五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

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第26話:愛の巣の設計図と初めての夜への序曲

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 アキオから「君専用の、小さな離れのようなものを考えているんだ」と打ち明けられ、シルヴィアの胸は、これまで感じたことのないような甘い期待と、ほんの少しの戸惑いでいっぱいになっていた。彼の言葉の奥にある温かい想いは痛いほど伝わってくる。薬草を扱い、静かに思索にふけるための場所。それは確かに魅力的だった。だが――。

 数日間、シルヴィアはそのことをずっと考えていた。そして、ある晩、子供たちが寝静まり、アキオと二人きりで暖炉の火を見つめている時、彼女は意を決したように口を開いた。その白い頬は、暖炉の火のせいだけではない、確かな熱を帯びて赤く染まっていた。
「……アキオ」
「ん? どうしたんだ、シルヴィア」アキオが優しい眼差しを向ける。
「その……お前が考えてくれているという、私のための場所のことだが……」シルヴィアは一度言葉を切り、俯き加減に続けた。「薬草を扱う場所も、確かに必要だ。お前の心遣いは、本当に……嬉しい」
 そこまで言うと、彼女はアキオの服の袖をそっと掴み、小さな、しかしはっきりとした声で付け加えた。
「……だがな。どうせ……その、新しく作るというのなら……もっと、その……夜、お前と……二人きりで……静かに星を眺めたり、ゆっくりと……話をしたりできるような……そういう場所も……あった方が、良いのではないか……?」
 言葉は途切れ途切れで、最後の方はほとんど囁きのようだった。シルヴィアは顔を真っ赤にさせ、アキオの顔をまともに見ることができない。彼女の尖った耳の先まで、鮮やかな赤色に染まっている。それは、彼女の精一杯の勇気であり、アキオと共にありたいという切なる願いの表れだった。

 アキオは、シルヴィアの言葉に込められた真意を、即座に、そして痛いほどに理解した。それは、単なる談話室や寝室の提案ではない。彼女からの、共に夜を過ごし、より深い関係を築きたいという、純粋で、そして何よりも愛おしい願いだったのだ。
 アキオの胸に、熱いものが込み上げてくる。彼は、シルヴィアの震える手を優しく両手で包み込んだ。
「ああ、もちろんだ、シルヴィア。君の言う通りだ。俺も……俺も、君と二人きりで、誰にも邪魔されずに過ごせる場所が欲しいと、ずっと思っていたんだ」
 その言葉は、シルヴィアにとって、どんな薬よりも心を癒し、安堵させるものだった。彼女の緊張がふっと解け、潤んだ瞳がアキオを見上げる。
「本当か……アキオ……?」
「ああ、本当だとも」アキオは力強く頷いた。「君のための、そして……俺たちのための場所を、一緒に作ろう」

 シルヴィアの瞳から、ぽろり、と一筋の涙がこぼれ落ちた。それは喜びと安堵、そしてほんの少しの羞恥心がない混ぜになった、温かい涙だった。
「……私とて、エルフとして長く生きている。男女が……その、深く結ばれるということの意味や、その先にあるものくらいは……知識としては、知っているつもりだ。だが……」
 シルヴィアは言葉を濁し、再び顔を伏せた。その声は、か細く震えている。
「……実際に、誰かと……そのような関係になった経験は……ないのだ……。だから、その……もし、お前が……私を望んでくれるのなら……優しく……導いてくれなければ……私は、きっと、どうしていいか分からず……困ってしまう……」
 それは、森の賢者とまで呼ばれるエルフの薬師からは想像もつかないほど、初々しく、そして健気な告白だった。アキオはその言葉に、シルヴィアへの愛しさが止めどなく込み上げてくるのを感じ、彼女の華奢な体を強く、しかし壊れ物を扱うようにそっと抱きしめた。
「当たり前だろう、シルヴィア。君が不安に思うことは、何一つない。俺が、君を誰よりも大切にする。君の全てを、愛しているんだ」
 アキオの温かい胸の中で、彼の力強い心臓の鼓動を感じながら、シルヴィアは完全に心の鎧を脱ぎ捨てていた。彼女は子供のようにアキオの胸に顔をうずめ、しばらくの間、その温もりと安心感にただただ身を委ねていた。「アキオ……アキオ……」と、彼の名を繰り返し、愛おしそうに呟きながら。その声は、これ以上ないほど甘く、アキオの心を蕩かすようだった。

 新しい「愛の巣」の計画は、こうして二人の確かな愛を基盤として、より具体的で、そしてより甘美なものへと姿を変えようとしていた。シルヴィアの勇気ある一歩と、それに応えたアキオの深い愛情が、彼らの未来を鮮やかに照らし出す。
 これから始まる新しい建物の設計と建設は、単なる作業ではない。それは、二人の愛を育み、形にするための、かけがえのない共同作業となるだろう。そして、その先にある、初めて二人きりで迎える夜への期待が、シルヴィアの胸を、そしてアキオの胸をも、甘く焦がし始めていた。
 冬の寒さがすぐそこまで迫っているが、二人の心の中には、どんな暖炉の火よりも熱く、そして優しい温もりが満ち溢れていた。
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