平和な日常は終わりを告げた――体格に恵まれぬ三十路の兵士が手にしたのは、触れた能力を己の力に変える『天賦転換』絶望から始まる遅咲きの英雄譚

よっしぃ

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オランド王国

第125話 世界樹の聖域、破られる禁忌

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 ダンジョンでは、ヴィレたち突入班が悪魔の眷属との激戦を繰り広げていた。その頃、世界樹の根元では、聖女リーンが倒れたレクスの傍らで回復を待っていた。世界樹はレクスの聖なる奇跡により、わずかに回復したが、ダンジョンから流れ込む異常なマナにより、再び弱り始めている。

「早く……レクス、目を覚まして……」リーンは、レクスの顔を心配そうに見つめる。

 その時、リーンは異様な気配を感じた。世界樹の周囲に張り巡らされた、精霊たちや古代の力による聖なる結界に、何かが接触した兆候。そして、それに続く、おぞましい、歪んだマナの流れ。

 ウレンスとアントンだ。悪魔に操られるように、あるいは、半ば正気を失ったまま、彼らは世界樹の聖域へとたどり着いてしまったのだ。彼らの体からは、マナ導管攪乱器を使用した影響か、悪魔との契約によるものか、歪んだマナが溢れ出ている。

 リーンが彼らを止めようとする間もなく、異変は起こる。悪魔は、ウレンスとアントンを、世界樹への道を切り開くためのいけにえとしたのだ。彼らの歪んだマナ、そして悪意に染まった魂が、聖なる結界と世界樹の防護を破る鍵として利用される。

 おぞましい光と共に、ウレンスとアントンの体が弾け飛ぶ。彼らの存在は、歪んだエネルギーとなって世界樹の根元に叩きつけられた。その瞬間、世界樹を守る聖なる結界がひび割れ、亀裂が生じる。

 そして、その裂け目から、悪魔が姿を現した。それは、漆黒の体と、歪んだ翼、そして憎悪に燃える赤い瞳を持つ、おぞましい存在だった。悪魔は、世界樹の聖域に近づけないはずだった。しかし、ウレンスとアントンという「人間」を贄とし、その歪んだ魂とマナを結界破りの道具とすることで、禁忌を破り、聖域へと無事到達したのだ。悪魔の眷属は、ダンジョンで調査団の足止めをするための囮であり、ウレンスとアントンこそが、悪魔が世界樹へ至るための真の鍵だったのだ。

「うがははははっ! 見つけたぞ、世界樹!」悪魔は歪んだ笑い声を上げ、世界樹に向かって手をかざす。黒い、破壊的なエネルギーが世界樹に叩きつけられる。

 世界樹は悲鳴のような呻きを上げ、その生命の輝きをさらに失っていく。リーンは、その場で立ち尽くすことしかできない。聖なる力を持つ彼女でさえ、この悪魔の放つ圧倒的な邪悪な力の前では、あまりにも無力だった。

 悪魔は、世界樹を攻撃し始める。幹に亀裂が走り、葉が枯れ落ちていく。世界樹の力が急速に失われていくのを感じる。このままでは、世界樹は完全に破壊されてしまう。世界の生命の源が失われれば、下界は死に絶えるだろう。

 もう少しで世界樹を破壊し終える、という時――。

 その絶望的な瞬間、悪魔の目の前で、倒れていたはずのレクスが、まるで奇跡のように目覚めた。全身の魔力は枯渇しているはずなのに、その瞳には強い光が宿っている。
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