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模擬戦とダンジョン

第235話 生産系を軽視するという事

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「逆に聞きますが、生産系ジョブ、どれだけレベル上げしていますか?」
「は??そんな事に時間は割けられないじゃないか!何言ってるんだ?」
 ・・・・生産系のジョブを何だと思っているんでしょうか?

「僕は選定を受けるまでに色々なスキルを得られるようにと、積極的に生産系は学びました。」
「だ、だからってなんで俺が・・・・」
「創意工夫。」

「は?創意工夫?」
「人は日々成長しないといけないんです。そこには色々な事があります。そして成長と言っても目に見えない部分もあります。後どうしても壁に阻まれ歩みが止められてしまう事もあるでしょう。そんな状況になった時、そこで諦めるのか、諦めずにあがくのか。僕はあがきました。そして今この場でできる事は何か、状況の許す限り考えました。そこで思いついたのが己のレベルを上げ、強くなる事です。しかし現実は実に厳しい。どう考えても目の前からこちらへ飛んで向かってくる魚、あれを仕留める己の姿が考え付かないし、実力もありません。で、ここで諦めれば死が待っています。」

 ・・・・気が付けば全員僕の周りに集まってしまいましたが、今更です。

「僕だけならそれもありでしょう。そこまでだった。頑張ったけれど駄目だった、よく頑張ったよね僕、と。だけど当時僕の傍には、セシルがいたんだ。」

 セシルは僕の手を握ってくれます。

「あの時デルクと私は生きるか死ぬかの瀬戸際だった。まず食料がない。水は休憩所にあった。本来なら何とか休憩所へ辿り着けさえすれば魔法陣も使える。だがこの時魔法陣は機能しなかった。そして食料も何とか手に入ったが、塩がない。」
 セシルが間に入ってくれます。
 何だか落ち着きます。

「し、塩がないとどうなるんだ?」

「短期的にはどうにもなりませんが、長期的に見ればまず身体の動きが悪くなります。食欲も低下し、判断力もなくなっていきます。そして兎に角筋力が低下し、やがて意識を失うでしょう。このダンジョンでは致命的です。」

「なら予め準備をしていけば!」

「準備できていなかったら?想定外の出来事で塩を失ったら?僕達の場合そもそもこんな下層へ、何の準備もないままやって来る事なんて想定外ですし、生き残れませんよ。だからと言って生きる事を放棄する、つまり諦めるっていう事ですが、僕はこのままここで朽ち果てる気はありませんでしたよ。足掻いて足掻いて何とか考えました。僕とセシルがどうやって生きてダンジョンを脱出できるか。魔法陣が機能していないとなると、兎に角上を目指すか下を目指さないといけない。上は・・・・僕達に悪意を持って待ち構えている人々がいる可能性が高い。じゃあどうすれば?下に向かうしかない。そんな中考えて作ったのがこの囲いです。最初はもっと雑な造りでした。3代目までは長持ちしませんでしたしね。これは4代目?5代目だったかな。」

「デルクは道具もろくに無いのに頑張ってこれを作ってくれた。そして役立った。」
 あまり思い出したくないけれど、何度も壊れたんだよね。
「そしてこれのおかげで僕とロースは命を救われた。」
 レイナウトが合いの手を差し伸べてくれる。
「そ、そうよ。私達も捨てられたけれど、運よくデルクが上の階層を目指してこの囲いで移動中の所に私達落っこちたのよ?全身骨折したけれど生き延びたわ。」
 あの時はロースも酷い状態だったけどね。


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