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第82話:奥方様の深慮遠謀、芽吹く町の新たな礎
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アキオたちの町では、水車建設という大きな目標が掲げられ、村全体が活気に満ちていた。
製紙や製鉄も軌道に乗り、日々の生活は着実に豊かになっている。
そんな中、中央館の奥にある女性たち専用の談話室では、シルヴィア、アヤネ、キナ、セレスティーナ、レオノーラによる「妻会」が再び開かれていた。
今回の議題は前回以上にデリケートで、そしてアキオたちの未来の家族の形に関わる重要なものだった。
「皆、聞いてほしいの。シルヴィア奥方様の懐妊は私たち全員にとってこの上ない喜びですわ。そして、アキオ様が私たちそれぞれを深く愛してくださっていることも、日々の暮らしの中で痛いほど感じています」
最初に口火を切ったのは、意外にもセレスティーナだった。
彼女は以前の儚げな雰囲気から一歩踏み出し、王女としての聡明さとアキオの妻としての自覚を持って、真剣な眼差しで皆を見渡した。
「ですが……もし、この先、アヤネさん以外の私たち――シルヴィア様、キナさん、レオノーラ、そして私も含めて――が同じような時期に子を授かることになった場合……その間、アキオ様の夜のお相手を、私たちはどうお支えすればよいのかしら、と……」
その言葉に、部屋の空気は一瞬にして緊張感を帯びた。
妊娠中の体力的な負担や産後の養生を考えれば、これまでのような夜のローテーションは難しくなる可能性がある。それは妻たち全員が薄々感じていた、しかし口に出しにくかった懸念だった。
キナが少し困ったように頭を掻く。
「うーん、確かにそうだねぇ。あたしたちがみんなお腹が大きくなったり、赤ん坊の世話で手一杯になったりしたら、だんなが寂しい思いをしちまうかもしれないねぇ……」
レオノーラも真剣な表情で頷く。
「アキオ殿のお身体のことも考えれば……その、お力を十分に受け止められる者がいなくなるのは問題やもしれぬ」
アヤネはまだ自分には直接関わりのない話だと分かっていながらも、姉妹のような妻たちの真剣な議論に固唾を飲んで聞き入っていた。
シルヴィアは皆の言葉を静かに聞き、そして穏やかに、しかし確かな声で言った。
「ええ、それは非常に重要なことですわ。アキオが私たちとの愛の交わりを通して心身ともに満たされ、そしてあの素晴らしい活力を維持していることは、この町の発展にとっても欠かせないこと。私たち妻の務めは、彼に寂しい思いをさせず、常に愛情で包み込むことです」
シルヴィアはそこで一度言葉を切り、少し声を潜めて続けた。
「もし、私たち全員が同時に妊娠するような奇跡が起きたとしても……あるいは、それぞれの体調がすぐれない時があったとしても……アキオへの愛情を伝える方法は夜の交わりだけではありませんわ。言葉を尽くして愛を語り、心を込めて肌に触れ、彼の疲れを癒やすための……そうね、別の形での献身的な奉仕だってあるはずです。大切なのは、アキオが常に私たちに愛されていると実感できること」
シルヴィアの言葉は直接的な表現を避けながらも、妻としての深い覚悟とアキオへの揺るぎない愛情を示唆していた。
他の妻たちもその言葉の奥にある意味をそれぞれに理解し、顔を赤らめながらも真剣な表情で頷き合う。
「それに……」とシルヴィアは続けた。「アキオが本当にどうしようもなく寂しさを感じるようなことがあれば……その時は、彼自身が私たちに新たな『助け』を求めるかもしれません。あるいは、私たちが彼のために新たな『家族』を迎えることを考える日が来るのかもしれませんわね。もちろん、それはずっと先の話で、今は私たち五人で彼を全力で支えていくことが第一ですけれど」
その言葉はこの場の誰にとっても衝撃的だったが、シルヴィアの揺るぎない瞳とアキオへの深い愛を知る者たちにとって、それは決してあり得ない未来ではないのかもしれない、と予感させるものだった。
その重い議題が一段落すると、話題は村の具体的な発展計画へと移った。
「アキオ様も、水車ができれば製材が楽になるとおっしゃっていましたわね」アヤネが切り出す。「学び舎を拡張するにも、村人たちの家を新しく建てるにも、質の良い板がたくさん必要になります。水車の動力を使った『製材所』を作るというのはとても良い考えだと思います」
ドルガンから製鉄技術を学んでいるアルトから、鉄製の鋸を使えばより効率的に製材できるという話も出ていた。水車で大きな鋸を動かせれば、丸太を引く手間が格段に省ける。それに挽き屑も燃料や家畜の敷料に使える。
さらにセレスティーナがレンガ造りの建物について触れた。
「レンガの家は丈夫で素晴らしいのですが、レンガとレンガを繋ぐ目地や床を固めるために、何か『セメント』や『モルタル』のようなものがあれば、さらに強固で気密性の高い建物ができるのではないでしょうか。私の故郷では、石灰石を焼いて粉にしたものや火山灰を混ぜた土などを使っていたと聞きます」
「石灰石……それは素晴らしい着眼点ですわ」シルヴィアが目を輝かせる。
「この辺りの岩山を探せば見つかるかもしれませんわね。石を砕いて粉にする技術と、それを焼くための特別な窯も必要になるでしょうけれど、ドルガン様ならそのあたりの知識もお持ちかもしれません」
「アキオ様にもぜひお伝えしましょう」アヤネが提案する。
「きっと新しい可能性を見出してくださるはずです」
妻たちの秘密の会議は、夫への深い愛情の確認から、村の未来を左右する壮大な技術革新の構想へと広がっていった。彼女たちの知恵と愛情、そしてアキオを支えようという強い意志が、この「アキオの町」をさらに豊かで、そして魅力的な場所へと変えていく原動力となるのだろう。
アキオの知らないところで、彼の愛する妻たちは着実に、そして力強く、未来への礎を築き始めていた。
製紙や製鉄も軌道に乗り、日々の生活は着実に豊かになっている。
そんな中、中央館の奥にある女性たち専用の談話室では、シルヴィア、アヤネ、キナ、セレスティーナ、レオノーラによる「妻会」が再び開かれていた。
今回の議題は前回以上にデリケートで、そしてアキオたちの未来の家族の形に関わる重要なものだった。
「皆、聞いてほしいの。シルヴィア奥方様の懐妊は私たち全員にとってこの上ない喜びですわ。そして、アキオ様が私たちそれぞれを深く愛してくださっていることも、日々の暮らしの中で痛いほど感じています」
最初に口火を切ったのは、意外にもセレスティーナだった。
彼女は以前の儚げな雰囲気から一歩踏み出し、王女としての聡明さとアキオの妻としての自覚を持って、真剣な眼差しで皆を見渡した。
「ですが……もし、この先、アヤネさん以外の私たち――シルヴィア様、キナさん、レオノーラ、そして私も含めて――が同じような時期に子を授かることになった場合……その間、アキオ様の夜のお相手を、私たちはどうお支えすればよいのかしら、と……」
その言葉に、部屋の空気は一瞬にして緊張感を帯びた。
妊娠中の体力的な負担や産後の養生を考えれば、これまでのような夜のローテーションは難しくなる可能性がある。それは妻たち全員が薄々感じていた、しかし口に出しにくかった懸念だった。
キナが少し困ったように頭を掻く。
「うーん、確かにそうだねぇ。あたしたちがみんなお腹が大きくなったり、赤ん坊の世話で手一杯になったりしたら、だんなが寂しい思いをしちまうかもしれないねぇ……」
レオノーラも真剣な表情で頷く。
「アキオ殿のお身体のことも考えれば……その、お力を十分に受け止められる者がいなくなるのは問題やもしれぬ」
アヤネはまだ自分には直接関わりのない話だと分かっていながらも、姉妹のような妻たちの真剣な議論に固唾を飲んで聞き入っていた。
シルヴィアは皆の言葉を静かに聞き、そして穏やかに、しかし確かな声で言った。
「ええ、それは非常に重要なことですわ。アキオが私たちとの愛の交わりを通して心身ともに満たされ、そしてあの素晴らしい活力を維持していることは、この町の発展にとっても欠かせないこと。私たち妻の務めは、彼に寂しい思いをさせず、常に愛情で包み込むことです」
シルヴィアはそこで一度言葉を切り、少し声を潜めて続けた。
「もし、私たち全員が同時に妊娠するような奇跡が起きたとしても……あるいは、それぞれの体調がすぐれない時があったとしても……アキオへの愛情を伝える方法は夜の交わりだけではありませんわ。言葉を尽くして愛を語り、心を込めて肌に触れ、彼の疲れを癒やすための……そうね、別の形での献身的な奉仕だってあるはずです。大切なのは、アキオが常に私たちに愛されていると実感できること」
シルヴィアの言葉は直接的な表現を避けながらも、妻としての深い覚悟とアキオへの揺るぎない愛情を示唆していた。
他の妻たちもその言葉の奥にある意味をそれぞれに理解し、顔を赤らめながらも真剣な表情で頷き合う。
「それに……」とシルヴィアは続けた。「アキオが本当にどうしようもなく寂しさを感じるようなことがあれば……その時は、彼自身が私たちに新たな『助け』を求めるかもしれません。あるいは、私たちが彼のために新たな『家族』を迎えることを考える日が来るのかもしれませんわね。もちろん、それはずっと先の話で、今は私たち五人で彼を全力で支えていくことが第一ですけれど」
その言葉はこの場の誰にとっても衝撃的だったが、シルヴィアの揺るぎない瞳とアキオへの深い愛を知る者たちにとって、それは決してあり得ない未来ではないのかもしれない、と予感させるものだった。
その重い議題が一段落すると、話題は村の具体的な発展計画へと移った。
「アキオ様も、水車ができれば製材が楽になるとおっしゃっていましたわね」アヤネが切り出す。「学び舎を拡張するにも、村人たちの家を新しく建てるにも、質の良い板がたくさん必要になります。水車の動力を使った『製材所』を作るというのはとても良い考えだと思います」
ドルガンから製鉄技術を学んでいるアルトから、鉄製の鋸を使えばより効率的に製材できるという話も出ていた。水車で大きな鋸を動かせれば、丸太を引く手間が格段に省ける。それに挽き屑も燃料や家畜の敷料に使える。
さらにセレスティーナがレンガ造りの建物について触れた。
「レンガの家は丈夫で素晴らしいのですが、レンガとレンガを繋ぐ目地や床を固めるために、何か『セメント』や『モルタル』のようなものがあれば、さらに強固で気密性の高い建物ができるのではないでしょうか。私の故郷では、石灰石を焼いて粉にしたものや火山灰を混ぜた土などを使っていたと聞きます」
「石灰石……それは素晴らしい着眼点ですわ」シルヴィアが目を輝かせる。
「この辺りの岩山を探せば見つかるかもしれませんわね。石を砕いて粉にする技術と、それを焼くための特別な窯も必要になるでしょうけれど、ドルガン様ならそのあたりの知識もお持ちかもしれません」
「アキオ様にもぜひお伝えしましょう」アヤネが提案する。
「きっと新しい可能性を見出してくださるはずです」
妻たちの秘密の会議は、夫への深い愛情の確認から、村の未来を左右する壮大な技術革新の構想へと広がっていった。彼女たちの知恵と愛情、そしてアキオを支えようという強い意志が、この「アキオの町」をさらに豊かで、そして魅力的な場所へと変えていく原動力となるのだろう。
アキオの知らないところで、彼の愛する妻たちは着実に、そして力強く、未来への礎を築き始めていた。
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