下僕たちの忠誠心が高すぎて大魔王様は胃が痛い~ついに復活したので、もう一度世界を支配します〜

ああああ

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第二章 ジェニーがんばる

人望

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「え? 王って人望ないんですか?」

 王との対談から戻ったジェニーは、城下町にいた。国が小さいからか、噂はすぐに広がるもので、少し――どころか、かなりの有名人になっていたようだ。

 歩いているだけで何人かが、まるでアイドルにでも群がるように話しかけてくる。
 流石にサインまで求められる事は無かったが、それでも少し鬱陶しく感じた。
 しかしそんな気持ちも抑え、聞き込みの一環ということで小話をしていたのだが、期待を上回る情報が手に入る。

「この国の市民は、王に対して良いイメージなんかないですよー。何か変な事でも言い寄られませんでしたか?」

「え? えぇ? 確かに、この国に定住して欲しいと言われましたけど……」

「あらあら、どうせまた変なこと考えてるんですよ。悪いことは言いませんから、やめておいた方がいいと思います」

「わ、分かりました。参考にします」

 ジェニーは混乱していた。
 市民を装った謀反人に騙されているのかとも思ったが、うんうんと周りも頷いている事から、その線は考えにくい。

「ち、ちなみに、どうして王の人望が薄いのか説明していただけますか?」

「何か独裁的なんですよねー。王が変わってから税も重くなって、その税も国の為に使われることなんて殆ど無いんですよ。だから我々は、いつも苦しい生活を余儀なくされて」

「……そうなんですか」

「だから、ファルジック国に定住するのは、あまり推奨できませんね。英雄級魔法ヒーローズマジックを使えるのなら、どの国でも重宝されますから、貴女にはもっと相応しい国があると思いますよ」

 何と自虐的な市民たちであろうか。
 一般市民ではなく、謀反人だったという方がまだ納得出来そうだ。
 ただ、謀反人軍団というには、少し数が多すぎる。やはりこれが民意なのだろうか。

「それほど恨まれているのなら、反乱とかって起きたりするんですか?」

「うーん。反乱なんか起こしても、鎮圧されて終わりだからねー。中には、それでも反乱する人がいるけど失敗するね」

 今度は後ろにいた女から返答が返ってくる。
 王について愚痴りたい者は多いのだろう。
 しかし、答える人は多くても、答える内容は同じのようだ。
 市民たちから、情報が湯水のように溢れ出す。まだまだ止まる様子は無かった。

「クルトっていう騎士がいるんだけど、アイツがいる限り、反乱は成功なんてするはずないね」

「そんなに強いんですか?」

「うん。間違いなくファルジック国で最強の騎士だよ。素人が集まっても、勝てるわけないさ。何であんな王に仕えているのか、全然分からないよ」

 どうやら市民たちからしても、クルトの評価は高いようだ。
 ジェニーは要注意人物として、頭の中にメモしておく。

「も、もしもですけど、王が亡くなられた場合って、どうなると思いますか?」

「何回か妄想したことあるけど、みんな大喜びじゃないかなー。あ、君ならクルトにも勝てるかもねー。」

「…………分かりました。参考にします」

「ん? ああ、定住の件ね。やっぱり、悔いのないように選ぶのが一番良いよ。惑わせて悪かったね」

「はい、それではこの辺で。ありがとうございました」

 ジェニーは、自分が喋り過ぎていた事に気付く。
 そろそろ、時計の針が五時を指そうとしている。アルフスとの約束の時間は六時だ。
 遅れることは絶対に避けたい。
 おまけで付け加えるように、ペコッとお辞儀をしてその場を去ると、小走りで宿屋の部屋へと向かった。

****

「ジェニー、聞こえるか?」

「はい! アルフス様!」

 ジェニーが部屋に着いてから約三十分。
 六時ピッタリの時間に、アルフスから伝達魔法テレパシーが届く。
 いつ連絡が来てもいいように準備していたジェニーだったが、いざ連絡が来ると、やはり固くなってしまう。

「何か危険な目に遭ってはいないか?」

「……っ! はい! 私は大丈夫です!」

 アルフスがジェニーとの会話で一番最初に聞いたのは、ジェニーの身の安全だった。
 それにジェニーは心を打たれる。
 ジーンという胸の高鳴りが抑えられない。

(真っ先に私なんかの心配をしてくださるなんて、なんてお優しいのだろう……)

 ジェニーはただ嬉しかった。
 アルフスと話していなかったら、泣いていたであろう。
 しかし、今は話している状態だ。涙を見せるわけにはいかない。

「なら良い。さて、何か情報を得られたか?」

「はい! もしかしたら、ファルジック国を支配下に置けるかもしれません」

「ほう? 期待できそうだな」

「は、はい……」

 ジェニーは、アルフスから期待を寄せられていることを感じると、更に嬉しさがこみ上げてくる。だが、それと同時に不安にもなった。
 もしアルフスの期待に添えない内容だった場合を考えると、どうしても胃が痛くなってくる。

「おっと、プレッシャーをかけるような言い方だったな。すまない。ゆっくりでいいから自分のペースで話すといい」

「ア、アルフス様が謝られる事はありません!」

 アルフスがジェニーの緊張を察してか、すぐさまフォローに回る。
 しかし、健闘むなしく逆効果だったようだ。
 アルフスが自分に気を使ってくれている事を感じ取ると、まともに喋れない自分を情けなく思う。
 ジェニーは自責の念に駆られていた。

(アルフス様に気を使わせるなんて、下僕失格だよ……ううん、でもこれ以上に失敗するのは、もっとダメだ!)

 だが、今は気弱になっている場合ではない。
 自分のテンポが悪いせいで、アルフスの貴重な時間を奪っているとなると、居ても立ってもいられない。
 ジェニーは気合を入れ直す。
 もうこれ以上失敗する訳にはいかない。
 背水の陣だ。

「失礼しました、アルフス様! 必ずやアルフス様の期待に添える情報だと思います!」

「う、うむ。……では聞かせてもらおう」

「はい!」

 ジェニーは気持ちを切り替え、自信を持って話し始めた。

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