新説 水の失われた神々

主道 学

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沈みゆく日本

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 余談だが、本堂先生は茶道部の顧問でもあって、茶道部にも時々顔を出す麻生にとっては師範のような存在なのだろう。
 黒板に向けられる麻生の目も何やら厳しいようだ。
 日舞から三味線まで、母親からの厳しい稽古を受けている麻生は、こういう時には、鬼気迫る。穏やかな性格だが環境的に作られてしまった。麻生のもう一つの顔だ。
「麻生。悪いが今日も部活は休め。先生も実は学校へ通うのが大変なんだ……。でも、雨が止むことを祈っているよ。それと、勿論、麻生だけじゃなく。君たちの努力が実ることを先生は心の底から祈っているんだねー」
 教室から笑い声が鳴り響いた。
本堂先生は、厳しさと優しさを適度にブレンドするのが得意なのだろう。若く。背が低いが、ここから見ても、生徒思いのいい先生なのだから。
「はい。でも、先生。恐らく無理です。この雨って……原因が……」

 麻生が不安を何も払拭しないで告げた。
「ああ……。確かニュースでは何かの惑星が近づいていて、世界規模の大気があっという間に大きく変化したとか……。地球は今、灰色の卵のようだって学者さんがいっていた。厚い雲によって全世界が覆われているんだよ。学校側でも、こんな時はどうしたらいいのかわからないのが現状なんだ。非常事態なのか、自然に身を任せるのか。判断するには、政府からの発表があるまでは、何もできないんだよ。残念だけど、今はどうすることもできないんだ」
 そう。本堂先生の言う通りに、この半年間も振り続ける雨の原因は、一つの惑星が地球に近づいてきたことによるのだ。私の知っている限り。そこには竜宮城があるのだ。
 実は竜宮城は、中国や日本の昔話による海の底ではなく。一つの惑星を統べ海に浮かんでいるのだ。

 浦島太郎は実在していた。
 浦島太郎は、亀を救った後、助けた亀のお礼に渦潮を使って別の惑星にワープしていたのだ。私の言っていることは、誰も知らない昔話の裏の話だ。けれども、大昔から大勢の人々がとある事情で竜宮城へと行き来していた。当然、玉手箱での末路も皆同じなのだ。
 浦島太郎は乙姫という地球外生命体と宴会を開き。食べ飲み。乙姫の情が移りそうな頃に、妻子持ちの彼は地球へと帰って行った。
 有名な玉手箱は、本来はワープによる肉体的な過度の成長性疲労を和らげる効果があるのだが、浦島太郎の身体的には限界がきていたし、竜宮城へ向かった人々もそうだった。
 地球からおおよそ一万光年先の惑星へと行き来することが、人間では限界を引き出してしまっているのだ。
 乙姫自身はどうだろう?
 私の知ることにも限界がある。
 何を思っているのだろう?
 けれども、竜宮城のある惑星は徐々に地球へと接近していた。
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