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051-055【第三幕】命がけの脱獄・性転!?
054 俺は変化に気付けない
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「やだ、ちょっと放しなさいよ! 私たちは弁護人だって言ってるでしょ!? 弁護人って言ったら弁護人なの!!」
きっとフィーカの作戦通りだ。ああやって四人中、三人の門番を引き付ける戦法なんだな。わめき散らして迷惑を掛けて、確かに門番も手こずっている。
俺の方は一対一。相手門番は何か知らないが鈍感な男で、ずっと俺を見て首を傾げたままだ。これなら何とかしようがある。
よし。久しぶりに戦闘だ……! 剣を出そうとした時「きゃあっ!!」と、フィーカが叫んだ。すると門番の男たちは、咄嗟に自分らの行いを良くないものとしたのだろうか。パッと彼女から手を放したようだ。
フィーカは地面に転けていた。端から見えている絵面は、集団で女を囲んで確かに良くないな。
「もう、嫌だ……乱暴なこと……しないでよ……」
晴れた真昼の秋空の下、ここにいる男たち全員が石となる。女装させられた俺もだ。それぞれがそれぞれの意味でショックを受けている。
奴らがポカンとする隙に、俺とフィーカは走って要塞の城へ侵入した。
「お前、あんなこと出来たのか!?」
「なに? あんなことって。私なにかした?」
フィーカは彼女自身の落ちていた肩紐を、よいしょと元に戻している。
まあいいや。俺からはそれ以上のことは、何も言わないことにした。
それより色々なことの説明が欠けているな。まずはどうして俺が裁判にかけられて、捕まったのか。勘の鋭い読者なら、俺を訴えた人物がフィーカだってことも薄々気付いているかもしれない。フィーカリアンスなんとかかんとか。それが彼女の名前だからな。
経緯は割愛だ。語っている時間も無い。こうしている間にも、この世界では新しい時代に向けて、変化の大波を荒らしているのだ。
「特待偵察チームに会うぞ」
「そうね。その方が早いと思っていた」
裁判官やら警察やらが往来する廊下。俺はそこを堂々と歩いた。不思議なことに誰も転生者がここにいると気付かない。
不思議なことに、俺と目が合っても会釈をするだけで何ともない。
不思議なことに……俺を男だと疑う者がいない?
「なあ、フィーカ」
「なあに?」
「俺に変なもの飲ませてないよな?」
「失礼ね。薬を盛ったりなんかしないわよ」
だったら良いんだが……。
しかしなんだろうな。このドレスも何か体にフィットするというか変な心地だ。慣れてきたとはまた別の。真紅の色も、目にチカチカしてこない。
考え事に夢中になっていると、俺は横道から出てきた人に気付けなかった。
「きゃあ!!」
女の悲鳴が聞こえた。俺は人にぶつかって絨毯の上に転んでいた。スカートの裾から足が出ていたので、咄嗟に隠して、たじたじになる。
そんな俺に手が差し出された。女のものとは思えない、よく日焼けしたゴツゴツした手である。
「すみません、大丈夫ですか? お嬢さん」
それ俺に声を掛けているのか? 引き上げてもらった俺の手の方が、白くてスッとした女のような手だ。
きっとフィーカの作戦通りだ。ああやって四人中、三人の門番を引き付ける戦法なんだな。わめき散らして迷惑を掛けて、確かに門番も手こずっている。
俺の方は一対一。相手門番は何か知らないが鈍感な男で、ずっと俺を見て首を傾げたままだ。これなら何とかしようがある。
よし。久しぶりに戦闘だ……! 剣を出そうとした時「きゃあっ!!」と、フィーカが叫んだ。すると門番の男たちは、咄嗟に自分らの行いを良くないものとしたのだろうか。パッと彼女から手を放したようだ。
フィーカは地面に転けていた。端から見えている絵面は、集団で女を囲んで確かに良くないな。
「もう、嫌だ……乱暴なこと……しないでよ……」
晴れた真昼の秋空の下、ここにいる男たち全員が石となる。女装させられた俺もだ。それぞれがそれぞれの意味でショックを受けている。
奴らがポカンとする隙に、俺とフィーカは走って要塞の城へ侵入した。
「お前、あんなこと出来たのか!?」
「なに? あんなことって。私なにかした?」
フィーカは彼女自身の落ちていた肩紐を、よいしょと元に戻している。
まあいいや。俺からはそれ以上のことは、何も言わないことにした。
それより色々なことの説明が欠けているな。まずはどうして俺が裁判にかけられて、捕まったのか。勘の鋭い読者なら、俺を訴えた人物がフィーカだってことも薄々気付いているかもしれない。フィーカリアンスなんとかかんとか。それが彼女の名前だからな。
経緯は割愛だ。語っている時間も無い。こうしている間にも、この世界では新しい時代に向けて、変化の大波を荒らしているのだ。
「特待偵察チームに会うぞ」
「そうね。その方が早いと思っていた」
裁判官やら警察やらが往来する廊下。俺はそこを堂々と歩いた。不思議なことに誰も転生者がここにいると気付かない。
不思議なことに、俺と目が合っても会釈をするだけで何ともない。
不思議なことに……俺を男だと疑う者がいない?
「なあ、フィーカ」
「なあに?」
「俺に変なもの飲ませてないよな?」
「失礼ね。薬を盛ったりなんかしないわよ」
だったら良いんだが……。
しかしなんだろうな。このドレスも何か体にフィットするというか変な心地だ。慣れてきたとはまた別の。真紅の色も、目にチカチカしてこない。
考え事に夢中になっていると、俺は横道から出てきた人に気付けなかった。
「きゃあ!!」
女の悲鳴が聞こえた。俺は人にぶつかって絨毯の上に転んでいた。スカートの裾から足が出ていたので、咄嗟に隠して、たじたじになる。
そんな俺に手が差し出された。女のものとは思えない、よく日焼けしたゴツゴツした手である。
「すみません、大丈夫ですか? お嬢さん」
それ俺に声を掛けているのか? 引き上げてもらった俺の手の方が、白くてスッとした女のような手だ。
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