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ディストピア会議

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 ここはディストピアの中でも、比較的広めに作られている部屋だ。
 そしてこの部屋には現在、多数の下僕たちが集まっている。

「それでは、今からディストピア会議始めます」

 ディストピア会議とは、立場や地位などの一切を無視した話し合いを行うためのものだ。
 簡単にいえば無礼講である。
 勿論顔が見えてしまっては意味がないので、全員が全身を丸々隠せるような大きなローブを着ている。
 これで匿名性が増し、より公平な場が整うはずだ。

「では、今日はいつもと同じようにアルフス様の行動から、学べることを探していきましょう」

 ついにディストピア会議が始まる。
 ディストピア会議では、よくアルフスについての話題が出る。
 下僕たちからしたら、アルフスは全ての見本であり、憧れであるためアルフスの行動は日頃から注視していた。
 それを共有するのがこの会議のメインでもあった。

「じゃ、ボクから一つ。アルフス様のあのカリスマ性は、優しさからきていると思うにゃ。だから、アルフス様に近付くためには、優しくならないといけないにゃ」

 最初に発言したのは、端の方に座っていた者からだ。
 フードの部分が猫の耳のように膨らんでいたのが特徴的な人物だった。

「なるほど、優しさですか……。たしかにその通りですね。しかし、アルフス様に近付くとなると、難しく感じますね」

「そういえば、アルフス様はこの前、失敗してしまった私を許してくださったんです! 責任を取るために自害しようとしたのですが、重々しいお姿で止めてくださって……しかも、涙まで拭いてくださって……本当にお優しい御方でした」

 今度は中央の方からの発言だ。
 アルフスの優しさエピソードが放り込まれる。
 周りからはいいなぁ、という声が多く聞こえていた。

「うんうん。エマもよくアルフス様から玩具を貰ってたもん。アルフス様はたくさん褒めてくれるし、エマ嬉しかったなぁ」

 先ほどの言葉に同調するように、皆と比べて小さめのローブを身にまとっている者から発言があった。
 ところどころ匿名性が意味をなしていなかったが、皆はそんなことは気にしない。

「やはり我々がアルフス様に近付く日は遠くなりそうですね」

「そうだ。アルフス様の強さはどうなっていると思う?」

「難しい問題ですわね。才能と言ってしまえばそれでおしまいですけど、それだけではない気がしますわ」

「関係ないかもしれませんが、アルフス様はお食事の際、一度に多くの物を摂取されます。もしかしたら、何か関係があるのかも……」

「でもそれなら、ラピスだって沢山食べてるけど変化ないにゃ。その時点で立証はされないにゃ」

「私は関係な――ゴホン、ラピス様は関係ないのでは?」

「食事の量は関係ないと思うよ。そうだね、アルフス様は日々の特訓を怠らないようだ。そちらの方が関係あるんじゃないかな?」

「特訓……。アルフス様は既に神の領域に達しておられるのに、さらに強さを求めるとは……恐ろしい御方です」

「すごいよねー。強いだけじゃなくって頭も良いし、アルフス様がどんなことを考えてるかなんて、想像もできないや」

「アルフス様はディストピアだけでなく、侵略する国など、様々なことを管理しておられます。アルフス様の能力は計り知れません」

「しかも、ご多忙なはずなのに、ディストピアの見回りまでされておられます。本当なら我々下僕一同だけでするべきなのですが、やはり信用されていないのでしょうか……」

「そ、それは考えたくないね……多分、アルフス様のことだから、何か理由があるんだよ」

「……それなら、アルフス様は我々に会うためとおっしゃられていました」

「ほ、本当に!? それなら、私たちから出向いた方が良くない!? わざわざアルフス様に来てもらうなんて! しかも、お仕事の時間まで使われて!」

「いや、それは安易すぎるでしょう。我々が押しかけるとなると、逆にアルフス様の迷惑になる可能性があります。アルフス様が作られるスケジュールは、完璧なはずですので、我々が勝手に崩してしまう方が良くないかと」

「な、なるほど……うぅ、どうしたらいいのか分からないよ」

「あ、あの、今度アルフス様に一日お休みをとっていただくというのはどうでしょうか……?」

「ん? どういうことだい?」

「は、はい。アルフス様はとても忙しそうで、とてもお疲れになっていると思います。ですから、アルフス様がゆっくりできたらいいなぁ……と思って」

「おぉ、すごく賛成にゃ。アルフス様も喜ばれるはずにゃ」

「なるほど、私たちはこれまで物でのプレゼントを考えてきましたが、そういった形でのプレゼントも良いですわね」

「エマもさんせーい」

「ほぉ、アルフス様の許可が必要ですが、確かに面白い発想です。ぜひ提案してみましょう」



『アルフス様に休暇をとっていただくプロジェクト』の企画書は、その日のうちにレフィカルからアルフスへと届けられた。

 アルフスが驚いてコーヒーをこぼしてしまうのは、また別のお話。

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