EARTH STRIDER 〔アースストライダー〕

とと

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第1章〔地球編〕

32.初めての犠牲

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未室希跡、キアトの磁気能力は砂鉄を撒き散らして小さな砂嵐を作った。

「キアトの磁気能力、あんなこともできるなんて知らなかった……」

私、神代ひろなは改めてキアトの能力の凄さを実感した。

キアトと未室愛亜、あっちゃはマルクから飛び降り、地上へと死神デスモデルの黒いマントを羽織ったデスカウントを誘き寄せた。

「キア兄は左側に回って剣を作って!あっ、解っていると思うけどバカデカイ剣じゃないよ!」

「うっせぇ!解ってる!」

キアトは妹のあっちゃに悪態をつきながら左側へと移動し、左手に集中した。

砂鉄の砂嵐の一部はみるみるとキアトの左手に集中し、剣を作り、キアトは墜落したマルクの鋼鉄のボディーを踏み台にし、ジャンプし、迫るデスカウントに剣を振り上げた。

あっちゃは地上で右拳を集中し、いつでもデスカウントに当てれるように身構えた。

キアトの剣が振り落とされ、デスカウントの頭部を狙う。

デスカウントは簡単に鎌で受け止め、キアトは舌打ちしながらその反動を利用し、空中で後退した。

あっちゃはデスカウントがキアトに向いたその瞬間を逃さず、両足を集中し、デスカウントに向かってジャンプした。

あっちゃの右拳がデスカウントのボディーを狙うが、デスカウントはマントを使い、あっちゃを払いのけた。

キアトとあっちゃが地上へと着地し、デスカウントもまた地上に着地した。

「ねぇ、ひろな、キアトとあっちゃ大丈夫?やられたりしないよね?」

まゆが戦況を見守りながら私に問いかけた。正直、まゆの問いかけに私は答えられなかった。

「……仙道さんが戻るまでの辛抱だ。まゆ、申し訳ないけど、ボクの考えではキアトとあっちゃが勝てる見込みは……」

替わりにユウヤがまゆに答えにユウヤは深呼吸を一つした。

「悪いが1%だ」

「そんな……」

超頭脳能力を持つユウヤの分析には現実味があり、その残酷な答えにまゆは腰を落とし涙を流した。私も腰は落とさなかったけど、口に手を当て涙を流した。

「ほう、貴様がマザーウィッチを作ったユウヤ・スドーか。私のデスカウントの強さを理解してくれたのは有難いが、1%とは納得できないな?」

トム・セッツガーが壊れて活動しなくなった誰かのWEGSの残骸に、もたれ腕を組みながら言った。

「0%だと思うのだがな?」

トム・セッツガーはそう答え、ゆっくりとマルクに向かって歩き始めた。

「キア兄、あっちゃとキア兄の勝率は1%だって」

「らしいな……、へっ、1%しかねぇのか?」

そんな絶望的な勝率に何故かキアトとあっちゃが笑う。

トムはキアトとあっちゃの発言に歩みを止めた。

「気に入らんな……、デスカウントよ、即、処刑しろ」

トムの命令にデスカウントが鎌を振り回し、マントを背中に払い、身構えた。

「来るぞ!」

キアトは剣を握りしめ、あっちゃも拳法のような構えをとる。

デスカウントが低空で浮き、まずはあっちゃへと向かう。

キアトが走りながらデスカウントを追い、デスカウントは鎌をあっちゃへと横一閃する。あっちゃは鎌に手を置き、反動でジャンプして交わしたが、デスカウントはあっちゃの右足を掴み、迫るキアトへとあっちゃを投げ捨てた。

勢いを着けたあっちゃの全身は迫るキアトの勢いと激突し、二人共地面へと勢いよく倒れた。

「「きゃあ!」」

私とまゆが悲鳴をあげた。キアトとあっちゃは地面で流血しながら痛みにもがき苦しんでいた。

「重症だな。今の激突で、二人は骨折の一つや二つどころではないだろう……」

トムが勝利を確信し、デスカウントへと振り向いた。

「デスカウント、死刑執行だ」

その一言にデスカウントはキアトへと近づき、鎌を振り上げた。

私とまゆは泣き叫び、キアトに逃げるように言った。キアトは地上で痛みのせいで避けることができない。あっちゃもキアトに向かって手を差し伸ばすが身体が言うことを効かなかった。

デスカウントは容赦なくキアトへと鎌を、まるでギロチンのように無情に落とした。

私達は目を思い切り綴じて顔を背けた。

嫌な音が耳に響き渡った。人間、斬られたら金属のようにいびつな音をたてるだなと感じた。

金属を裂く音。金属を裂く音?生身の人間にそんな音はでない。

私は恐る恐る目をあけると、その光景にさらに絶望した。

「な、なんで?」

言ったのはあっちゃだった。

「なんでだよ?なんでお前が……」

その声はキアトだった。キアトは生きていた。

「お前がオレを庇うんだよ!?」

キアトは突然、涙を流しながら叫んだ。

キアトは守られたんだ。

キアトを守ったのは、五十のWEGSの一体で、犬のような形をした名もなきWEGSだった。

名もなきWEGSはデスカウントの鎌を身を持って制止て、身体を真っ二つにされ、私が目をあけた時にはすでに活動しなくなっていた。生き物で言うと即死の状態だった。

辺りを見ると五十のWEGSは知らない間にキアトやあっちゃ、デスカウントを中心にして囲んでいた。

キアトは、ううん、その光景を見たあっちゃ、ユウヤ、くるみ、まゆ、そして私は涙を流すしかなかった。

初めての犠牲、名もなき犬のようなWEGSの変わり果てた姿に……
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