五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

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第94話:生命樹の下の奇跡、愛と絆の保育計画

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 シルヴィアの陣痛は、静かに、しかし確実に強まっていった。アキオは、レオノーラの回復をアヤネとセレスティーナに託し、シルヴィアのそばに付きっきりで、彼女の冷たくなった手を握りしめ、励まし続けた。出産場所は、シルヴィア自身の希望で、生命樹が間近に見える中央館の一室が選ばれた。窓の外では、生命樹がいつもより一層優しい光を放ち、まるでシルヴィアの出産を見守っているかのようだった。

 助産師のマーサが冷静に指示を出し、アヤネが汗を拭い、薬湯を飲ませる。キナも、自身の出産経験を元に、シルヴィアの手を握り、「奥方様、頑張れ! もうすぐだんなそっくりの(あるいは奥方様似の)可愛い赤ん坊に会えるぜ!」と力強く励ます。
 エルフの出産は、人間と基本的なプロセスは同じものの、どこか神聖な雰囲気に包まれていた。シルヴィアの額からは玉のような汗が流れ落ち、苦痛に顔を歪めながらも、その瞳の奥には母となる強い意志と、アキオへの深い愛が宿っている。アキオ(その黒髪は若々しい艶を保ち、白髪などどこにも見当たらない)は、ただひたすらに彼女の手を握り、愛の言葉を囁き続けた。
「シルヴィア、頑張ってくれ…! 俺も、子供も、君を愛している…!」

 どれほどの時間が経っただろうか。生命樹の光が部屋いっぱいに満ち溢れ、聖獣の子たちが窓の外で心配そうにクゥンと鳴いた、その瞬間。
「――おぎゃあ、おぎゃあ!」
 力強い、しかしどこか清らかな産声が、部屋に響き渡った。
 マーサが、生まれたばかりの赤ん坊を優しく布で包み、シルヴィアの胸元へ。それは、銀色の髪と、父親譲りの穏やかな目元を持つ、玉のような男の子だった。
「アキオ……私たちの…愛しい子よ……」
 シルヴィアは、涙を流しながら、生まれたばかりの我が子を愛おしそうに抱きしめた。アキオもまた、言葉にならない感動に打ち震え、シルヴィアと赤ん坊を優しく抱き寄せた。部屋は、新しい命の誕生を祝福する、温かく神聖な喜びに満ち溢れていた。

 シルヴィアの出産は、母子ともに健康で、村中に大きな安堵と祝福をもたらした。レオノーラも順調に回復し、キナと共に、新米ママとして育児に奮闘する日々が始まった。
 アキオは、シルヴィアへの感謝と愛情を改めて深くすると同時に、キナ、レオノーラ、そしてまだ見ぬセレスティーナの子(彼女のお腹も少しずつ目立ち始めていた)と、それぞれの母である妻たちへの愛情もまた、変わることなく、むしろ日ごとに深まっていくのを感じていた。彼は、それぞれの妻の元を訪れ、育児を手伝い、感謝の言葉を伝え、そして夜にはそれぞれの妻との時間を大切にした(もちろん、産後の体調を最優先に考慮しながら)。

 村のベビーラッシュは、アキオの家族だけでなく、他の避難民たちの間でも続いており、アキオは村長として、新たな課題に直面していた。それは、子供たちの保育と教育環境の整備である。
「アヤネ、セレスティーナ。村の子供たちが、安全に、そして健やかに育つための場所が必要だと思うんだ。学び舎とは別に、もっと幼い子たちを預かり、親たちが安心して仕事に出られるような…そう、『保育施設』のようなものが作れないだろうか」
 アキオの提案に、アヤネとセレスティーナは顔を見合わせ、そして力強く頷いた。
「素晴らしいお考えですわ、アキオ様! 私も、学び舎で年長の子たちを見ていると、もっと幼い子供たちのための場所の必要性を感じておりました」セレスティーナが言う。
「はい、アキオ様。マーサさんにもご相談し、子供たちが安全に、そして楽しく過ごせるような場所を、皆で作り上げていきましょう。保育士として、村の経験豊かな母親たちや、子供好きな若い娘さんたちにも協力をお願いするのが良いかもしれませんわね」アヤネも具体的な提案を加える。
 こうして、アキオの町に、新たな公共施設「保育所(仮称:生命樹の若葉園)」の建設計画が持ち上がった。場所は、中央館と学び舎の中間あたり、生命樹の優しい木漏れ日が届く、日当たりの良い一角が候補として挙がった。

 一方、村の中心でますます神々しい輝きを増す生命樹の元では、聖霊様が、聖獣の子たちと何やら深刻な顔つきで話し込んでいる姿が、時折目撃されるようになっていた。
(ふむ…この生命樹の力の増大は、予想以上じゃのう。森の主が残した種も、ただならぬ気配を放ち始めておる。これは…もしかすると、この土地の『理(ことわり)』そのものが、大きく変わろうとしておるのかもしれん…)
 聖霊様は、アキオたちの知らないところで、この村と森の未来に関わる、何か重大な変化の兆しを感じ取り、聖獣たちと共にその意味を探ろうとしているようだった。その思案は、まだ誰にも明かされることはない。

 シルヴィアの出産という大きな喜びと、保育施設という新たな希望。そして、聖霊様と聖獣たちが感じ取る森の神秘。アキオたちの町は、生命の誕生と未来への布石が幾重にも重なり合い、静かに、しかし確実に、新たな時代へと歩みを進めていた。
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