EARTH STRIDER 〔アースストライダー〕

とと

文字の大きさ
3 / 54
Prolog〔過去と未来の想い〕

一九八八年四月

しおりを挟む
   西陽が錆び付いた鉄屑の山を照らし、私の目を細めた。

人間の身体よりも大きな鉄の塊や、何かの部品になりそうな機械の破片やらが十メートル以上はある山となり、その場に何十も鉄屑の山は存在していた。

通称、瓦礫の山。その地域に住む私達住人はそう呼んでいた。

瓦礫の山、それは十年前の大戦の名残であり、WEGSウェグスと呼ばれるロボット(もしくはサイボーグ、マシン、人それぞれにより呼び名は違うが)の残骸であった。言葉は余り良くないけど、WEGSの墓場と呼ぶ人もいる。

現在、西暦一九八八年四月。この場所は日本の愛知県と呼ばれる場所であり、私達の故郷でもある。

瓦礫の山の周りには広大なる平原と至る場に生える木々、遠くを見渡せば、御岳山や鈴鹿山脈等の山々が美しく見える。

また平原には様々な動物もおり、ニホンオオカミやナウマンゾウ等が優雅に暮らしいる。さらに岐阜や長野に行けば、サーベルタイガーやマンモス等が生息しているが、話しがずれてしまうのでまた詳しく話そうと思う。

私は今、瓦礫の山にいる。私はここまでの移動手段、バイクから降り、瓦礫の山の頂きに顔を上げた。

スカイブルーのヘルメットをとり、私は深呼吸を一つし、そして大きく叫んだ。

「キアトー!起きてるの!?」

私の呼掛けに瓦礫の山の頂上から西陽により影になった人影がゆっくりと動き出した。

「んん……、おお、また寝ちまった……」

西陽のせいで顔がはっきり見えないけど、いつもの声、影でもわかるほどの寝癖頭、間違いなく私の知っているキアト。

「そんな所で寝てたらいつか落ちて死んじゃうよ!」

(うるせぇ、死ぬか!)

キアトの思っていることが私の頭に入って来た途端、影でもわかるくらい、キアトはの悪い表情をした。

私は人の考え、思っていること、心の声が聞こえてしまう能力を持っているの。その能力をキアトは知っていて、キアトは私に今の表情を見せたんだ。

「だってそうじゃん!三十メートル以上あるんだよ!落ちたら死んじゃうよ!」

「うるせぇ、死なねぇよ!ブス!てか、お前、毎日のようにオレの能力見てんだろ!超天然女!」

今度は声にして、キアトは立ち上がった。

「おら……」

いきなりキアトは一言呟き、私のいる地上へと飛び降りた。

普通なら飛び降り自殺だ。いつ見ても心臓に悪い。でもキアトが飛び降りると同時に瓦礫の山から鉄屑が何個か飛び出し、キアトの足の裏へと接近し、直ぐ様サーフボードのような形となり、キアトはまるで空中でサーフィンをするように華麗に動き、あっという間に私の前へと着地した。

「ほらな、死なねぇだろ」

ようやく見えたキアトの表情は、私に屈託ない笑顔を見せた。

未室希跡。身長百七十センチの年齢は私と同じ十七歳。寝癖頭で服へのこだわりもないお洒落にも疎い。で、鉄屑を集めてサーフボードのようにしたのはキアトの能力なんだけど、話しが長くなるから今のところはパスします。まあ、一言でキアトのことを言えば、単細胞のおバカさん。

でも…………

「なんだよ?人の顔じろじろ見て」

キアトが不思議そうな表情で私を見る。

「また、アースを探してたの?」

私は話題を変えた。するとキアトは一瞬だけ寂しそうな表情を見せ、私を見つめた。

「……他にする事あるか」

ぶっきらぼうに答えたキアトは私に背を向けた。

「見つかるといいね。アース……」

「ああ、アイツは何せ不死身の不死鳥モデルだからな……」

今の私とキアトのやりとりは何回、何十、何百と毎日のように同じ会話の繰り返しだった。

それほどにこの場所は、今はなにもない平穏な場所だった。今は……

「帰るぞ、ひろな」

キアトの一言に私は頷き、私の愛機バイクに跨がり、家に帰る準備をした。

キアトがなぜこのなにもない平穏な場所にいてアースを探しているのかは、過去の出来事が原因なんだけど、またそれは追々と……


あっ、住む家に帰る前に自己紹介。私の名前は神代ひろな。キアトとは幼なじみの17歳。キアトからはチビだのブスだの天然女だの散々言われるけど、私はとーっても、かわいいんだから、それは覚えておいてね。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...