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091-095 今度こそ終わらせよう
094 俺は作戦なんか聞きたくない
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大盛り上がりの野外コンサート。場所は地下なので、野外と呼んで正しいのかは別として。
観客はヘイト民族だった。そこへ混ざった太陽神レグネグドは一番目立っている。まさか音楽を通じれば敵も味方もひとつになれるって戦法なのか?
「おい、レグネグド! 楽しんでる場合じゃないぞ!」
声をかけたのでは爆音に消されて届かない。太陽神の巨体によじ登って、耳の横で叫ぶことでやっと届いた。
「イメージアップはどうした!? 根絶やしにするんだろ!?」
「ヨーパラを生で見られるなんて感激だよ!!」
「そんなこと言ってる時か!?」
「ファンクラブに入っていてもチケットが全然取れないんだ!!」
俺の話をまるで聞いていない。
ヘイト達はこの開演をどこかで潜んで待っていたのか。まさかここで魔石を奪って太陽神を倒そうと?
俺はハッとする。しかし太陽神は相変わらずヨーパラに夢中だった。俺の独り言に留められて安堵した時、人の影に紛れて誰かが俺の手を引いた。
「転生者様、こっちへ」
ルリアだ。だが俺はその手を払う。
「余計なことを俺に吹き込まないでくれ」
ルリアの落ち着いた表情に、ヨーパラ演出の七色ライトが断片として映っている。やっぱりルリアは美人だ。俺のヒロインであって欲しかった。
「魔石を破壊します」
「……え?」
俺は作戦を聞いてしまった。これでもう、太陽神レグネグドに気付かれないというのは無理になる。
神は人の心が読めるんだぞ。ルリアはその事を知らないのか? いいや、彼女は当然知っている。その上で続けた。
「太陽神レグネグドを倒します」
ヨーパラの方はメドレーに入っている。まだ太陽神の注意はそっちに向いている。
「どうやって倒す?」
ルリアはその舞台の方に視線を移した。
「不意を突いて、一気に」
「一気に……」
するとその時、上へ大きな花火が舞い上がる。サプライズではなく、ヨーパラの楽曲では定番の演出らしかった。
観客は次にメンバーが出すコールを待っていた。レスポンスの一体感は半端なく、もちろん太陽神にもズレがない。
そして舞台の中央に堂々と登場したのだ。ボーリングの玉くらいに大きな石の塊が。それを誰が見てどう反応するかで、敵と味方がくっきり別れるだろう。
待ちわびていたと大きな歓声が沸き上がる。その中で、太陽神だけが面白いほど狼狽えていた。
音楽は演出を効かせて止まった。神への制裁をリズミカルに盛り上げ、遊んでやろうというつもりでは無いらしい。
元おっさんアイドルはイヤモニを外し、全域に届けるマイクに持ち変えてから、すっきりした若者の顔と声で告げる。
「ご観客の皆さん。このディスティニーをサンキュー。がんちゃんことガングローです。……ここに因縁を生んだ魔石がある。どんな因縁かは知っているよね? 大丈夫。胸の中に留めておいて? 君たちは少々不幸を生みすぎたみたいだ。ヘイト民族、太陽神。どちらが悪いも良いも無いよ。不幸な未来なんて、ここにいる全員のディスティニーじゃない」
マイクの電源を切る。そのアイドルは、じわりと浮かぶ青い光を体に纏った。
そのままマイクを直下へ振り下ろし、魔石に打撃を与えた。
観客はヘイト民族だった。そこへ混ざった太陽神レグネグドは一番目立っている。まさか音楽を通じれば敵も味方もひとつになれるって戦法なのか?
「おい、レグネグド! 楽しんでる場合じゃないぞ!」
声をかけたのでは爆音に消されて届かない。太陽神の巨体によじ登って、耳の横で叫ぶことでやっと届いた。
「イメージアップはどうした!? 根絶やしにするんだろ!?」
「ヨーパラを生で見られるなんて感激だよ!!」
「そんなこと言ってる時か!?」
「ファンクラブに入っていてもチケットが全然取れないんだ!!」
俺の話をまるで聞いていない。
ヘイト達はこの開演をどこかで潜んで待っていたのか。まさかここで魔石を奪って太陽神を倒そうと?
俺はハッとする。しかし太陽神は相変わらずヨーパラに夢中だった。俺の独り言に留められて安堵した時、人の影に紛れて誰かが俺の手を引いた。
「転生者様、こっちへ」
ルリアだ。だが俺はその手を払う。
「余計なことを俺に吹き込まないでくれ」
ルリアの落ち着いた表情に、ヨーパラ演出の七色ライトが断片として映っている。やっぱりルリアは美人だ。俺のヒロインであって欲しかった。
「魔石を破壊します」
「……え?」
俺は作戦を聞いてしまった。これでもう、太陽神レグネグドに気付かれないというのは無理になる。
神は人の心が読めるんだぞ。ルリアはその事を知らないのか? いいや、彼女は当然知っている。その上で続けた。
「太陽神レグネグドを倒します」
ヨーパラの方はメドレーに入っている。まだ太陽神の注意はそっちに向いている。
「どうやって倒す?」
ルリアはその舞台の方に視線を移した。
「不意を突いて、一気に」
「一気に……」
するとその時、上へ大きな花火が舞い上がる。サプライズではなく、ヨーパラの楽曲では定番の演出らしかった。
観客は次にメンバーが出すコールを待っていた。レスポンスの一体感は半端なく、もちろん太陽神にもズレがない。
そして舞台の中央に堂々と登場したのだ。ボーリングの玉くらいに大きな石の塊が。それを誰が見てどう反応するかで、敵と味方がくっきり別れるだろう。
待ちわびていたと大きな歓声が沸き上がる。その中で、太陽神だけが面白いほど狼狽えていた。
音楽は演出を効かせて止まった。神への制裁をリズミカルに盛り上げ、遊んでやろうというつもりでは無いらしい。
元おっさんアイドルはイヤモニを外し、全域に届けるマイクに持ち変えてから、すっきりした若者の顔と声で告げる。
「ご観客の皆さん。このディスティニーをサンキュー。がんちゃんことガングローです。……ここに因縁を生んだ魔石がある。どんな因縁かは知っているよね? 大丈夫。胸の中に留めておいて? 君たちは少々不幸を生みすぎたみたいだ。ヘイト民族、太陽神。どちらが悪いも良いも無いよ。不幸な未来なんて、ここにいる全員のディスティニーじゃない」
マイクの電源を切る。そのアイドルは、じわりと浮かぶ青い光を体に纏った。
そのままマイクを直下へ振り下ろし、魔石に打撃を与えた。
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