EARTH STRIDER 〔アースストライダー〕

とと

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第1章〔地球編〕

01.その名はキアト

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一九八八年四月。桜があちこちに咲き乱れ、めちゃめちゃ気持ちいい風が吹いて、日なたぼっこにはもってこいの晴天。

あっ、先に自己紹介。まゆは香川まゆ。17歳のショートボブが特長の百四十七センチの小さくて可愛い女の子だよ。まゆはまゆだから私って言わないよ。

まゆが生活している場所は、元校舎だったビルみたいな建物で、昔は友達がいっぱい一緒に暮らしてたんだけど、今は訳あってまゆを含めて三人しか居ないんだ。

残りの二人は、一人はまゆと同じくらいの身長で、まゆの一番の親友の神代ひろなちゃん。ひろなも私と同じくらい可愛いんだ。

で、もう一人がまゆとひろなと同い年の男子。その男子は、服装とか髪型とか、全然お洒落じゃなくオツムもあんまり良くなく、ぶっきらぼうなとことかあるんだ。

あんまり良くない印象かもしれないけど、ハッキリ言っちゃうけど、まゆはその人のことが大好きなんだよー。(照)

その人の名前は未室希跡くん。まゆもだけど、今まで一緒に暮らしてた友達はみんなキアトって下の名前で呼んでる。

まあ、キアトの話しをしたら折角のいい天気が夜になっちゃうから先に進めるね。

まゆは自分の水色に輝く愛機バイクを運転し、瓦礫の山へと向かってたんだ。

「ああん、もう、ヘブンズガール、もっと飛ばしてよ、キアトとひろなが待ってるんだから」

まゆは焦りながらバイクに向かって文句を言った。

「なんでぼくにアタるんだよ!?あっちの世界から帰って来るのが遅かったまゆの責任でしょ!」

バイクから機械音の声が響く。まゆのバイクが話したんだけど、まゆの余計な一言に怒っている。

「ごめんごめん。でも急いでね、ヘブンズガール」

バイクと言っても本来はバイクじゃなく、バイクに変形したまゆの大事な家族でも相棒でもあるWEGSウェグスなんだ。

ちなみにひろなも同じようにバイクに変形するWEGSを相棒にしてんだ。

まゆのWEGSの本来のスタイルは天馬ペガサスモデルなんだ。

瓦礫の山へと到着するには少し時間があるから、WEGSの性能を少しだけ。

兵器weapon地球earth守護者Guardianシステムsystemの頭文字をとり、WEGSウェグス

WEGSは常に相棒であるアースストライダーと呼ばれる能力者と居るんだけど、普段はファーストモードと呼ばれる格好をしているんだ。

ファーストモード時は、それぞれの別の形態で、動物やら空想上の動物等のWEGSが、この地球上、能力者アースストライダーの数以上に存在するの。様々なWEGS、大なり小なり、危険なのから可愛らしいのまで……。

能力者一人、一体のWEGSが原則でもあるんだけど、二体や三体、コレクターなんて五十ものWEGSを所有している能力者もいるんだ。

WEGSは能力者が十五歳になったら、所有を国から至急される義務があり、二年以内に能力者がWEGSを所有しなければ、逮捕されちゃうんだ。

あっ、ようやく瓦礫の山が見えてきた。キアトとひろなが遠くからだけど見える。

ひろながまゆに気が付き、手を振ってる。

ひろなの横にひろなの相棒であるWEGSがバイクモードのままいる。

キアトは相変わらず、ある物を探して瓦礫の山の頂上辺りで作業している。

「ねぇ、まゆ。キアトのあんぽんたんはいつ自分のWEGSを所有するの?早くしないと逮捕されちゃうよ」

ヘブンズガールがまゆに質問した。言う通り、キアトは十七歳になる年なんだけど、彼だけまだWEGSを所有してないんだ。その点はまゆもひろなも焦っているんだけど。

キアトがWEGSを所有しない理由は、あの瓦礫の山に関係していて、彼は瓦礫の山に眠る十年前のWEGSを探しているんだ。

十年前にバラバラになったWEGSの一部でもいいから、自分のWEGSの一部にしたいんだって。だからキアトは未だに見つけれない十三の大きな瓦礫の山を漁っているんだ。

「到着~っ」

「またあっちの世界に行ってたの、まゆ」

「ごめんごめん。可愛い洋服を買っちゃたから、遅くなっちゃった」

ようやく瓦礫の山に到着したまゆにひろなが出迎え、まゆはひろなの問いに舌を出して答えた。

「キアト~っ!あっちの世界で頼まれたバームクーヘンとコーラ買って来たよ!降りて来~い!お~い!可愛いまゆちゃんが来たよ~っ!お~「うるせぇ!!」

まゆの声にキアトが顔を覗かせながら、声を張り上げてる。さては照れてるな。

「まゆ、キアト照れてないから……」

ひろながまゆの心の声を聞いて、冷たく否定した。

その間にキアトはスノーボードをするように瓦礫の山の鉄をボード変わりにし、地上へと着地した。

キアトがまゆの前にいる。キアトカッコいい。やっぱりまゆはキアトが好き。

「まゆ!」 

またしてもひろなが、まゆの心の叫びを制止した。ひろなの表情は、うわ、怒り顔で退き吊り笑っている。怖い~。

「ねぇ、キアト、そろそろ新型WEGSの所有を考えないと……」

ひろなが突然、話題をかえ降りて来たキアトに言った。

キアトは返事をしない。

「キアトの気持ちは解るけど、もう期限まで半年もないんだよ!キアトが逮捕さ「うるせぇ!」

ひろなの訴えにキアトは怒鳴りながら制止した。

「おい、キアトキアホ、おラァのひろなに何、怒鳴ってんだ!こらっ!」

ひろなのバイクが機械音を出しながら、怒る。ひろなの相棒のWEGS、一角白馬ユニコーンモデルのバージンロードって言うけど、今はそんな場合じゃないね。

「もう、また怒鳴って話しを誤魔化そうとする!勝手に捕まっちゃえ!キアトのバカ!」

ひろなは完全に怒ってバージンロードに跨がる。

キアトは黙ったまま、瓦礫の山を見上げている。

最悪~。最近この二人、喧嘩ばかりなんだよ。

まゆはキアトを見つめながら心配していると、突然、キアトが驚きの表情を見せた。

「く、崩れる」

「「えっ!?」」

キアトの一言にまゆとひろなの声が同時に重なった。

その瞬間、目の前の瓦礫の山の頂上の鉄屑が突然、目の前に落ちてきた。

まゆもひろなも悲鳴を上げた。

「逃げるぞ!ひろな、まゆ!」

キアトがまゆとひろなに叫ぶ。

だけど、その声が終わると同時に十三の瓦礫の山が一斉に崩れ落ち、砂ぼこりとともに大好きなキアトとひろなが、まゆの視界から消えた。
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