26 / 387
第26話:愛の巣の設計図と初めての夜への序曲
しおりを挟む
アキオから「君専用の、小さな離れのようなものを考えているんだ」と打ち明けられ、シルヴィアの胸は、これまで感じたことのないような甘い期待と、ほんの少しの戸惑いでいっぱいになっていた。彼の言葉の奥にある温かい想いは痛いほど伝わってくる。薬草を扱い、静かに思索にふけるための場所。それは確かに魅力的だった。だが――。
数日間、シルヴィアはそのことをずっと考えていた。そして、ある晩、子供たちが寝静まり、アキオと二人きりで暖炉の火を見つめている時、彼女は意を決したように口を開いた。その白い頬は、暖炉の火のせいだけではない、確かな熱を帯びて赤く染まっていた。
「……アキオ」
「ん? どうしたんだ、シルヴィア」アキオが優しい眼差しを向ける。
「その……お前が考えてくれているという、私のための場所のことだが……」シルヴィアは一度言葉を切り、俯き加減に続けた。「薬草を扱う場所も、確かに必要だ。お前の心遣いは、本当に……嬉しい」
そこまで言うと、彼女はアキオの服の袖をそっと掴み、小さな、しかしはっきりとした声で付け加えた。
「……だがな。どうせ……その、新しく作るというのなら……もっと、その……夜、お前と……二人きりで……静かに星を眺めたり、ゆっくりと……話をしたりできるような……そういう場所も……あった方が、良いのではないか……?」
言葉は途切れ途切れで、最後の方はほとんど囁きのようだった。シルヴィアは顔を真っ赤にさせ、アキオの顔をまともに見ることができない。彼女の尖った耳の先まで、鮮やかな赤色に染まっている。それは、彼女の精一杯の勇気であり、アキオと共にありたいという切なる願いの表れだった。
アキオは、シルヴィアの言葉に込められた真意を、即座に、そして痛いほどに理解した。それは、単なる談話室や寝室の提案ではない。彼女からの、共に夜を過ごし、より深い関係を築きたいという、純粋で、そして何よりも愛おしい願いだったのだ。
アキオの胸に、熱いものが込み上げてくる。彼は、シルヴィアの震える手を優しく両手で包み込んだ。
「ああ、もちろんだ、シルヴィア。君の言う通りだ。俺も……俺も、君と二人きりで、誰にも邪魔されずに過ごせる場所が欲しいと、ずっと思っていたんだ」
その言葉は、シルヴィアにとって、どんな薬よりも心を癒し、安堵させるものだった。彼女の緊張がふっと解け、潤んだ瞳がアキオを見上げる。
「本当か……アキオ……?」
「ああ、本当だとも」アキオは力強く頷いた。「君のための、そして……俺たちのための場所を、一緒に作ろう」
シルヴィアの瞳から、ぽろり、と一筋の涙がこぼれ落ちた。それは喜びと安堵、そしてほんの少しの羞恥心がない混ぜになった、温かい涙だった。
「……私とて、エルフとして長く生きている。男女が……その、深く結ばれるということの意味や、その先にあるものくらいは……知識としては、知っているつもりだ。だが……」
シルヴィアは言葉を濁し、再び顔を伏せた。その声は、か細く震えている。
「……実際に、誰かと……そのような関係になった経験は……ないのだ……。だから、その……もし、お前が……私を望んでくれるのなら……優しく……導いてくれなければ……私は、きっと、どうしていいか分からず……困ってしまう……」
それは、森の賢者とまで呼ばれるエルフの薬師からは想像もつかないほど、初々しく、そして健気な告白だった。アキオはその言葉に、シルヴィアへの愛しさが止めどなく込み上げてくるのを感じ、彼女の華奢な体を強く、しかし壊れ物を扱うようにそっと抱きしめた。
「当たり前だろう、シルヴィア。君が不安に思うことは、何一つない。俺が、君を誰よりも大切にする。君の全てを、愛しているんだ」
アキオの温かい胸の中で、彼の力強い心臓の鼓動を感じながら、シルヴィアは完全に心の鎧を脱ぎ捨てていた。彼女は子供のようにアキオの胸に顔をうずめ、しばらくの間、その温もりと安心感にただただ身を委ねていた。「アキオ……アキオ……」と、彼の名を繰り返し、愛おしそうに呟きながら。その声は、これ以上ないほど甘く、アキオの心を蕩かすようだった。
新しい「愛の巣」の計画は、こうして二人の確かな愛を基盤として、より具体的で、そしてより甘美なものへと姿を変えようとしていた。シルヴィアの勇気ある一歩と、それに応えたアキオの深い愛情が、彼らの未来を鮮やかに照らし出す。
これから始まる新しい建物の設計と建設は、単なる作業ではない。それは、二人の愛を育み、形にするための、かけがえのない共同作業となるだろう。そして、その先にある、初めて二人きりで迎える夜への期待が、シルヴィアの胸を、そしてアキオの胸をも、甘く焦がし始めていた。
冬の寒さがすぐそこまで迫っているが、二人の心の中には、どんな暖炉の火よりも熱く、そして優しい温もりが満ち溢れていた。
数日間、シルヴィアはそのことをずっと考えていた。そして、ある晩、子供たちが寝静まり、アキオと二人きりで暖炉の火を見つめている時、彼女は意を決したように口を開いた。その白い頬は、暖炉の火のせいだけではない、確かな熱を帯びて赤く染まっていた。
「……アキオ」
「ん? どうしたんだ、シルヴィア」アキオが優しい眼差しを向ける。
「その……お前が考えてくれているという、私のための場所のことだが……」シルヴィアは一度言葉を切り、俯き加減に続けた。「薬草を扱う場所も、確かに必要だ。お前の心遣いは、本当に……嬉しい」
そこまで言うと、彼女はアキオの服の袖をそっと掴み、小さな、しかしはっきりとした声で付け加えた。
「……だがな。どうせ……その、新しく作るというのなら……もっと、その……夜、お前と……二人きりで……静かに星を眺めたり、ゆっくりと……話をしたりできるような……そういう場所も……あった方が、良いのではないか……?」
言葉は途切れ途切れで、最後の方はほとんど囁きのようだった。シルヴィアは顔を真っ赤にさせ、アキオの顔をまともに見ることができない。彼女の尖った耳の先まで、鮮やかな赤色に染まっている。それは、彼女の精一杯の勇気であり、アキオと共にありたいという切なる願いの表れだった。
アキオは、シルヴィアの言葉に込められた真意を、即座に、そして痛いほどに理解した。それは、単なる談話室や寝室の提案ではない。彼女からの、共に夜を過ごし、より深い関係を築きたいという、純粋で、そして何よりも愛おしい願いだったのだ。
アキオの胸に、熱いものが込み上げてくる。彼は、シルヴィアの震える手を優しく両手で包み込んだ。
「ああ、もちろんだ、シルヴィア。君の言う通りだ。俺も……俺も、君と二人きりで、誰にも邪魔されずに過ごせる場所が欲しいと、ずっと思っていたんだ」
その言葉は、シルヴィアにとって、どんな薬よりも心を癒し、安堵させるものだった。彼女の緊張がふっと解け、潤んだ瞳がアキオを見上げる。
「本当か……アキオ……?」
「ああ、本当だとも」アキオは力強く頷いた。「君のための、そして……俺たちのための場所を、一緒に作ろう」
シルヴィアの瞳から、ぽろり、と一筋の涙がこぼれ落ちた。それは喜びと安堵、そしてほんの少しの羞恥心がない混ぜになった、温かい涙だった。
「……私とて、エルフとして長く生きている。男女が……その、深く結ばれるということの意味や、その先にあるものくらいは……知識としては、知っているつもりだ。だが……」
シルヴィアは言葉を濁し、再び顔を伏せた。その声は、か細く震えている。
「……実際に、誰かと……そのような関係になった経験は……ないのだ……。だから、その……もし、お前が……私を望んでくれるのなら……優しく……導いてくれなければ……私は、きっと、どうしていいか分からず……困ってしまう……」
それは、森の賢者とまで呼ばれるエルフの薬師からは想像もつかないほど、初々しく、そして健気な告白だった。アキオはその言葉に、シルヴィアへの愛しさが止めどなく込み上げてくるのを感じ、彼女の華奢な体を強く、しかし壊れ物を扱うようにそっと抱きしめた。
「当たり前だろう、シルヴィア。君が不安に思うことは、何一つない。俺が、君を誰よりも大切にする。君の全てを、愛しているんだ」
アキオの温かい胸の中で、彼の力強い心臓の鼓動を感じながら、シルヴィアは完全に心の鎧を脱ぎ捨てていた。彼女は子供のようにアキオの胸に顔をうずめ、しばらくの間、その温もりと安心感にただただ身を委ねていた。「アキオ……アキオ……」と、彼の名を繰り返し、愛おしそうに呟きながら。その声は、これ以上ないほど甘く、アキオの心を蕩かすようだった。
新しい「愛の巣」の計画は、こうして二人の確かな愛を基盤として、より具体的で、そしてより甘美なものへと姿を変えようとしていた。シルヴィアの勇気ある一歩と、それに応えたアキオの深い愛情が、彼らの未来を鮮やかに照らし出す。
これから始まる新しい建物の設計と建設は、単なる作業ではない。それは、二人の愛を育み、形にするための、かけがえのない共同作業となるだろう。そして、その先にある、初めて二人きりで迎える夜への期待が、シルヴィアの胸を、そしてアキオの胸をも、甘く焦がし始めていた。
冬の寒さがすぐそこまで迫っているが、二人の心の中には、どんな暖炉の火よりも熱く、そして優しい温もりが満ち溢れていた。
316
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。
彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた
秋月静流
ファンタジー
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。
しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて……
テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる