五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

文字の大きさ
40 / 387

第40話:初めての炉、響く槌音と未来の鉄

しおりを挟む
 ●  作者からのお願いです  ●

こんにちは、よっしぃです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

もしこの物語を気に入っていただけましたら、「お気に入り」や「しおり登録」で応援していただけると、とても励みになります。

今後の更新の力になりますので、どうかよろしくお願いいたします。

●  ここより本文です  ●


 吐く息が白くなり始めた初冬の朝、アキオたちの村は新たな熱気に包まれていた。ドワーフの老鍛冶師ドルガンの指揮のもと、待望の製鉄炉の建設が本格的に始動したのだ。村の中央広場の一角、ドルガンが選定した場所に、村人たちの手で次々と資材が運び込まれていく。

「そこの若い衆、粘土の練り方が足りとらん! もっと腰を入れんか!」「アキオの小僧、耐火レンガの積み方はそれでいいが、目地にもっとあの特殊な泥を詰め込まんと、熱が逃げるぞ!」

 ドルガンの雷のような声が響き渡る。しかし、その厳しさの中には確かな技術と、鉄を生み出すことへの純粋な情熱が感じられ、村人たちも自然と力が入る。アキオも、ドルガンの指示に従いながら、自らレンガを積み、炉の基礎を固めていく。彼が触れたレンガや組み上げた石積みが、心なしか通常よりも頑丈に、そして精密に仕上がっていくのを、ドルガンは横目で見ながら(こいつの手際は、ただの素人ではないな…)と内心で評価していた。

「アキオ、ドルガン殿。この地域の赤松から作った炭は、普通の木炭よりも高い火力を長時間維持できることが分かった。炉の燃料として、これを使ってみてはどうだろうか」
 シルヴィアが、数種類の木炭の燃焼実験の結果をまとめた羊皮紙を手に、二人に提案する。その瞳には、アキオの新たな挑戦を支える妻としての自信と、森の賢者としての知恵が宿っていた。「奥方様」として、彼女は村の生活をより良くするための知識を惜しみなく提供していた。
「ほう、エルフの奥方の知恵か。確かに、燃料の質は鉄の出来を左右する。試してみる価値はありそうじゃな」
 ドルガンも、シルヴィアの的確な助言に頷く。

 炉の建設には、村の総力が挙げられていた。キナたち獣人は、その持ち前の馬力を活かして重い石材や大量の粘土を運び、アルトはドルガンの下で熱心に指示を聞き、鍛冶師としての第一歩を踏み出そうと目を輝かせている。レオノーラは、不測の事態に備えて周囲の警戒を怠らず、セレスティーナは子供たちを集めて、この新しい炉がもたらす未来について優しく語り聞かせていた。

 アヤネは、サツマイモと木の実の粉で作った温かい粥を大きな鍋で炊き出し、作業に励む村人たちに配って回る。「皆さん、お昼休憩にしましょう。これを食べて、午後も頑張ってくださいね」その手際の良さと心遣いは、十五歳の成人として、既に村の母親役のような存在感を放っていた。彼女の隣では、ミコとユメが小さな桶で水を運び、懸命に手伝っている。

 数日が経過し、ドルガンの指示とアキオたちの努力によって、赤黒い耐火レンガと特殊な粘土で組み上げられた、ずんぐりとした円筒形の炉がその姿を現し始めた。それはまだ完成形ではないが、村で初めての「製鉄炉」と呼ぶにふさわしい威容を放っていた。
「よし、今日はここまでじゃ! 明日は、この炉に初めて火を入れるぞ。ふいごの準備はいいな、アルト!」
 ドルガンが満足げに声を上げると、アルトが「はい、師匠! いつでも!」と力強く答えた。

 その夜、アキオはシルヴィアと共に、月明かりに照らされる建設途中の炉を眺めていた。
「本当に、ここまで来られるとは思わなかったな」アキオがしみじみと呟く。
「お前と、そして皆の力だ。それに…ドルガン殿のような新たな仲間との出会いも大きい」シルヴィアがアキオの腕にそっと寄り添う。「この炉が、私たちの村にさらなる力と、安心をもたらしてくれると信じている」
「ああ。鉄があれば、農具も、武器も、もっと良いものが作れる。皆の生活を守る力になるはずだ」
 アキオは、冷たい夜気の中で、隣にいるシルヴィアの温もりと、村人たちの期待を胸に、明日への決意を新たにする。まだ見ぬ鉄の輝きを夢見て、村の心は一つに燃えていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流
ファンタジー
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。 しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて…… テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...