五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

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第159話:エルドリアの再会と王女たちの決意、聖域への帰還

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 アキオ、セレスティーナ、レオノーラ、凛、そして数名の未亡人たちを乗せた改良型馬車は、二日間の旅路を経て、エルドリア解放区の国境近くに位置する砦町に到着した。そこは、ガルニア帝国の圧政から解放されたばかりの、荒々しさと復興への熱気が混在する場所だった。しかし、一行が到着を告げ、アキオの名とエルドリア王家の紋章(セレスティーナが示した)が確認されると、砦の門は厳かに開かれ、中からは凛々しい若武者――セレスティーナの弟、クリストフ王子その人が、側近たちを伴って姿を現した。 「姉上! レオノーラ殿! よくぞ…! よくぞご無事で、そして、このエルドリアの地へお戻りくださいました!」 クリストフ王子は、セレスティーナとレオノーラの姿を認めると、感極まった様子で駆け寄り、まず姉であるセレスティーナを、次に忠臣レオノーラを力強く抱きしめた。その瞳には涙が溢れ、長い間の苦難と再会の喜びが爆発したかのようだった。セレスティーナも弟の無事と、その見違えるほど逞しく成長した姿に涙し、レオノーラもまた、主君との再会に騎士としての忠誠と深い安堵の表情を浮かべていた。 アキオは、その感動的な再会を温かく見守り、そしてクリストフ王子と初めて言葉を交わした。若いながらもその瞳には強い意志と民を思う優しさが宿っており、アキオは彼がエルドリアの希望たるにふさわしい人物であると直感した。クリストフ王子もまた、姉たちを救い、エルドリアに計り知れない支援を続けるアキオに対し、最大の敬意と心からの感謝の言葉を述べた。凛は、アキオの秘書官としてその傍らに控え、冷静に、しかし強い関心を持ってその歴史的な会見の様子を記録し、クリストフ王子の言葉遣いや態度、周囲の側近たちの様子などを細かく観察していた。一行は、砦町の兵士や民からも「王女様のご帰還だ!」「我らが王子と共に、エルドリアに真の光を!」と、熱烈な歓迎を受けた。

 数日間の滞在中、アキオたちはクリストフ王子や抵抗勢力の幹部たちと、エルドリアの現状と未来について集中的に協議を重ねた。食糧、医療、防衛、そして民生の安定――課題は山積していたが、アキオがもたらした知識や技術、そして何よりも生命樹の秘薬は、彼らにとって絶望の淵からの一筋の光明となっていた。アキオは、自身の経験を元に、農業生産の向上策や、町の衛生管理、そして何よりも民の心を一つにするための共同体運営について、具体的な助言を行った。

 その中で、セレスティーナとレオノーラは、エルドリアの土を踏み、民の顔を直接見て、そして実弟であるクリストフ王子の想像を絶する苦労と献身的な姿を目の当たりにするうちに、ある強い決意を固めていた。 「アキオ様…わたくしたちは、やはりこの地に残り、クリストフを直接支え、エルドリアの復興に全力を尽くしたいと思います」 ある夜、セレスティーナが、レオノーラと共にアキオにそう告げた。その瞳には、迷いはなく、王族としての、そしてエルドリアの民としての強い責任感が宿っていた。 アキオは、二人のその決意を静かに受け止めた。「…分かった。君たちのその想い、そしてエルドリアへの深い愛は、誰よりも強く、そして尊いものだ。俺も、君たちの決断を心から尊重し、これからも全力で支援する」 そして、アキオは続けた。「ただし、セレスティーナ、レオノーラ。君たちの愛しい子供たち――エドワード、ライナス、ステラ、エルザは、今、俺の町で、多くの家族の愛情に包まれて健やかに育っている。エルドリアが真の平和を取り戻し、君たちが心から安心して子供たちを迎えられるようになるその日まで、あの子たちは俺と、シルヴィアやアウロラ、アヤネ、キナたちが、責任をもって、そして何よりも深い愛情をもって育てる。だから、君たちは安心して、故国のためにその力を尽くしてほしい。…そして、エルドリアが落ち着いたら、必ず、一度はアキオの町に戻って、子供たちの成長した姿を見てやってくれ。それが、俺からの、そして皆からの心からの願いだ」 アキオの言葉に、二人の王女は涙を浮かべ、深く頷いた。愛する我が子と離れる辛さはある。しかし、それ以上に、子供たちが最も安全で愛情豊かな環境で育つこと、そして自分たちが故国のために果たすべき使命があることを、彼女たちは理解していた。「はい、アキオ様…必ず、必ず戻ります。そして、子供たちに…このエルドリアの美しい空を、いつか見せてあげられるように…胸を張って、アキオ様の元へ…」 アキオはまた、セレスティーナたちがエルドリアで王族としての立場を取り戻すにあたり、彼女たちの身の回りの世話はエルドリアの侍女たちが担うべきだと察し、今回同行してきたアキオの町の未亡人たちには、自分と共に町へ帰るよう伝えた。彼女たちも、エルドリアの現状と王女たちの崇高な決意を理解し、アキオの深い配慮に感謝した。

 数日後、アキオ、凛、そして未亡人たちは、エルドリアの人々からの万感の感謝と、セレスティーナ、レオノーラとの涙ながらも希望に満ちた別れを経て、アキオの町への帰路についた。二人の王女は、力強く、そして輝かしいエルドリアの未来をその双肩に担い、クリストフ王子と共に、希望に満ちた、しかし険しい道を歩み始めた。アキオは、馬車の窓から遠ざかる砦町と、そこに残る二人の愛する妻の姿を見つめ、彼女たちの未来に幸多かれと、心の底から強く願った。 凛は、この数日間の出来事――王族の再会、国家再興への情熱と戦略、そしてアキオの卓越した外交手腕と深い人間愛、さらには二人の妻を送り出すという大きな決断――を間近で観察し、多くのことを感じ、そして記録していた。アキオという男性の器の大きさと、彼が築き上げた聖域の持つ真の意味。それは、彼女の凝り固まった価値観や男性への不信感を、確実に、そして静かに溶かし始めているのかもしれない。

 アキオの町へ戻ると、シルヴィアをはじめとする妻たちが、温かく、そして全てを察したかのような優しい笑顔で彼らを迎えた。セレスティーナとレオノーラがエルドリアに残るという決断は、皆にとっても寂しい知らせではあったが、彼女たちの崇高な使命とアキオの想いを深く理解し、エルドリアへの変わらぬ支援を続けることを改めて誓い合った。 アキオは、エルドリアでの経験と、二人の妻を送り出したことの責任の重さを胸に、自らの聖域のさらなる発展と、そこに生きる全ての家族の幸福を守り抜くため、新たな決意を固めるのだった。アキオの町の物語は、また一つ大きな節目を越え、新たな章へと進んでいく。
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