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G戦線
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摩天楼を歩いていたカッパは、仲間のイオタに出くわした。
「よう、カッパ、生きていたか」
「お前もな」
うつむきながら、上目づかいにこたえるカッパ。
お互い、アルファ戦線から戻ってきたばかりであった。
「まだ、戦闘が続いているってのによ、よ~く帰ってこれたな」
イオタは、比較的安全な後方部隊。対してカッパは、前線で戦っていたのである。
「今度、やつらに奇襲をかけるって噂じゃないか。奇襲ってのは、負けている状態だからやるもんだよな」
「前線に出たことがないお前に何がわかるか」
「いや、いや、後方部隊だってそれなり重要なんだぜ。おめぇらの食料の確保を誰がやっているっていうんだい」
イオタは薄笑いを浮かべた
「後方部隊がもっと食料の確保が出来れば、俺たちが前線に出なくても済むのに」
顔をヒクヒクさせるカッパだった。
「まあ、奇襲をかけるってことは、ここの領地は放棄ってことかな」
イオタはカッパの肩をたたき、街角を去って行った。
カッパは、総本部に顔をだし、現状を報告。次の指令を待った。
「今度の奇襲には、奥さんが行っているようだな」
総隊長のガンマが言った。
「ええ、聞いています」
「そうか」
と静かに総隊長は言った。
「総隊長。ここの領土を放棄するつもりですか」
カッパが真剣な顔をして、総隊長を見た。
総隊長は、首を横に振り、
「いや、まだあきらめるつもりはない。次の作戦行動に入っているところだ。そのための奇襲なのだからな」
「そうですか、それなら妻も浮かばれます」
「まだ、死んだわけじゃない。あきらめるな」
総隊長から肩をたたかれ、暗に外の空気にあたって来いと目で合図された。
カッパが街を歩いていると、後ろからケツを蹴り上げてきた奴がいた。
カッパは声も出さず、後ろを振り向いた。
「よう、カッパ」
前線で一緒に戦っていたカイだった。
「総隊長なんて言ってた」
「このまま、戦うって」
「そうか。また、前線に行くことになるか」
「まあ、そんなとこだろう」
「聞いた話だと、特別科学班が特殊な毒薬開発に成功したみたいだぜ。それを今回の奇襲に使うらしい」
「そうか」
カッパはさみしそうな顔をした。
「そういえば、かみさん元気か」
「その奇襲の一員として前線に行った」
「悪い事言っちゃったな。すまん。あそこの店でおごらしてくれ」
カッパは、急に顔色を変えて、
「あれは、やつらの罠だ。何人かあそこに入ったけど、出てきたところ見たことないぞ」
「あれがうわさに聞く、不帰の酒場か。いい匂いしてんのに」
「あれで、仲間がどれだけ死んだのか・・・」
二人は、ビルの陰に入り、毒薬について話し始めた。
「まあ、あんまり気乗りしない作戦なんだが」
カイが語り始めた。
「体内に毒を精製するらしい。特に特殊な薬剤を使うわけでなく、食事のバランスで体内に毒が生成されるそうだ。それをやつらの口に入れるだけだ」
「それで奇襲か」
「まあ、奇襲というより特攻のようなもんだ。一人一殺という感じだ」
「しかし、総隊長の感じからは、それで終わりって感じじゃなかったが」
「おれらの目的は、ここの領地を占拠することじゃなく、安全な生活が出来ればいいだけなんだが、やつらはそれを許してくれない。だから仕方なく、全面的に戦っている」
「戦っているというか、単なる反乱軍のようなものだけどな」
「いや、話によると他国からの援軍もあるらしい。数にしておよそ1万だそうだ」
「戦場が一面真っ黒になる感じか。それで、援軍はいつごろ着くんだ」
「明日、あさってには到着するらしい」
「今度の奇襲が勝利の要となるのか」
「もう少しだ。頑張れよ」
また、カイはまたカッパのケツをたたき、暗闇へと消えて行った。
日が落ちたころ、奇襲が始まったようだ。やつらの叫び声が聞こえてくる。
「飛行部隊の後、地上部隊だ」
どうやら、攻勢に出ているらしい感じだ。
「後方部隊。敵が一時撤退した今のうちに、食糧の確保を」
この何年かで、組織的な動きができるようになったのである。
また、やつらが戻ってきたようだ。
「撤退、撤退、撤退」
「引け、引け~」
飛行部隊の奇襲で毒を散布し、地上部隊で敵を追い払った形だ。普通ならこのまま占拠すればいいのだが、守備ができるほどの、数はいない。当面の食料の確保が精一杯だ。
やがて、敵が戻ってきた。
敵は、毒ガスを散布しながら、領土を回復していく。
「今日は、ここまでか」
奇襲を指揮していた隊長がいい残し、全軍撤退した。
「報告します。死者1、負傷者0でした」
「よくやった」総隊長の顔から緊張の色が消えた。
当面の食料が確保できたので、全部隊に配給が回った。
だが、増援は、来なくなったらしい。噂では、途中で敵に殲滅させられたとのことだ。
また明日も、こんな戦闘が続くのだろう。
カッパは、奇襲から戻った妻と街の片隅で一緒に食事をしていた。
「よく無事だったな」
「ええ、何とかなったわ」
「また、明日から戦闘だと思うが、お互い命を大切にしような」
「そうね。お腹の赤ちゃんのためにも」
食卓に戻ったメアリーは、マスクをしたまま、食卓に置いてあるスープを全部捨て、言い放った。
「あいつら、群れを成して、食卓を襲ってくるようになって、大変だわ。外から来たのは、パパが洗剤で全部流したけど、市の衛生局は何をしているのかしら」
ふとメアリーの視界に黒い影が動いた。
パーン。用心のため手に持っていた紙筒で黒い影に向かって一叩き。
「1匹仕留めた」
潰れたゴキブリを見て、薄気味悪くメアリーは微笑んでいた。
「総隊長報告します」後方部隊の隊長が駆け込んできた。
「イオタが敵にやられたとの報告がありました」
「そうか、丁重に弔ってやれ」
「よう、カッパ、生きていたか」
「お前もな」
うつむきながら、上目づかいにこたえるカッパ。
お互い、アルファ戦線から戻ってきたばかりであった。
「まだ、戦闘が続いているってのによ、よ~く帰ってこれたな」
イオタは、比較的安全な後方部隊。対してカッパは、前線で戦っていたのである。
「今度、やつらに奇襲をかけるって噂じゃないか。奇襲ってのは、負けている状態だからやるもんだよな」
「前線に出たことがないお前に何がわかるか」
「いや、いや、後方部隊だってそれなり重要なんだぜ。おめぇらの食料の確保を誰がやっているっていうんだい」
イオタは薄笑いを浮かべた
「後方部隊がもっと食料の確保が出来れば、俺たちが前線に出なくても済むのに」
顔をヒクヒクさせるカッパだった。
「まあ、奇襲をかけるってことは、ここの領地は放棄ってことかな」
イオタはカッパの肩をたたき、街角を去って行った。
カッパは、総本部に顔をだし、現状を報告。次の指令を待った。
「今度の奇襲には、奥さんが行っているようだな」
総隊長のガンマが言った。
「ええ、聞いています」
「そうか」
と静かに総隊長は言った。
「総隊長。ここの領土を放棄するつもりですか」
カッパが真剣な顔をして、総隊長を見た。
総隊長は、首を横に振り、
「いや、まだあきらめるつもりはない。次の作戦行動に入っているところだ。そのための奇襲なのだからな」
「そうですか、それなら妻も浮かばれます」
「まだ、死んだわけじゃない。あきらめるな」
総隊長から肩をたたかれ、暗に外の空気にあたって来いと目で合図された。
カッパが街を歩いていると、後ろからケツを蹴り上げてきた奴がいた。
カッパは声も出さず、後ろを振り向いた。
「よう、カッパ」
前線で一緒に戦っていたカイだった。
「総隊長なんて言ってた」
「このまま、戦うって」
「そうか。また、前線に行くことになるか」
「まあ、そんなとこだろう」
「聞いた話だと、特別科学班が特殊な毒薬開発に成功したみたいだぜ。それを今回の奇襲に使うらしい」
「そうか」
カッパはさみしそうな顔をした。
「そういえば、かみさん元気か」
「その奇襲の一員として前線に行った」
「悪い事言っちゃったな。すまん。あそこの店でおごらしてくれ」
カッパは、急に顔色を変えて、
「あれは、やつらの罠だ。何人かあそこに入ったけど、出てきたところ見たことないぞ」
「あれがうわさに聞く、不帰の酒場か。いい匂いしてんのに」
「あれで、仲間がどれだけ死んだのか・・・」
二人は、ビルの陰に入り、毒薬について話し始めた。
「まあ、あんまり気乗りしない作戦なんだが」
カイが語り始めた。
「体内に毒を精製するらしい。特に特殊な薬剤を使うわけでなく、食事のバランスで体内に毒が生成されるそうだ。それをやつらの口に入れるだけだ」
「それで奇襲か」
「まあ、奇襲というより特攻のようなもんだ。一人一殺という感じだ」
「しかし、総隊長の感じからは、それで終わりって感じじゃなかったが」
「おれらの目的は、ここの領地を占拠することじゃなく、安全な生活が出来ればいいだけなんだが、やつらはそれを許してくれない。だから仕方なく、全面的に戦っている」
「戦っているというか、単なる反乱軍のようなものだけどな」
「いや、話によると他国からの援軍もあるらしい。数にしておよそ1万だそうだ」
「戦場が一面真っ黒になる感じか。それで、援軍はいつごろ着くんだ」
「明日、あさってには到着するらしい」
「今度の奇襲が勝利の要となるのか」
「もう少しだ。頑張れよ」
また、カイはまたカッパのケツをたたき、暗闇へと消えて行った。
日が落ちたころ、奇襲が始まったようだ。やつらの叫び声が聞こえてくる。
「飛行部隊の後、地上部隊だ」
どうやら、攻勢に出ているらしい感じだ。
「後方部隊。敵が一時撤退した今のうちに、食糧の確保を」
この何年かで、組織的な動きができるようになったのである。
また、やつらが戻ってきたようだ。
「撤退、撤退、撤退」
「引け、引け~」
飛行部隊の奇襲で毒を散布し、地上部隊で敵を追い払った形だ。普通ならこのまま占拠すればいいのだが、守備ができるほどの、数はいない。当面の食料の確保が精一杯だ。
やがて、敵が戻ってきた。
敵は、毒ガスを散布しながら、領土を回復していく。
「今日は、ここまでか」
奇襲を指揮していた隊長がいい残し、全軍撤退した。
「報告します。死者1、負傷者0でした」
「よくやった」総隊長の顔から緊張の色が消えた。
当面の食料が確保できたので、全部隊に配給が回った。
だが、増援は、来なくなったらしい。噂では、途中で敵に殲滅させられたとのことだ。
また明日も、こんな戦闘が続くのだろう。
カッパは、奇襲から戻った妻と街の片隅で一緒に食事をしていた。
「よく無事だったな」
「ええ、何とかなったわ」
「また、明日から戦闘だと思うが、お互い命を大切にしような」
「そうね。お腹の赤ちゃんのためにも」
食卓に戻ったメアリーは、マスクをしたまま、食卓に置いてあるスープを全部捨て、言い放った。
「あいつら、群れを成して、食卓を襲ってくるようになって、大変だわ。外から来たのは、パパが洗剤で全部流したけど、市の衛生局は何をしているのかしら」
ふとメアリーの視界に黒い影が動いた。
パーン。用心のため手に持っていた紙筒で黒い影に向かって一叩き。
「1匹仕留めた」
潰れたゴキブリを見て、薄気味悪くメアリーは微笑んでいた。
「総隊長報告します」後方部隊の隊長が駆け込んできた。
「イオタが敵にやられたとの報告がありました」
「そうか、丁重に弔ってやれ」
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