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039-041 近年まれに見ない残虐な戦い

041 俺は[ピー]を明かさない

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 もっとも正義感強めのお叱りはいらない。「思った展開と違いました。幻滅しました」とか「もっとやりようがあったんじゃないですか?」も、やめてくれ。どうか結果だけを見て欲しい。

 俺はレイゼドールに勝った。やり方はどうあれな。奴は俺にひれ伏し、力になると言った。要するに召喚獣を手に入れたって感じだと俺は捉えてある。

『レイゼドール。殺処分希望。ただし殺すな』だったか? 女神バウンティもクリアした。項目は綺麗さっぱり無くなっている。

 清々しい気持ちで祠を出るが、なんか納得のいかない女が、俺にはまだ付きまとったままだった。

「ねえ、あんな戦い方って卑怯だと思うわ。人を小馬鹿にして傷付けるなんて乱暴じゃない?」

 俺が何も言わなくても女騎士は続けた。

「私だって意味不明だったわよ。[ピー]とか[ピー]とか[ピー]だったかしら。あなたの世界の言葉は難解よ。あんなの私でもおかしくなっちゃう」

「おかしいのはお前だよ」

 ……いかんいかん。無視を決め込んでいたのに、つい口から出てしまった。俺がこんな淫乱女と仲良くしていると思われたら人生が狂ってしまう。

 街に出たらどうやって女騎士をいて逃げようかと考えていた。その間も執拗に話しかけてきたがスルーに徹した。

「そうやって教えない気ね。……だったら、真実薬を飲んでもらうしかないわよ!!」

 物騒な薬品を小耳に挟んだ時、俺は身の危険を察知する。しかしもう遅く、女騎士は俺を羽交い締めに出来ない代わりに飛びかかっておんぶ状態になった。

「さあ、飲みなさい!!」

 小瓶を持つ手にせまられる。さすがに俺は「やめといた方が良いって!」と叫んだ。

「そこで何をしている!?」

 そこへオッサンの声が振りかかった。しまった。男性厳禁だったのを忘れていた。うっかり俺は俺の姿のままで歩いていた。

 だが、状況は違うみたいだ。

「お、お父さん!?」

 俺の背中から女騎士がそう言っている。だとしたら、早かれ遅かれ聞かれることになるだろうな。

「その男は何だ!?」

 いや、早速そうなったか。

 女騎士はそっと地面に降りて、少し躊躇ったあと答えを出した。

「……こ、恋人……候補」

 候補……。
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