下僕たちの忠誠心が高すぎて大魔王様は胃が痛い~ついに復活したので、もう一度世界を支配します〜

ああああ

文字の大きさ
60 / 79
第四章

ポーション

しおりを挟む

「すごい! 疲れが全部取れました!」

「わ、私もです!」

 アルフス作ポーションの効果は絶大だった。
 二人の体力的には、一ヶ月間ずっと疲労回復に専念したかのように回復している。
 ポーションとは思えないほどの回復効果だ。

「ひとまず安心だな。今日は森を遊覧して、そのついでに森の主を倒しに行こうと思っている。何か異論はあるか?」

「「ありません!」」

 あるはずがなかった。
 体力も取り戻したため、二人の返事も更に元気よくなる。

「物事が上手く進めば、恐らくピクニックは今日で終わりそうだな。滅多にない事だから、存分に楽しむといい」

「ですね!」

「はい!」

 特に残念そうな反応も見せずに二人は受け答える。
 残念なことに変わりはないが、帰りを渋っても仕方ないだろう。
 二人としては、アルフスとここまで接することができるのは貴重なので、そう考えたら少しだけ名残惜しい。

「それじゃあどうしますか? 森の主について何か聞き込みますか?」

「……ああ、それでもいいが、正直に言うと場所はある程度分かっているのだ」

「あ、やっぱりそうですよね。私も気配は感じてました。というか、隠す気無さすぎて面白くないですね」

 カトレアとアルフスは、エルフたちに聞くまでもなく、森の主の位置は分かっていたようだ。
 二人の能力の中に、力を持つ相手の位置を気配で把握することができるスキルがあるのだが、活躍する機会が少ないスキルである。

 このスキルが発動するような強い敵は、アルフスたちのように普段は気配を察知させないようにしている。
 だが、今回の森の主は、そのような事をしていない。

 単純に頭が悪いのか、それとも強すぎて隠し切れていないのか。
 真偽はつかないが、警戒しておいて損は無いだろう。

「ピクニックとはいえ、場所が分かっているのに遠回りする必要はない。楽しむ事を第一に頑張ろう」

「はい!」

「分かりました!」

 それから二人の準備が完了したのを確認すると、アルフスたちは空き家から出て気配がする方へと向かった。
 やはり昨日に比べて、カトレアとジェニーの足取りは軽い。
 カトレアはスキップまでしている。

 エルフの群れの拠点を抜けると、かなり木々が生い茂っている道になった。
 巨大な苔むした木々が鬱蒼と茂っている。
 木立が密生して、日はあまり差し込んでこない。

 森に住むモンスターとしては、これ以上無いほど適した地である。
 逆に言うと、森に住まない者からしたら、戦いになった時には必然的に不利な戦いになるだろう。
 地の利がないのだ。

 いざとなれば森を焼き払ったり、衝撃波によって平坦な地にしてもよいのだが、自分たちの森なのであまり壊したくはない。

「ジェニーも戦ってみるか? 森の主程度なら勝てるかもしれんぞ」

「うぅ、お望みとあらば……」

 アルフスの誘いに、ジェニーは少し自信なさげに答える。
 あまり戦いを好まない性格のようだ。
 ディストピアの中では珍しい部類である。

 しかし、アルフスの命令とあらば喜んで戦うだろう。
 それはジェニーに関わらず、ディストピアの下僕全員も同じだ。
 戦闘向けに作られていないメイド人形でさえ、そう言われたら武器を持ち、立ち上がるはずである。

「ジェニーちゃんも戦おうよー。楽しいよー」

 随分と前方にいたカトレアからも誘いが入った。
 アルフスとの話はどうやら聞こえていたようだ。

「フフフ、二人で共闘するというのも悪くないかもな。勿論カトレアに力を調整してもらわないといけないが」

 アルフスは共闘というものに心惹かれていた。
 ディストピアの下僕たちは、全くと言っていいほど共闘に向いていない。
 強いて言うならヴァイツとシュヴァルツくらいだろう。

 個の力を重視して作戦を組むのもいいのだが、コンビネーションというのもアルフスは興味がある。
 まだまだ試行錯誤中だ。

「そうだな、試しにカトレアとジェニーでやってみるのも面白いな。大丈夫か、ジェニー?」

「は、はい……!」

「任せてください! ジェニーちゃんは、ドラゴンたちにビックリしないように気をつけてね」

「ふぇぇ……分かりました……」

 ジェニーにどんどんプレッシャーがかけられる。
 不安による緊張で身を震わせていた。

「決まりだな。だがカトレア、ドラゴン召喚は止めておいてた方がいい」

「あ、分かりました。それなら丁度いいかもしれませんね」

「そ、そうですね。やっぱりそっちの方がいいですよね」

 ジェニーは、安堵の胸を撫で下ろすように大きく息をつく。
 どうやらドラゴンは苦手らしい。
 それに、ドラゴンを隣に共闘するとなるとジェニーも大変だろう。

「ん? アレって敵ですか?」

 ジェニーが安堵したのも束の間、カトレアが何かを発見する。
 指差す先には――ゴブリンが一匹いた。
 木の上だ。

 三人とゴブリンは目が合う。
 ゴブリンも流石にまずいと思ったのだろう。バッと木の上から飛び降り、即座に逃げ出す。

臓器破壊オーガンデストロイ

 アルフスが放ったのは伝説級魔法レジェンドマジックの一つだ。
 文字通り対象の臓器を全て破壊する。
 耐性を持っていなければ、間違いなく死は免れない。
 ゴブリンなどでは絶対に耐えられないはずだ。

「逃げ出したところから、恐らく敵だろうな。群れで行動していないという事は、偵察兵の役割か」

「それなら、やっぱりこの近くに森の主がいるって事ですかね?」

「多分な。……見えてくるぞ」

 ゴブリンが戻ろうとしたその先に、かなり大きな洞穴が存在していた。
 森の主の気配もここからしている。
 かなりの確率でここが住処のはずだ。

「間違いないですね! 乗り込みますか?」

「いや、わざわざ敵のテリトリーに入る必要はない。誘い出せばいいのだ。追尾する炎トラッキングフレイム!」

 アルフスの先制攻撃――もとい宣戦布告は、森の主が居ると思われる洞穴の中に向かって、真っ直ぐに飛んでいった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

処理中です...