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第14話 王国が鉄不足で鍋釜まで徴収している頃、俺はオリハルコンを建材に使って職人をドン引きさせていた
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開拓村の移住から数日。
元村人たちは、安全で豊かな暮らしに涙し、ベヒーモスと共に驚異的なスピードで農地を広げていた。
だが、国作りにはまだ足りないものがある。
「……道具がないな」
俺は農具や、住人たちの住居を見ながら顎を撫でた。
今は俺の『創造魔法』で無理やり作っているが、細かいメンテナンスや、生活雑貨の生産までは手が回らない。
「武器や防具の整備も必要ですしね。私の鎧も、そろそろプロの手で調整したいです」
アリシアが少しサイズが変わった(食生活が良すぎて発育した)胸元を気にしながら言う。
「よし。次は『職人』と『商人』だ。……王国一の工業都市へ行くぞ」
◇
王国の南、工業都市ガルド。
ここは本来、鉄と煙の匂いが活気となっていた街だ。
だが今、街は怒号と悲鳴に包まれていた。
「出せ! 鉄を出せと言っているんだ!」
王都から派遣された徴税官たちが、鍛冶ギルドの倉庫を強引にこじ開けている。
「ま、待ってくだせぇ!
それは客から預かった農具でさぁ! 溶かして剣にするなんて無茶だ!」
必死に止めようとしているのは、髭を蓄えた頑固そうなドワーフの老人。
王国一の鍛冶師、ガルド親方だ。
「うるさい! 勇者様の剣が折れたのだ! 新しい剣を作るために、貴様らの店の鉄をすべて徴収する! これは王命だ!」
徴税官はドワーフを蹴り飛ばす。
ディランが去り、物流が止まった王国では、深刻な物資不足に陥っていた。そのため、職人たちの商売道具まで奪う暴挙に出ていたのだ。
「ちくしょう……なんて国だ……。これじゃあ、俺たちはもう仕事ができねぇ……」
ガルド親方が絶望し、地面に拳を叩きつけた。
その時。
「――随分とシケた材料を集めてるな」
涼やかな声が響いた。
全員が振り返ると、瓦礫の山の上に一人の男が立っていた。
「だ、誰だ貴様は!」
「通りすがりの『遊び人』だよ。……おい爺さん。そんな錆びた鉄屑を取り上げられて、泣いてるのか?」
ディランは徴税官たちが集めた鉄製品を鼻で笑った。
「て、鉄屑だと!? これは貴重な資源だぞ!」
「資源ねぇ。……本物の資源ってのは、こういうのを言うんだよ」
ディランがポケットから無造作に「石ころ」を取り出し、放り投げた。
カラン、コロコロ……。
それが地面に転がった瞬間、ドワーフたちの目が飛び出た。
「なっ……!? そ、その青白い輝き……まさか『ミスリル』か!?」
「こっちの金色の塊は……『オリハルコン』!? 伝説の金属じゃねぇか!」
市場に出れば、小指の先ほどの大きさで城が建つレベルの超希少金属。
それが、砂利のように転がっている。
「な、ななな……!」
徴税官たちも腰を抜かした。
「おい親方。俺の国に来れば、その金属(ゴミ)は使い放題だ。
燃料は『世界樹の枝』、炉の火は『サラマンダーの直火』を用意してある」
ディランが悪魔的な笑みを浮かべて手を差し伸べる。
「どうだ? 鍋釜を奪われるこの街で朽ち果てるか、伝説の金属で神具(アーティファクト)を打ち放題の人生か。……好きな方を選べ」
職人たちの目に、狂気にも似た光が宿った。
職人とは、良い素材のためなら魂すら売る生き物だ。
「……行くに決まってんだろぉぉぉぉ!!」
ガルド親方が叫んだ。
それに続き、街中の鍛冶師、細工師、そして彼らと取引していた商人たちが一斉に雪崩れ込んできた。
「俺も行く! オリハルコンを叩かせてくれ!」
「私は商人です! その素材、流通させてみせます!」
「俺は服屋だ! ドラゴンの革で服を作りたい!」
「よし、全員採用だ。……ゲート・オープン」
ズズズズズズッ!!
再び、巨大な転移門が開く。
工業都市の中枢機能であったギルドと工房、そして数千人の技術者たちが、一瞬にして消え去った。
◇
残されたのは、空っぽになった倉庫と、呆然とする徴税官たちだけ。
「あ、あ……」
彼らは理解していなかった。
技術者を失った国がどうなるか。 武器も直せず、農具も作れず、経済が完全に死ぬということを。
◇
深層、俺たちの国。
移住してきたドワーフたちは、目の前に積まれた「オリハルコンの山(建材用)」を見て、泡を吹いて気絶しかけていた。
「お、おい大将……これ、本当に使っていいのか?」
「ああ。余ってるからな。とりあえず、住民全員分の食器と農具をオリハルコンで作ってくれ」
「農具をオリハルコンで!? どんな贅沢だ!?」
「丈夫で長持ちするだろ?」
こうして。
我が国は、世界最高の技術力と、無駄にオーバースペックな日用品を手に入れた。
最近の悩みは、農民が使う『クワ』が切れ味鋭すぎて、うっかり岩盤まで耕してしまうことくらいだ。
(第14話 終わり)
元村人たちは、安全で豊かな暮らしに涙し、ベヒーモスと共に驚異的なスピードで農地を広げていた。
だが、国作りにはまだ足りないものがある。
「……道具がないな」
俺は農具や、住人たちの住居を見ながら顎を撫でた。
今は俺の『創造魔法』で無理やり作っているが、細かいメンテナンスや、生活雑貨の生産までは手が回らない。
「武器や防具の整備も必要ですしね。私の鎧も、そろそろプロの手で調整したいです」
アリシアが少しサイズが変わった(食生活が良すぎて発育した)胸元を気にしながら言う。
「よし。次は『職人』と『商人』だ。……王国一の工業都市へ行くぞ」
◇
王国の南、工業都市ガルド。
ここは本来、鉄と煙の匂いが活気となっていた街だ。
だが今、街は怒号と悲鳴に包まれていた。
「出せ! 鉄を出せと言っているんだ!」
王都から派遣された徴税官たちが、鍛冶ギルドの倉庫を強引にこじ開けている。
「ま、待ってくだせぇ!
それは客から預かった農具でさぁ! 溶かして剣にするなんて無茶だ!」
必死に止めようとしているのは、髭を蓄えた頑固そうなドワーフの老人。
王国一の鍛冶師、ガルド親方だ。
「うるさい! 勇者様の剣が折れたのだ! 新しい剣を作るために、貴様らの店の鉄をすべて徴収する! これは王命だ!」
徴税官はドワーフを蹴り飛ばす。
ディランが去り、物流が止まった王国では、深刻な物資不足に陥っていた。そのため、職人たちの商売道具まで奪う暴挙に出ていたのだ。
「ちくしょう……なんて国だ……。これじゃあ、俺たちはもう仕事ができねぇ……」
ガルド親方が絶望し、地面に拳を叩きつけた。
その時。
「――随分とシケた材料を集めてるな」
涼やかな声が響いた。
全員が振り返ると、瓦礫の山の上に一人の男が立っていた。
「だ、誰だ貴様は!」
「通りすがりの『遊び人』だよ。……おい爺さん。そんな錆びた鉄屑を取り上げられて、泣いてるのか?」
ディランは徴税官たちが集めた鉄製品を鼻で笑った。
「て、鉄屑だと!? これは貴重な資源だぞ!」
「資源ねぇ。……本物の資源ってのは、こういうのを言うんだよ」
ディランがポケットから無造作に「石ころ」を取り出し、放り投げた。
カラン、コロコロ……。
それが地面に転がった瞬間、ドワーフたちの目が飛び出た。
「なっ……!? そ、その青白い輝き……まさか『ミスリル』か!?」
「こっちの金色の塊は……『オリハルコン』!? 伝説の金属じゃねぇか!」
市場に出れば、小指の先ほどの大きさで城が建つレベルの超希少金属。
それが、砂利のように転がっている。
「な、ななな……!」
徴税官たちも腰を抜かした。
「おい親方。俺の国に来れば、その金属(ゴミ)は使い放題だ。
燃料は『世界樹の枝』、炉の火は『サラマンダーの直火』を用意してある」
ディランが悪魔的な笑みを浮かべて手を差し伸べる。
「どうだ? 鍋釜を奪われるこの街で朽ち果てるか、伝説の金属で神具(アーティファクト)を打ち放題の人生か。……好きな方を選べ」
職人たちの目に、狂気にも似た光が宿った。
職人とは、良い素材のためなら魂すら売る生き物だ。
「……行くに決まってんだろぉぉぉぉ!!」
ガルド親方が叫んだ。
それに続き、街中の鍛冶師、細工師、そして彼らと取引していた商人たちが一斉に雪崩れ込んできた。
「俺も行く! オリハルコンを叩かせてくれ!」
「私は商人です! その素材、流通させてみせます!」
「俺は服屋だ! ドラゴンの革で服を作りたい!」
「よし、全員採用だ。……ゲート・オープン」
ズズズズズズッ!!
再び、巨大な転移門が開く。
工業都市の中枢機能であったギルドと工房、そして数千人の技術者たちが、一瞬にして消え去った。
◇
残されたのは、空っぽになった倉庫と、呆然とする徴税官たちだけ。
「あ、あ……」
彼らは理解していなかった。
技術者を失った国がどうなるか。 武器も直せず、農具も作れず、経済が完全に死ぬということを。
◇
深層、俺たちの国。
移住してきたドワーフたちは、目の前に積まれた「オリハルコンの山(建材用)」を見て、泡を吹いて気絶しかけていた。
「お、おい大将……これ、本当に使っていいのか?」
「ああ。余ってるからな。とりあえず、住民全員分の食器と農具をオリハルコンで作ってくれ」
「農具をオリハルコンで!? どんな贅沢だ!?」
「丈夫で長持ちするだろ?」
こうして。
我が国は、世界最高の技術力と、無駄にオーバースペックな日用品を手に入れた。
最近の悩みは、農民が使う『クワ』が切れ味鋭すぎて、うっかり岩盤まで耕してしまうことくらいだ。
(第14話 終わり)
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