白いスープと死者の街

主道 学

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裏の畑

5話

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 最初、警察の人たちはびっくりしていた。
 小さな交番には二人のお巡りさんがいた。
 一人は四角い顔にメガネを掛けていて、書類が散乱した机で書き物をしていたけれど、僕の持つ子供の手を見つめていて、顔に厳しさと青白さが少し現れた。

 もう一人の人はカエルのような顔で大柄の人だった。子供の手を指紋がつかないようにと、泥を丁寧に拭きながら何も言わずにいたけど、子供の手の泥を拭きながら次第に顔が険しくなってきた。
「なんだね! ぼく! これは人形の手じゃないか?!」
 カエルのような人はハッとした僕の腕を掴んでいた。

 そのカエルのような人は険しい顔のままだ。きっと、重大な事件から性質の悪い悪戯か何かへと考えが傾いたようだ。
「違うかもしれないけど、こんな悪戯しちゃ駄目だよ!」
 語気を強くした声を聞いて。
 僕は確認をあまりしなかったことを悔やんだ。きっと、人形の手も子供たちと一緒に埋められていたんだ。
「ぼく、どこで見つけたんだい?」
 四角い顔の警察の人は優しい調子で話し出した。
 僕は決して悪戯をするような子じゃない。
「あのね……実は裏の畑で……」

 僕は顔を紅潮しながら意地を張って、警察の人に本当のことを言ってしまった。
 裏の畑でバラバラの子供たちを見つけたことと、それでも生きていることを。
「内田さん。子供の言うことですから……。それに、こんなに精工な人形の手なら、大人でも間違えるかも知れませんよ。それに、血のりもあって、何だか不気味ですね」
 四角い顔のお巡りさんが机の書類をどかしながら、目に微笑みを浮かばせていた。
「でも、何かの間違いなのかもしれないけれど、今後このようなことが起きるのは非常によくないですよ。斉藤さん」

 内田は厳しい表情を緩めなかった。
 斉藤と言われたお巡りさんは、優しい調子で僕の住所と電話番号をよく聞くと、書類が散乱している机に設置してある電話を掛けた。
 電話に出たのは多分、母さんだ。
 今の時間はおじいちゃんと母さんしか家にいない。
 おじいちゃんは二階で番茶を飲みながら、テレビを観たり、たくさんあるトロフィーを愛でているはずだ。
 僕は悔しくて涙を流した。きっと裏の畑に行けば子供たちが埋まっているはずだ。今は心が捻じれそうなくらいの悔しさを押し殺して黙っていよう。


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