五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

文字の大きさ
121 / 387

第121話:聖女の受胎、日々の祝福と育まれる命

しおりを挟む
 生命樹の下での聖婚の儀から一夜が明けた。アキオの町の空は冬晴れに輝き、清浄な空気が満ちている。中央館のアウロラの私室では、アキオとアウロラが、満ち足りた穏やかな表情で互いを見つめ合っていた。アウロラの身体からは、以前にも増して神々しく、そして母となるであろう慈愛に満ちたオーラが優しく放たれている。
「アウロラ…昨夜のことは、まるで夢のようだ…」
「いいえ、アキオ。あれは確かな現実。わらわのお腹には…あなた様との、新しい『暁の光』が、確かに息づいております」
 アウロラは、そっと自身の下腹部に手を当て、至上の喜びに満ちた微笑みを浮かべた。アキオもその手に自分の手を重ね、言葉にできないほどの感動と愛情が胸に込み上げてくるのを感じていた。

 朝食の席では、シルヴィアをはじめとする妻たちが、改めてアキオとアウロラを心から祝福した。
「アウロラ様、そしてアキオ様、本当におめでとうございます。アウロラ様のお身体が、神々しい光で満たされているのが、私にも感じられますわ」シルヴィアが穏やかに言う。
 アヤネも、自身の少し膨らみ始めたお腹を愛おしそうに撫でながら、「アウロラ様も、これからはお身体を大切になさってくださいね。何かあれば、いつでもお手伝いいたしますわ」と心からの笑顔を向けた。キナ、レオノーラ、セレスティーナも、それぞれの言葉で二人の幸福を喜び、アキオ家の新たな家族の誕生への期待に胸を膨らませていた。

 しかし、その日の午後、アウロラの表情に僅かな曇りが見られた。彼女はアキオを生命樹の元へと誘うと、少し不安げな面持ちで切り出した。
「アキオ…どうやら、わらわのこの身体と、お腹の御子は…まだ完全には安定しておらぬようなのです」
「えっ、それはどういうことだ、アウロラ?」
「受胎は確かに果たされました。じゃが、わらわの聖なる本質と、あなた様の人間としての生命の精髄、そして生命樹の力が融合して生まれたこの御子は、あまりにも強大で特別な存在。その成長と、わらわ自身の母胎としての安定のためには…どうやら、あなた様の『生命の祝福』の力が、継続的に、そして直接的に注がれ続ける必要があるようなのです」
 アウロラは、生命樹にそっと手を触れながら、その啓示とも言える感覚をアキオに伝えた。それは、彼女が本能的に、あるいは生命樹との交感を通じて悟った真実だった。
「つまり…その…これからも、定期的に、昨夜のような…?」アキオが少し戸惑いながら尋ねる。
 アウロラは頬を染めながらも、しかし真剣な眼差しで頷いた。「はい、アキオ。御子が…そしてわらわが完全に安定するその日まで…あなた様の愛と力で、わたくしたちを満たしていただきたいのです。それは…まあ、日々の『子作り』ということになりましょうか」
 その言葉に、アキオは一瞬驚いたが、すぐにアウロラの手を力強く握り返した。
「アウロラ…君と、お腹の子のためなら、俺は何でもする。君たちが安定するまで、俺の全てで君たちを支え、愛し続けると誓うよ」
 その決意は、アウロラの不安を溶かすように、彼女の心に温かく染み渡った。

 それからというもの、アキオとアウロラの日々には、新たな「聖なる営み」が加わった。それは、昼間は町の長として、あるいは職人として忙しく働くアキオが、夜にはアウロラの元を訪れ、彼女と愛を交わすというものだった。それはもはや、単なる情欲を満たすための行為ではない。アウロラの言葉通り、彼女と御子の生命を育み、安定させるための、神聖で重要な儀式。アキオは、自身の「生命の祝福」の力を最大限に高め、愛するアウロラとその内に宿る新しい光へと、惜しみなく注ぎ込んだ。
 その度に、アウロラの身体はより一層輝きを増し、その表情は安らぎと喜びに満たされていく。彼女のお腹の「暁の光」もまた、アキオの愛を受けるたびに力強く脈打ち、健やかな成長を続けているのが、二人には感じられた。

 その一方で、アヤネの妊娠生活は、人間のそれとして穏やかに、しかし確実に進んでいた。つわりも比較的軽く、シルヴィアや経験豊かなマーサの助けを借りながら、彼女は母となる喜びを日々噛み締めていた。時折、アウロラと二人きりでお茶を飲みながら、互いの体調のことや、生まれてくる子供への想いを語り合うこともあった。聖女の神秘的な妊娠と、人間の慈愛に満ちた妊娠。形は違えど、アキオの子を宿すという共通の喜びが、二人を優しく結びつけていた。
「アウロラ様のお腹の赤ちゃんも、きっとアキオ様に似て、優しくて力強い子になりますね」
「うむ。そしてアヤネ、そなたの子もまた、そなたの優しさとアキオの強さを受け継ぐ、素晴らしい子になるじゃろう」
 そんな会話が、陽だまりの中で交わされることもあった。

 町の片隅では、ドルガンの工房から、いつもより心なしか楽しげな槌の音が聞こえてくる。ヘルガのお腹も、日に日に僅かながら膨らみを増しているようだ。アキオの町は、アヤネとアウロラ、そしてヘルガという三人の妊婦を抱え、まさに生命の祝福に満ち溢れていた。
 アキオは、愛する妻たちと、そのお腹に宿る新しい命、そして町の皆の笑顔を守るため、父として、夫として、そして町の長として、その全ての力を捧げることを改めて心に誓うのだった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流
ファンタジー
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。 しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて…… テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...