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Prolog〔過去と未来の想い〕

一九七七年五月

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西暦一九七七年五月末。日本。天候は晴れ。

私は今、地上より二千メートル離れた上空を飛行している。

私はWeaponウェポンEarthアースGuardianガーディアンSystemシステム頭文字イニシャルをとりWEGSウェグス

赤く輝くボディー不死鳥フェニックスモデルのWEGS、名をアースフィールと呼ぶ。

WEGSウェグスとは簡単に言えば、ロボットまたはサイボーグのような物であり、人工的に造られた鋼鉄の物体である。そう、私のボディーは全身、赤く綺羅びく意思を持った機械である。

私の姿は先程簡単に言ったが、不死鳥モデルであり、鳥の顔と身体、広ければ三 メートルはある翼が特長である。

私の他にも様々なWEGSが存在し、それらの姿は空想上の動物や怪物、恐竜や動物等をモデルとしているのだが、私を含め、全てのWEGSにはある特長というか使命があるのだ。

WEGSの使命は二つあり、アースストライダーと呼ばれる能力者と共に暮らすこと。

能力者は常に独り。親も居なく家族もない。何故そうなっているかは理由はまた語るが、寂しさを和らがせること。

そしてもう一つは能力者の監視である。

能力者には様々な能力者がおり、その能力を私的に使う者や、犯罪に使う者、またこの地球を脅かす者を止める役割を持っている。

止める、すなわち止めが出来なければ我々の使命は能力者と共に死滅しなければならない。それが過去から続く我々の使命であるのだ。

我々、WEGSは能力者の相棒であり、能力者の家族や友であり、能力者の死刑執行者である。


限りなく思える広大な緑の大地が、私の機械眼に映る。

「綺麗ですね」

私は私の背中に乗せた人物に今の感想を言った。

私の背中に乗る人物が、私の相棒であり、もちろん能力者である。

「うるせぇ、黙ってろ!ポンコツ!」

相棒はご機嫌斜めであり、軽く私の頭部を殴った。

「大体、何で俺がクビなわけ!?なぁ、聞いてんのか?ポンコツ、返事しろ!」

この人は黙ってろって言ったり、返事しろって言ったり、なんて理不尽な……

とりあえず先に、このふてぶてしく理不尽な相棒を紹介しておこう。

那賀龍神。二十七歳の男性であり、長身で髪が長く筋肉粒々だが、頭は弱い。無茶苦茶な理不尽と横柄であり、頭はかなり弱い。とにかく頭は弱い、ていうか一言で言えば、バカである。

「自分から辞めるって旦過切ったのに……」

「ああ~ん、ポンコツ、なんか言ったか!?」

「……いえ、何も」

この人は私が一言言えば、すぐに突きかかる。ああ言えば、すぐに突きかかる。

とにかく今の現状、那賀龍神は先程、ある組織を辞めてきたばかりの無職に成り立てたばかりの状況だ。

ある組織、ずばり、彼は頭はかなりかなりか~なり弱いのだが、一応、政府の役職者なのだ。

「龍神さま、私の思考回路が思うにやはり惑星ガニメラの戦士達を……「だから、しゃあねぇだろ!あのカエル顔の宇宙人倒さなければ、地球が攻撃され、ヤバいって話しじゃなくなるだろーが!」

私の話しを遮り、那賀龍神は怒鳴りながら私の鋼鉄の頭部を殴った。

この人に何を言ってもムダだと私の思考回路は認識し、私は話すのをやめた。

「それにしても、綺麗な場所だぜ。おい、ここは何処だ?」

無言を連ねこうと決めた私にすぐに龍神は話しかけた。無視をすればまた怒る。答え方を間違えればまた怒る。どちらにしても面倒くさい人だ。

「愛知県の上空です」

「お、見ろ!サーベルタイガーが獲物を追っかけてるぞ」

見渡す限りの緑の大平原。辺りには様々な動物が自然に生きている。余談ではあるが、この世界には太古の昔から行き続ける動物が多数、生息している。

「すげぇな、あっちの世界では全滅してるらしいじゃねぇか。ロマンだぜ、男のロマンだぜ」

何がロマンなのか意味不明だが、とにかくこの人の心を輝かせる何かがあるのだろう。きっとこの人は恐竜大陸オーストラリアを見たら、男のロマンとやらを更に輝かせるのだろう。

「おい、なんか遠くにでっかいビルが見えるぞ」

ふと、龍神が西の方角に指さした。

「ああ、あれは……」

私にはあの建物がすぐに解った。あれは……

「行け!」

「はい?あの建物は龍神さまには無関係な場所「いいから行け!」

私の言葉をまたも遮り、龍神は私に命令した。

「あの場所から俺の新しい門出が待っている!行くぞ!」

何を言っているのだ。この人は!あの場所は頭の弱い頭の弱い貴方には程遠い場所なのに……

あの建物は日本小等学校。つまり、小学校なのだ。すでに龍神は遠い昔に卒業し、更に言えば、頭の弱いバカな龍神には程遠い場所なのだ。

行けば、行ったでがっかりし、挙げ句の果て私に理不尽に八つ当たる。機械の私が悲しみに涙を流せるなら、間違いなく今だろう。

私の相棒はこんなに理不尽で、頭が弱くバカなのだろう。私は那賀龍神を背中に乗せながら、日本小等学校へと下降した。



しかし、那賀龍神や私、アースフィールにとって、あの小学校が大きな運命へと導かれ、やがて地球の存続に関わるのだが、この時はまだ知るよしもなかった。
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