新説 水の失われた神々

主道 学

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沈みゆく日本

1-2

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 霞ヶ浦に近い鳳翼学園では、もう休んでいる生徒も多々あるのだ。
 半年も続き。いつ止むこともない雨は、皆の不安を払拭することはなく。何かの天変地異とまで思わせたのだろう。

 だって、そうではないだろうか?

 苦労して、もしかすると、床下浸水もしている家屋から、命からがら学校へ通うことに、何かの意味を見出すのは、そうたやすいことではないはずである。
 学級委員長でもある武は、出席日数はいつも万全だった。
 麻生は風邪を引いた日以外は全て学校へと通っていた。
 二人の目に高台にある鳳翼学園の校舎が見えて来たようだ。
 武の後方から自転車が複数。水飛沫をばら撒きながら追い越していく。二人はいつものことなので気にせずに校門へと向かって行った。
 今では、学校へ通う生徒はごくまばらだった。
 いい加減に学校側も休校にしたらよいのだが、通いたがる生徒がいるので、仕方なく。小降りの雨なので高台という環境もあってなのか、校舎を解放しているようだ。
 午後には決まって水浸しの校舎全体には、明るい笑い声がするので、不思議なことである……。
 
 日本全土の空が泣いていた。
 いや、世界中が泣いていた。
 
 昼休みのことだ。
 武が麻生と共に理科室でお弁当を取り換えっこしている。
「相変わらずね。武のお母さんって、バランスが良いものばかり。うちって、何故か母さんが西洋かぶれだから……。もう、日舞には厳しいのにね」
 武は麻生のお弁当の中華のシューマイを食しながら、
「お前の母さんって、色々な海外の食材が楽しいからな。時々、羨ましいよ。俺の母さんって、家であまりにも肉類ばかりだしていた時があったから、その反省」
 そんな他愛もない言葉を交わす武と麻生の部屋の片隅に、武の唯一の親友の卓登(たくと) 博文が独りパンと牛乳を食しているようだ。
 貧相な奴で、いい奴なのだが口数が少ない。
 背も低く。常に下を向いていた。
 暗い性格だが、けれども、合気道では武と互角に渡り合えていたことを知っている。
 武とは中学の頃からの親友でもあるのだ。
「食い終わったから、教室に戻るよ」
 そう一言残して、卓登は立ち上がったが、俯き加減のその目は、いつも、武のスキを見出そうとしている武道家の目をしていた。
 道という字が好きな卓登は、小学生の頃に酷いいじめを受けてから、合気道の達人へと昇りつめたのだ。
 
 この理科室には、もう二人。麻生の友達がいた。
さっきまでいたが、今は教室へ戻ってしまった高取 里奈という名の女子だ。タロットカード占いが占い師顔負けの的中率の不思議な女で、全校生徒での成績が三番目と頭脳派なのだ。意外にも、おかっぱ頭の可愛い容姿である。
 ちなみに、武の成績は全校生徒で二番目である。
 もう一人は、麻生の後ろで髪をかき上げている美人で、美貌では学校内で二番目と噂される人気者の湯築 沙羅である。運動神経に大変優れ。陸上県大会二年連続優勝者である。 ここから見ても、茶色がかったボリュームのある髪が特徴的である。
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