新説 水の失われた神々

主道 学

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沈みゆく日本

1-6

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 心に傷ができるほどの失恋を経験したようだ。
 そのために、自分に更に自信を持ちたかったのだろう。
 けれども、運の悪いことに二度目の恋は武だった。
 当然、麻生がいる。
 部活で平和的に麻生と対決をすることで、少しでも武との距離やわだかまりや対抗意識を解消しようともしたかったのだろう。しかし、それも無理なのだろう。
 もうすぐだ。
 日本が沈没するのだ。

 武は教室の隅で高取と何やら話していた。
 武の隣の麻生もこの時ばかりは沈みがちな顔だ。
「明後日には辿り着いているわ」
 高取は机に広げたタロットカードから一枚を引いた。
 世界のカードである。
「俺が、どこかの神社に行くのか?」
(なんでなんだ?)

「そう、そうしないと世界が……終わるのよ。私の占いの的中率は知っているわよね。ねえ、武さん。でも、あなたはこれから大きな力を得るの。その存在していないはずの神社で……」
 高取は世界のカードを目を瞑って無造作に引いていた。
「何度引いても昨日から世界のカードを引いてしまうの」
 それから、高取はおかっぱ頭が左右に揺れ、独り言のように呟いた。
「……スケベ」
「は?」
(??? 俺が?)

「明後日? そういえば高取さん。明後日は日曜よ。いくら何でも学校は休みよ」
 麻生は疑問をていし少し肩を傾けた。その先にはいつまでも武の肩があるかのようだ。時と場合を気にしない。そんな二人である。
 高取の手は少し震えていたが、麻生と武は至って平然な態度でタロットカードを見ている。
 突然にブルブルと震えだした高取は、深呼吸をして、またカードを引いた。
 そのカードは、やはり世界だった。

 高取 里奈は机の下へとタロットカードをしまうと、一人溜息をついた。
 どうやら、高取も武のことを好いていると思われる。
 いつもは、静かにしているような態度で、感情というものを外へと出さないが。ここから見ても武を見る目は少し違っていた。
 麻生とは中学の頃からの親友だった。
 何を考えているのかわからない性格で、教室で遊び半分に麻生を占い。将来、武と結婚すると占ったのがきっかけだったが、それから高取は武の占いを密かに頻繁にしているようである。
 不穏な未来が読めたのであろうか?
 それとも、ただの興味か?
 武にやはり好意を持ったのであろうか?
 もうすぐ下校時刻なので、高取は最後の授業を受けたようだ。
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