゼドールが何を言っていたのか耳に入ってこなかった。

「えっと。言霊って言っただろう? あれはそれと関係があるの?」

「ああ。俺は村の娘さんに会った最初の頃、下心で近付くために『転生者は転生と引き換えに性欲を失う』と嘘付いたんだ」

 ……そうだ。それでも思い出した。

「娘さんの爆弾型のそれがな、腕に押し当てられたのも良かった。俺はちゃんと覚えている。ちゃんと興奮していた……!!」

 高揚する気持ちと、ただならぬ絶望が、俺をいたぶっている。

「俺はどうすればいい!? どうなっている!?」

 英雄神レイゼドールの答えはシンプルではいかなかった。

「分かった。一旦整理しよう。初めから詳しく各エピソードを聞かせてくれ」

 俺は静かに「そうだな」と告げる。
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