ご近所STORYⅡ エレクトリックダンス【改訂版】

主道 学

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選挙

選挙 2

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 僕は小型の端末を大事そうに抱える九尾の狐の神業のハッキング技術に感謝し、晴美さんの周りを見た。
 夜鶴が晴美さんの背後に見えない様にしゃがんでいた。
 
 後はシークレットサービスのノウハウが二体とボディガードの男性が三人。同じ選挙カーの屋根にいる。選挙カーの屋根に敵がいるか、選挙カーの屋根に敵が上るか、夜鶴はそれらを警戒しているのだ。

 晴美さんは夜鶴に目で合図をすると、マイクを力強く握った。
「国民の皆さん。スリー・C・バックアップを受け入れましょう。ノウハウを人間に近づける技術は、日々のノウハウの技術開発をしてくれていましたC区のお蔭です。労働力の確保のためにも、国民のためにも、ノウハウが老人福祉には必要不可欠なのです」
 辺りの人々は、内容が興田 道助と同じなので首を傾げるもの。不安げなものが現れだした。
 晴美さんはニッコリと笑って、重大なことを言ってくれた。

「そこで、私の政策にはノウハウを一家に一体。無料で提供します。勿論、スリー・C・バックアップのデータが入った状態でです。ノウハウに関係した部品の物価は凍結しますから、どうぞ、安心して一家に一体だけノウハウを置いて下さい。それが私のマニフェストで……」
 晴美さんがそこまで言うと、
 大歓声の中、
「ふざけるなーーー!!」
 いきなり、警備の警察官の脇を掻き分けた男性が、白いロープを乗り越え、選挙カーの屋根に上って叫び散らす。

「日本が更に衰退するじゃねえかーー!!」
 その男はズボンからナイフを手にしたが、瞬間、夜鶴のコルトが火を吹いた。
 弾は男の胸に命中して選挙カーから道路へと転げ落ちていった。
 夜鶴の射撃などの手の速さは、2年前の野球の試合で僕は知っていた。
 僕は胸を撫で下ろした。
 晴美さんは身を低くしていたが、また、真っ直ぐに立ち上がり、

「一家に一台だけノウハウを人間のサポートにする。これが、私の政策です。あくまでノウハウは人間のサポートなのです。どうか、皆さん。私に。人間性を一番に尊重する私に、清き一票をお願いします」
 晴美さんは演説をしながらの選挙カーが僕の目の前を通り過ぎていった。
 僕はもう安心だと思い。晴美さんの選挙カーを見送り、家に戻った。

「どう? 暗殺は防げた?」
 34階のキッチンのテーブルで、顔を伏していた河守が開口一番その言葉を口にした。
「ああ……」
「どうしたの? 何か思わせぶりな顔ね?」
 僕は胸騒ぎをしていた。
「何か変なんだ……?」
 河守が立ち上がり、僕の顔を覗いた。
「変……?」
 九尾の狐と原田が廊下のエレベーターからやってきた。
「取り敢えずは、一安心ね……」
 九尾の狐は小型の端末を大事そうにテーブルに置いて、一息入れるために大量の砂糖を入れたコーヒーをキッチンで淹れた。

「雷蔵さん。浮かない顔だね?」
 原田はあのボディアタックのせいで、顔が上気している。
 多分、久々なのだろう。
「ああ……今思ったんだけど……選挙には勝つのか?」
 僕は胸騒ぎの原因が解りかけていた。
「それは……?」
 河守が首を傾げた。
 興田 道助の宣言では金がかからない。逆にA区を食い物にすれば、B区とC区。つまり、日本の将来性に金が入る政策だ。
 しかし、晴美さんの政策は金がかかりすぎる。
 金が相当にかかって、国の人間的将来性はあるのだが、国民はそうは思はないかも知れない。

「うーん。確かに今の選挙活動的にはどうかと思うわ。あの宣言では……?」
 九尾の狐がコーヒーに口をつけた。
「この選挙で勝たないと、意味はないね……」
 原田はお洒落な度なしレンズをハンカチで拭いていた。
「でも、奈々川首相の実力に頼るしかないわ」
 河守はニッコリと笑った。
「確かに……」
 僕たちに出来ることはここまでか……。

 次の日。
 云話事放送Bで記者会見の場で晴美さんが退陣していた。
「晴美さん……」
 僕は34階のキッチンで朝食を河守と取っている時に、テレビを不安げに観て呟いた。
 そして、国民は興田 道助も選んでいたのだ。

 選挙では選挙存続期間というのがある。選挙で勝ち続ければ首相になっていられる。任期は廃止されていた。
 記者会見の場で、晴美さんの姿が見えなかった。そして、興田 道助がこう宣言した。
「日本の将来性の勝利ですよ。今から新しい政治が行われる……私が首相になったのだから、日本は発展していきます」
 新聞記者が質問を浴びせた。
「前奈々川首相(晴美さん)は退陣しましたが、どうしたと思いますか?」
 興田 道助がふざけて軽口を言った。
「きっと、前奈々川首相はトイレにいって、時間が掛かったので出てこなかったのですね」
 興田首相のセクハラ発言に新聞記者たちから笑い声が聞こえた。
 僕は頭にきてテレビを消した。

「きっと、何か起きたわ!」
 河守が突発的に電話で首相官邸の夜鶴に掛けた。
 原田が上の階からエレベーターでやってきた。
「やっぱりここか。寝室に二人でいたら、どうしようかと思ったよ。テレビで奈々川首相がいなかったから、何か起きたと思ったんだ」
 原田は緊迫した顔をして、僕の真向いの席に落ち着いて座った。
 河守のコールで、夜鶴が出たようだ。
「え……。トイレのすぐそばで寝ていた?」
 河守が辟易したが、次の言葉を夜鶴が言ったようで、すぐに緊迫した。
「毒? 倒れていたの?」

 僕は見誤った。
 毒のことを知っておきながら、警戒することをしなかった。
 敵は用意周到だったのだろう。
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