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第17話:森の呼び声と未知なる鉱脈
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夏の陽光が容赦なく照りつけ、森の緑が一層その濃さを増す頃、アキオたちの小屋の周りには、穏やかながらも活気に満ちた日常が流れていた。畑の作物は順調に育ち、子供たちの笑い声が絶えない。シルヴィアもすっかり家族の一員として溶け込み、その薬草の知識は彼らの生活に欠かせないものとなっていた。しかしアキオは、この安定に甘んじることなく、常に先のことを考えていた。
「みんな、ちょっと集まってくれ。これからのことで、少し話し合いたいことがあるんだ」 ある日の夕食後、アキオはシルヴィアと子供たちを前に切り出した。 「この小屋も、だいぶ住みやすくなったが、子供たちも大きくなる。それに、もっと多くの食料を安全に保存できる場所も必要だ。冬はまた必ずやってくるからな」 アキオの言葉に、シルヴィアも静かに頷く。「薬草も、乾燥させたり調合したりする専用の場所があれば、より効率的に質の良いものが作れるのだがな」 アヤネも「それに、もっと丈夫な食器とか、調理道具も欲しいです」と付け加える。 「そのためには、新しい素材を見つける必要があると思う。そこでだ。俺とシルヴィア、それから……アルトも、どうだ? 数日かけて、まだ行ったことのない森の奥を調べてみないか?」 アキオの提案に、アルトは目を輝かせた。「はい! 僕も行きたいです! アキオさんやシルヴィアさんの役に立ちたい!」 シルヴィアは少し考え込む素振りを見せたが、「アルトも、森の歩き方を学ぶ良い機会だろう。だが、危険な場所には踏み込ませぬし、私たちの指示には必ず従ってもらうぞ」と条件付きで了承した。アヤネは少し心配そうな顔をしたが、「ケンタやミコ、ユメのことは私に任せてください」と気丈に微笑んだ。
数日後、夜明けと共に出発の準備が整った。アキオ、シルヴィア、そして少し緊張した面持ちのアルト。三人は、数日分の干し肉や木の実、水筒、そして探索に必要な最低限の道具を背負い、アヤネたちに見送られて森の奥へと足を踏み入れた。 「気をつけてな、アキオ。アルトも、シルヴィアの言うことをよく聞くのだぞ」シルヴィアが、まるで自分の子供を送り出す母親のように、アキオとアルトに声をかける。その口調はぶっきらぼうだが、隠しきれない愛情が滲んでいた。
彼らが目指すのは、シルヴィアも普段はあまり立ち入らないという、小屋から見て西側の谷筋の奥だった。道中は、まさに未知との遭遇の連続だった。シルヴィアは、木々の種類や生えている苔の様子から方角を読み、獣の残した微かな痕跡からその種類や行動を推測し、アキオとアルトに森で生きるための実践的な知識を惜しみなく伝授していく。 「この赤い実は毒だ。鳥は食べるが、人間には害になる」「あの岩陰には、大きな蛇が潜んでいるかもしれん。不用意に近づくな」 アルトは、シルヴィアの言葉を一言一句聞き漏らすまいと真剣な表情で頷き、アキオもまた、エルフの持つ森への深い洞察力に改めて感嘆していた。
探索二日目の昼過ぎ、谷川沿いを遡っていた彼らは、ある開けた沢で足を止めた。川底や岸辺の土が、独特のきめ細かさと粘り気を持っているのにアキオが気づいたのだ。 「シルヴィア、この土はどう思う?」 シルヴィアは土を少量手に取り、指先でこねるようにして確かめると、わずかに目を見開いた。 「……これは、良質な粘土だ、アキオ。焼き締めれば、かなり丈夫な器になるだろう。あるいは、日干しレンガにして壁材にも……」 「本当か!」アキオの声が弾む。土器が作れれば、食器や保存容器の問題が一気に解決する。レンガができれば、より頑丈で快適な家も夢ではない。三人は、持ち帰れるだけの粘土のサンプルを採取した。
さらに翌日、彼らは鬱蒼とした木々に覆われた、薄暗い洞窟の入り口を発見した。 「この場所は……私も初めて見る。何かの獣の巣かもしれん。注意しろ」 シルヴィアが警戒を促し、三人は松明代わりに火をつけた木の枝を手に、慎重に洞窟の中へと進んでいった。中はひんやりとしており、滴り落ちる水の音だけが響いている。 しばらく進むと、洞窟の壁の一部が、赤黒く変色している箇所が広範囲に渡って見られた。アキオがその岩石を手に取り、持っていた石斧で叩き割ってみると、断面には鈍い金属光沢のようなものが見える。 「これは……まさか……」アキオは息をのんだ。地球での知識が、これが鉄鉱石である可能性を告げていた。 シルヴィアも、その岩石を興味深げに観察している。「エルフの古い伝承に聞く、『赤き岩』に似ているな。炎で溶かせば、硬きもの――鉄(くろがね)が得られると……」 さらに洞窟の奥では、壁面にキラキラと細かく光る、緑青を吹いたような鉱脈も見つかった。銅や錫といった、他の金属の可能性もある。 鉄が手に入れば、農具も、刃物も、建築用の釘も、今とは比べ物にならないほど質の高いものが作れる。それは、彼らの生活を一変させるほどの、とてつもない発見だった。
大量の粘土のサンプルと、鉄鉱石や他の鉱石と思われる岩石のかけらを手に、アキオ、シルヴィア、アルトは、興奮と期待に胸を膨らませながら小屋への帰路についた。 「アキオさん、これがあれば、もっとすごいものが作れるの!?」道中、アルトが目を輝かせて尋ねる。 「ああ、もちろんだ。だが、簡単なことじゃない。これからが本当の挑戦だな」アキオは笑顔で答えた。 小屋に戻ると、アヤネや他の子供たちが、彼らの持ち帰った話と見たこともない土や石のサンプルに、目を丸くして聞き入った。 新しい道具、より頑丈な家、そしてさらに豊かになるであろう食生活。アキオたちの未来への挑戦は、この森の奥で見つけた確かな希望の光と共に、今まさに、新たな章の幕を開けようとしていた。
「みんな、ちょっと集まってくれ。これからのことで、少し話し合いたいことがあるんだ」 ある日の夕食後、アキオはシルヴィアと子供たちを前に切り出した。 「この小屋も、だいぶ住みやすくなったが、子供たちも大きくなる。それに、もっと多くの食料を安全に保存できる場所も必要だ。冬はまた必ずやってくるからな」 アキオの言葉に、シルヴィアも静かに頷く。「薬草も、乾燥させたり調合したりする専用の場所があれば、より効率的に質の良いものが作れるのだがな」 アヤネも「それに、もっと丈夫な食器とか、調理道具も欲しいです」と付け加える。 「そのためには、新しい素材を見つける必要があると思う。そこでだ。俺とシルヴィア、それから……アルトも、どうだ? 数日かけて、まだ行ったことのない森の奥を調べてみないか?」 アキオの提案に、アルトは目を輝かせた。「はい! 僕も行きたいです! アキオさんやシルヴィアさんの役に立ちたい!」 シルヴィアは少し考え込む素振りを見せたが、「アルトも、森の歩き方を学ぶ良い機会だろう。だが、危険な場所には踏み込ませぬし、私たちの指示には必ず従ってもらうぞ」と条件付きで了承した。アヤネは少し心配そうな顔をしたが、「ケンタやミコ、ユメのことは私に任せてください」と気丈に微笑んだ。
数日後、夜明けと共に出発の準備が整った。アキオ、シルヴィア、そして少し緊張した面持ちのアルト。三人は、数日分の干し肉や木の実、水筒、そして探索に必要な最低限の道具を背負い、アヤネたちに見送られて森の奥へと足を踏み入れた。 「気をつけてな、アキオ。アルトも、シルヴィアの言うことをよく聞くのだぞ」シルヴィアが、まるで自分の子供を送り出す母親のように、アキオとアルトに声をかける。その口調はぶっきらぼうだが、隠しきれない愛情が滲んでいた。
彼らが目指すのは、シルヴィアも普段はあまり立ち入らないという、小屋から見て西側の谷筋の奥だった。道中は、まさに未知との遭遇の連続だった。シルヴィアは、木々の種類や生えている苔の様子から方角を読み、獣の残した微かな痕跡からその種類や行動を推測し、アキオとアルトに森で生きるための実践的な知識を惜しみなく伝授していく。 「この赤い実は毒だ。鳥は食べるが、人間には害になる」「あの岩陰には、大きな蛇が潜んでいるかもしれん。不用意に近づくな」 アルトは、シルヴィアの言葉を一言一句聞き漏らすまいと真剣な表情で頷き、アキオもまた、エルフの持つ森への深い洞察力に改めて感嘆していた。
探索二日目の昼過ぎ、谷川沿いを遡っていた彼らは、ある開けた沢で足を止めた。川底や岸辺の土が、独特のきめ細かさと粘り気を持っているのにアキオが気づいたのだ。 「シルヴィア、この土はどう思う?」 シルヴィアは土を少量手に取り、指先でこねるようにして確かめると、わずかに目を見開いた。 「……これは、良質な粘土だ、アキオ。焼き締めれば、かなり丈夫な器になるだろう。あるいは、日干しレンガにして壁材にも……」 「本当か!」アキオの声が弾む。土器が作れれば、食器や保存容器の問題が一気に解決する。レンガができれば、より頑丈で快適な家も夢ではない。三人は、持ち帰れるだけの粘土のサンプルを採取した。
さらに翌日、彼らは鬱蒼とした木々に覆われた、薄暗い洞窟の入り口を発見した。 「この場所は……私も初めて見る。何かの獣の巣かもしれん。注意しろ」 シルヴィアが警戒を促し、三人は松明代わりに火をつけた木の枝を手に、慎重に洞窟の中へと進んでいった。中はひんやりとしており、滴り落ちる水の音だけが響いている。 しばらく進むと、洞窟の壁の一部が、赤黒く変色している箇所が広範囲に渡って見られた。アキオがその岩石を手に取り、持っていた石斧で叩き割ってみると、断面には鈍い金属光沢のようなものが見える。 「これは……まさか……」アキオは息をのんだ。地球での知識が、これが鉄鉱石である可能性を告げていた。 シルヴィアも、その岩石を興味深げに観察している。「エルフの古い伝承に聞く、『赤き岩』に似ているな。炎で溶かせば、硬きもの――鉄(くろがね)が得られると……」 さらに洞窟の奥では、壁面にキラキラと細かく光る、緑青を吹いたような鉱脈も見つかった。銅や錫といった、他の金属の可能性もある。 鉄が手に入れば、農具も、刃物も、建築用の釘も、今とは比べ物にならないほど質の高いものが作れる。それは、彼らの生活を一変させるほどの、とてつもない発見だった。
大量の粘土のサンプルと、鉄鉱石や他の鉱石と思われる岩石のかけらを手に、アキオ、シルヴィア、アルトは、興奮と期待に胸を膨らませながら小屋への帰路についた。 「アキオさん、これがあれば、もっとすごいものが作れるの!?」道中、アルトが目を輝かせて尋ねる。 「ああ、もちろんだ。だが、簡単なことじゃない。これからが本当の挑戦だな」アキオは笑顔で答えた。 小屋に戻ると、アヤネや他の子供たちが、彼らの持ち帰った話と見たこともない土や石のサンプルに、目を丸くして聞き入った。 新しい道具、より頑丈な家、そしてさらに豊かになるであろう食生活。アキオたちの未来への挑戦は、この森の奥で見つけた確かな希望の光と共に、今まさに、新たな章の幕を開けようとしていた。
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