自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

セカイ

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 「おい、真壁銀譲」

 「──頼む!!」

 なんの躊躇いもない土下座。
 俺は去年、一人の男の前で頭を下げていた。
 
 「お前、うちのモンこんだけ伸ばしといてよく言うもんだな」

 「それは⋯⋯俺がいくら話し合いを求めたのにもかかわらず、手を出してきたから⋯⋯仕方ないことだ」

 座布団に座る奴は、胡座をかいては片腕を支えに顎を乗せて怠そうにブツブツ何か言っている。

 「駄々をこねるな。
 チッ、面倒くせぇな」

 しばらく無言の状態が続く。
 聞こえるのは煙草を吸う呼吸だけだ。

 「⋯⋯んで?」

 「ん?」

 「ん?じゃ、ねぇよ。
 こんだけやっといて頼むしか言われなかったら俺も何なのかわからんだろ。

 さっさと顔を上げろ。
 男だろうが。

 男が土下座をするのは人間界では二つ。
 自分の愛した女を助けるためか、家族を助けるための二択だ」

 俺は、顔を上げて言う。

 「後者だ」

 「──何?」

 この数年。
 俺は護衛として大将たちと歩んできた。

 だが、俺は⋯⋯何も活躍出来ていない。
 貢献出来ていないのだ。
 
 「護衛としてやるべき事なのに、草薙⋯⋯お前に負けたことも、守るべき対象に護られてる。

 これが護衛としてあるべき姿なのか?」

 同じような立場として、草薙に訊ねたかった。

 「ダセェことをいつまで考えるな。
 それで?」

 「もっと強くなりたい。
 だが、どう強くなればいいのかが俺には分からない」

 「⋯⋯⋯⋯」

 真顔数秒見つめられた末、軽く鼻で笑われる。

 「それで?」

 「考えても、答えは出なかった。
 特殊部隊にいる人間に武器の使い方を習った」

 「それで?」

 「格闘技も再度やり直した」

 「ハァ⋯⋯それで?」

 「筋力や体力面も努力した」

 「あぁ、そんで?」

 「どれも意味を成さなかった。
 伸び代と言うべきか?
 あまりそれが少ないのか、今が限界値なのか。
 
 全く伸びない。
 何をしたらいいのか⋯⋯全くわからない。
 だから、一人を除いて、俺の知ってる中で最も強い男に強くなる方法を聞きに来た」

 深く煙草を吸いながら、吐き。

 「それでこのザマか」

 確かにやりすぎた自覚はある。

 「ぁ⋯⋯ぁうっ」

 数十人。
 俺が伸ばした人数。

 草薙の護衛だが、強いと思って挑んだのだが。

 すると大きく溜息をついては、足を崩し、広げ天井を見上げる。

 「⋯⋯⋯⋯」

 奴のあんな顔は初めて見た。
 あんな奴でも、悩むのか。
 
 「それで?」

 「そ、それで?」

 「いくら?」

 「か、金か?」

 「あぁ⋯⋯いや、まぁ今度吹っかけてやるから、サービスだ」

 その意味を──俺は深く理解していなかったが、何故か了承を得た。







 「ッハ!」

 背中から思い切り落ちる。 

 やはり強い。
 コイツはただその場に立って煙草片手にもう片方の手で力すら入ってない。

 のにも関わらず、箒で払ってるかのように俺を合気道の技でひっくり返してくる。
 
 「ハァ⋯⋯真壁銀譲」

 これでもう何回目だ?
 勝てる気がしない。

 「確かにお前は強いかもしれない。
 ──雑魚相手ならな」

 「⋯⋯っ」

 「別に弱いとは思ってねぇ。
 だが、お前はそもそも色々問題がある」

 問題?俺に?

 「分からない⋯⋯と言ったところだな?」

 「あ、あぁ」

 「お前は奪う楽しさを知らない」

 「奪う⋯⋯楽しさ?」

 「お前は強さとは守れればいいと思っているだろう?

 それを強さと呼んで」

 「そうではないのか?」

 「⋯⋯なら何故俺に負ける?」

 そう言われ、下を向いた。
 確かに。

 あの時も。
 ──あの時だって。

 "俺はコイツに一度だって勝てたことがなかった"

 「図星だな」

 「その通りだ」

 「フッ、嘘を吐かなかったことは褒めてやる」
  
 「光栄だ」
  
 「真壁銀譲。
 お前にとって強さとはなんだ?」

 「守る為の強さだ」

 「10点」

 「え?」

 「真壁銀譲⋯⋯""総合圏外""。
 だからお前は俺に負けるんだドアホが」

 あんな体勢で罵られているのに、実際に負けているからぐうの音も出ない。

 「ッたく」

 カキーンとデュポンライターの開閉音が響く。

 「お前も吸え。
 どうせ吸いたくて仕方ないだろう?」

 「今はそっちが上だ」

 「知らねぇよ。
 俺が吸えと言ったら吸うんだよ」

 まさかやつから火をつけてもらう日が来るとは。

 「真壁銀譲。一つ訊ねる」

 「なんだ?」

 「人間の中で世間一般で何故弱者と強者が存在しているのか⋯⋯お前に分かるか?

 何故弱者が弱者で、強者は何故強者なのか」

 真剣に考えるのだが、答えにあまり近付かない。

 「1点。遅すぎる」
 
 「話が大きすぎる」

 「うるせぇよ。
 今お前は弟子みたいなもんだ」
 
 「⋯⋯確かに」

 「答えはシンプルだ。
 奪われ続けているから弱く、奪い続けている奴が強いだけだ」

 「⋯⋯っ」

 「ではどうすればいい?」

 答えは俺でも分かる。
 でも、それは口にしたくはない。

 「真壁銀譲。
 お前は今までそのままでいても誰も文句は言ってこないだろう。

 何度も言うが、確かにお前は弱くない。
 しかしだ」

 煙草を指で弾き。

 「お前には──決定的に自己が存在していない」

 ポトッと落ちる吸い殻。
 俺はその間、何も考えられなかった。

 「獣ですら自己はある。
 海の生物にも、弱者を甚振る奴がいる。
 動物にすらいる。

 何故か?そいつ等は例外なく強者だからだ。
 強者は例外なく一度奪う経験を経ているから強いのだ」

 「⋯⋯それは」

 「違うか?学歴社会だからないとでも?
 面接で受かるのは?
 強者である学歴が優位である者。

 弱者は学歴がない者。
 分かるだろ?
 世の中は複雑のように見えて単純で物凄くシンプルだ。

 それを人間たちはコミュニケーション能力などと言い訳をし、肝心な事から逃げ続ける。

 童貞のクソガキ共が何故芋っぽく見えるのか?

 ヲタクは何故独特に映るのか?

 雄として何も経験していないからだ。
 それが世の中の摂理であり、本能的な常識だ。

 雌が惚れ込むのはチャラい男?
 ⋯⋯当たり前だ。
 
 どう考えても経験していて自分より沢山のものを持っている雄に股を開くのは当然。

 そうやって雄は進化してきたんだ。
 残りカスを貰う?
 そんなのは弱者の戯言だ。

 男は自分の遺伝子を他の土壌がない所へいかに残すことを考えている。

 対して女は、優秀な遺伝子を残す為に経験値のある男を求める。


 ──まるで今のお前だ」

 拾った吸い殻を俺にぶつけては、ニタニタ笑って煙草を吸い出す。

 「童貞小僧。
 何を恐れてる?
 自分が暴力のまま生きるのが怖いのか?

 受け入れたら自分が自分じゃなくなりそうだからビビって口にしないのか?

 どうなんだ?
 お前の口で答えろ」

 そう言われ、頭に過ぎったのは⋯⋯今は亡き家族の言葉。


 ーーアニキ!
 アニキはやっぱり⋯⋯正義の拳って感じじゃないすか?
 
 ーーでも、アニキはアニキはらしく居てほしいっす!

 ーー別に中身がクズだろうとなんだろうと──俺はアニキを慕い続けるッス!

 
 一度、自分を見失いかけたことがある。
 だがその時、助けてくれたのは、賢だった。

 夜叉という名前をつけ、空気が悪い俺達を浄化するような、そんな素晴らしい男だった。

 「どうなんだ?」

 「俺は、変わらないといけないのか」

 「誰がそう言った」

 「ん?」

 顔が上がる。

 「経験しろと言ってるだけだ。
 誰もそう生きろとは言ってねぇだろうが」

 それから試してみた。
 風間の人間を借りて。

 「どうだ?」

 拳についた血。
 殴りつけた。

 奪った。
 奴の言う回収にも付き合った。

 「何も感じない。
 草薙はこれが楽しいのか?」

 「ぷっ、お前⋯⋯つくづくヤクザ向いてねぇよ」

 ケタケタ磔にされた未回収分、報復として男を蹴り上げて笑っている。

 「⋯⋯⋯⋯」

 だがヤツは。
 すぐに真顔になった。

 「真壁銀譲」

 「ん?」

 「強くなれる方法はある。
 というより、もう何度もうちに来て戦っているわけだから、そこら辺の奴には負けないだろう」

 あぁ。奴の言いたいことは分かっている。

 「お前が欲しいのは──強者という壁を相対したとき、勝てるようになりたいということだろう?」

 「その通りだ」

 「一つだけある」

 思わず胸が苦しくなった。
 あるのか?と。

 「何キョトンしてやがる。
 今までのは教えてやる為の必要経路だ」
 
 「そ、そうだったのか」

 てっきりコイツの趣味なのかと。

 「お前は気付かないだろうが、俺はお前に必要な技術だけを教えた。

 受けの技術もな。
 だが──」

 ヤツの中で、今まで見てきた表情で一番、真剣だった。

 「死ぬぞ?」

 「⋯⋯っ」

 「今度は冗談じゃない。
 格闘技?武術?反射神経?

 コレの前ではきっとひれ伏すだろう。

 だが、代償がある」

 「──やる」

 迷いはなかった。
 俺は何も成し遂げられなかった半端なリーダーだ。

 石田、賢。
 家族に良いところを見せられていない俺が、一度は背中を見せられるのであれば、それで十分だ。

 「ふんっ、そう来なくちゃな」

 だが、その顔は、どこからしくない顔だ。

 「何をすればいい?」

 「実はそんなに難しくない」

 「難しくない?」

 「あぁ。
 原始的な手法であり、耐え切れない者はそこで全てお陀仏」

 「な、何を──」

 「懐かしいよ」

 「ぐうっ⋯⋯!」

 首を鷲掴みされる。

 「原始的な根源。
 それはなんだと思う?」

 「ぁ⋯⋯あぁっ」

 突然掴んだと思ったら⋯⋯なんだ?
 ただ殺しに来てるだけじゃないか!

 「根源⋯⋯聞いてるか?真壁銀譲」

 答えられない。
 首の骨をへし折るつもりか!?

 「ぁぁっ⋯⋯あ」

 「人はな? 
 突き詰めれば孤独だよ。

 孤独という恐怖だ。

 ⋯⋯目を閉じろ」

 そう言われ、飛びそうな意識の中、最後に行えたのが目を閉じるという事だった。

 「見えるか?
 今お前は、嵐の海に揺られている。
 雷がそこら中から鳴り響き、豪雨がお前を打ち付け、海に浮いているただ一匹の虫けら。

 ──自由も効かない。
 お前の得意な身体も、感覚も、全て取られている」

 「⋯⋯⋯⋯ぁ」

 「沈め。死という深海に」

 そう言われると、本当に周りの見えない海に落ちていくようだった。

 「浮遊感があってよ、身体の制御なんて出来ない。

 月が照らしていた世も、視界は堕ちる」

 苦しい。頭が働かない。
 暗闇だ。

 ただ、ただ。怖い。

 音もない。暗闇。
 でも浮いている。

 「そう。
 ある時には沈没したなぞの場所に行ったりする。

 そこは何故か息ができて、でも、孤独だ。

 キシキシ木が歪む音が聞こえる。
 たまにキィィって聞こえるだろう。

 天井から水漏れしている水滴がポタポタ定期的に聞こえるのがお前の感じる音の全てで、でもたまに、人っ気いない空間の中で足音が聞こえる。

 意味が分からない。そういう恐怖。
 お前は恐怖できっと、丸まっているのが精一杯だろう」

 そうだ。
 俺は今、何も出来ずにただ──縮こまっているだけだ。

 「中々やるな。
 気付けばお前はジェットスキーで走ってるだろう?

 何故か分からないが、波に乗って100近い見たこともない巨大な波に乗って空へ飛ぶ。

 そして。
 その空中から一気にまた海へ堕ちる」

 ⋯⋯。⋯⋯。

 「沈む、沈む。慣れたな。
 すると説明不能の深海の暗闇には重く、そして身体が鳥肌と共鳴でもしそうなほど低い唸り声が遠くから──」

 「うわァァァァァァァ!!!!!!」

 咄嗟に力が入った。
 なんだ?今のは。

 「ッカハ!ゴホッ、ゴホッ!ゴホッ!」

 「まぁ初めてにしてはよくやった」

 「ゴホッゴホッ!ウウウッ」

 「そのタイミングは必ず来る。
 ⋯⋯今ではないようだ」

 「ハァ、ハァ⋯⋯タイミング?あの変なものが?」

 あれは間違いなく生命体のような。
 全身が怖くて震えたぞ?
 振動して、何回も吹っ飛びそうになるほど。

 「あぁ。
 俺も初めからできたわけじゃない。
 ある時から急に使えるようになったんだ。

 段階はある。
 後はそのまま、網の上に立っていて、下にはクジラよりもたちの悪いほどデカイ黒い影がお前を待っている光景が見える。

 常識外レベルのな。
 お前を喰いたくて仕方ないほど。

 俺はそれに耐えて降りることはしなかった。
 取引なのかもな。ナニカとの」


































 ──目の前に、暗闇だった視界に突如現れる自分の容量を遥かに超えた紅い眼光。

 警報灯のように二つ。

 常識外の化物。
 きっとそうだ。
 
 何かを言ってる気がする。
 でも聞こえない。

 俺はただ頷いている。

 恐怖、恐怖。
 理解できない。
 
 だが身体も、耳も、声も、何も操作できない。

 ただ沈んだ深海で身一つ浮かび、目の前の、自分の数百倍以上もあるであろう暗闇に光る紅い瞳。

 ソレが俺に笑いかけた気がした。

 "もう少しだよ、頑張って"。

 子供のような声で、そう笑って言われた気がして。









 「⋯⋯⋯⋯」

 あれ?天井?

 視線は左に映る。
 シルヴァ?拳に何か雷が。

 しかも、体中に何か変な円形のお守りみたいなのが付いている。

 しばらく見ていても、俺はシルヴァが動かないことに疑問を持った。

 「いや」
 
 言葉を発せられる。
 しかも、自分の額から滲み出ている汗の粒が見える。 

 それは感覚がおかしくなったかと思うほど。

 クスリをやった連中が見える景色⋯⋯にしては俺は冷静過ぎる。

 時が止まっているのか?いや。

 よく見ると、微かにヤツの手元は動いている。 
 俺が速くなった?

 咄嗟に浮かんだのは、奴の言葉だった。

 ーー俺の血をお前に分けた。
 セカイはお前の全てを2ランク?いや、3段階も上げてくれるだろう。

 しかし最初だけは全能感があるほど見せてくれるが、本来はスローの一歩手前⋯⋯スポーツ選手が感じるゾーンと呼ばれる物に近いくらいの効力しか発揮しない。

 だがそれも、人それぞれだ。
 使用者によって変わる。

 「にしては遅すぎるような気がするのだが」

 自分の今の状態は頭から落ちかけているところを狙われている場面そのもの。

 俺はぶっつけ本番──体を動かす。

 「っ!」

 動く。
 落ちそうになっている空中で身体を動かし、地面に着地しながら片足で地面を踏む。

 「⋯⋯っ!?」

 何だコレは。
 踏んだ地面に軽く力を込めたつもりだった。

 その時、地面は俺の足跡クッキリ⋯⋯ヒビが入った。

 怪力?そんなレベルではない。

 もはや人間ではない。

 だが。今はそんな事はいいのか。
 俺はここで、護衛としてこの男に勝たなければならない。
 
 ズドン、と。
 踏んだら瞬発力のような物が物凄い速さで動き、視界を渡る。

 そして詰めた奴に向かって構えた⋯⋯その時だった。
 
 『ねぇ!■■』

 「⋯⋯?」

 声が聞こえる。

 『なんだ?恭司』

 アイツのことか? 
 映像と声が俺の頭の中に入ってくる。

 なぜだ?今は戦っている最中なのに。
 縁側で二人が喋っている光景が浮かぶ。

 『この技って■■が作ったんでしょ!』

 『あぁ』

 『なんでこの世界まで来て教えてくれるの?
 僕だったら独り占めしたいって思っちゃう!』

 あのクソ野郎にもこんな可愛い時代があった⋯⋯いやいや!そんな場合じゃない。

 今は⋯⋯っ?
 自分の意志とは関係なく、恐らくやつの記憶は進む。

 『遊び⋯⋯かな?』

 『遊び?』

 『わかんね。
 まぁでも、ガキンチョ。
 お前を救う為に来たのかもしんねぇな。

 世の中力を持ってるだけじゃ意味ねぇんだよ』

 『なんで?』

 『わかる時がいつか来るさ。
 まぁでも、人間っつーのはよ?
 結局経験しないと何事も理解できないように出来てんだよな』

 『そーなの?』

 『まぁいいさ。
 恭司、お前は好きに生きろよ。
 この世界が終わる⋯⋯その日まで。

 だからお前に力をやったんだ。
 だが⋯⋯いくつか加えて教えといてやる』

 『ん?』

 『自然を大切にしろって覚えとけ』

 『自然?』

 『海とか、木とか、そういうの』

 『うん!でもなんで?』

 『ガキンチョに言ってもわからんかもしれんが、きっと追いつく話だが、自然はすべて記憶出来る』

 『⋯⋯記憶?』

 『あぁ。
 お水あるだろ?あれは人間の記憶、時代の記憶、全てを記憶している。

 人間が感知していないだけで。

 木もそうだ。
 全て記憶している。
 誰か科学者にでも言っとけ。

 自然は俺達に喋りかけてくれないから、誰もわからない。

 だが、いつの日か。
 時代が追いつく。

 そんで──』

 その時、俺の全身の感覚が思い出す。
 深海の、あの時の感覚を。

 縁側で喋っていたはずの男。
 所々靄がかかって見えないが、アイツと同じ、白髪。

 『誰かがこの記憶を覗いているかもしれない』

 ⋯⋯っ。この男は何者だ?

 『覗いてる?どういうこと?■■』

 『水は血も含んでる。
 俺の技は暗号だ。俺の技が使えるということは、この記憶も何かを通じてみているかもしれない。

 だからお前にわざわざ技術を教えるのも、いつかガキンチョが伝えたい誰かの為にもなる』

 『えー!そうなの!』

 なんだ?あの男。
 
 『見ているか?未来の継承者』

 『■■!じゃあその技見せてー!』

 『⋯⋯あぁ』

 笑ってあの男は、確かに俺を見て喋っていた。

 なんだ?なんなんだ?コレは。



 「Now──っ!?Whats!!!?」

 突然ぶつ切りに映像が止まる。
 
 少し速くなった?
 でも、映像はまた始まる。

 場面が切り替わって、ざーっとノイズの音が所々聞こえてこちらの意思では止まらない。
 
 『■■!この技ってなんで強いの?』

 『色々あるが、かつて神を俺が倒したときに使ったからだ』

 『神ぃ!?すごい!すごいよ!』

 『あぁ。神なんていいもんじゃねぇ。
 アイツらはクソだ。

 つっても、まだガキンチョじゃわかんねぇか』

 『うん!』

 『ふっ、仕方ねぇ。
 ガキンチョに分かるように言えば、俺は神は嫌いだ』

 映像は止まる。

 全力で拳を握る。
 俺は、吠えながら──アイツに教わった技を構える。
 
 「ハ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」

 『祈るのが嫌いだ。
 神に祈る?あんな奴らに?ってな』

 「ハ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッッ!!」

 『でも、祈りを唯一しろというのであれば、恭司』

 『なーに?』

 『この技は、お前が認めた奴に伝えろ。
 これは、誰もが使っていい技じゃねぇ』

 『そーなの!?』

 『あぁ。この技は、攻撃するためではなくて──守る為に強くあろうとする者の味方だ。

 だから、お前がいつか伝えろ』


 なんだ?言葉が浮かんでくる。

 ■■■■■■■■■──■■

 『どんなにお前が傲慢になっても、この技は正統な人間に伝えてくれ。

 それ以外は何でもいい。
 藻掻いて。
 何かを守りたくて。
 どうしようもない無力感に襲われてる奴にな。

 いつか見ているかもしれない未来の奴。
 俺は、そう願ってるさ』

 ■■■■■術■■■──■撃

 白髪の男は、振り向いて俺の方を見た気がした。

 靄が掛かっていたが、瞳が映った。
 俺を見た瞬間、火花が散る黄金の瞳。

 そうして青年はアイツに一つずつ技を教えている。

 この技、以前習った。アイツに。

 ⋯⋯ありがとう。
 合点がいったよ。
 お前はお前なりに認めてくれていたのか。

 意識が混濁しているが、ハッキリもしている。

 こんなこと今までなかった。

 ■門■■■術■一式──■撃
 
 「○uck!!!」

 ■門式格■術■一式──■■

























 "かつて拳で神を倒した男の十連撃、その一撃目"

 ーー真壁銀譲、お前がそれを使えば、一撃だけでも間違いなく倒せるだろう。

 ーーだが、血を分けたとしても、常人であれば体が持たない。

 ーーまぁ、俺が認めた男だ。きっと大丈夫だろう。


 『あの技は、俺が護りたいと思った時に作った技。

 頼んだぞ、未来の誰か』


 微笑む青年の姿。
 ⋯⋯そしてその黄金の瞳は、紅く変色した。

 この感覚、あの深海であったあの──。

 力が湧いてくる。
 体が燃えている気がする。

 まるで神にでもなったかのようだ。

 今ではシルヴァが強く見えない。
 懐に潜り込み。


 "神門式格闘術第一式──衝撃"──。


 やつの腹に打ち込む。




 「⋯⋯⋯⋯ハァ、ハァハァ、ハァ」

 耳に聞こえてくるのは、ゴォォォという音と、パラパラ崩れる壁の音。

 あと⋯⋯なんだったか?
 そうだ。

 腹に到達する前、あのお守りがパリンと割れた。

 なんだったんだ?アレは。

 「⋯⋯ッ!!!!」

 頭痛が、くっ⋯⋯!
 気持ち悪い。それに。

 右手を見ると、血だらけで、上下に右半身が震えて麻痺している。

 立ってるので精一杯だ。

 「キンキン耳鳴りがする。
 っハァ、ハァ⋯⋯」

 シルヴァは?どこにい⋯⋯

 奴は、俺よりも酷い状態であったが、何か言いながら立ち上がっている。

 間が悪い。
 グニャグニャ視界がぐちゃぐちゃだ。

 耳鳴りで聞こえない。
 だが、小鹿みたいに立ち上がり、何かを言いながら飲んでいる。

 クソッ、右半身が動かない。
 視界も悪い。耳も聞こえない。

 まだ駄目なのか。

 その時、意識が飛びそうになるのを堪える。

 「ッ⋯⋯!!」

 こめかみに力を注ぐ。

 しっかりしろ!
 後悔は死んでからすればいい。

 まだ、奴は戦闘不能ではない。
 戦え。

 闘え!!!
 
 「ッ!」

 おそらく限界を大きく超えたせいだ。
 バランスを崩し、後ろによろめく。

 くっ!駄目か。
 まだ、まだ⋯⋯

 駄目なのか。
 これでも。

 あの青年に謝らないといけない。
 すまない。

 そのまま地面に向かって倒れかけたはず。

 ──しかし。
 何かによってそれは途中で止まる。

 「⋯⋯?」

 「真壁銀譲──」

 この、声は?

 震えながら目線を上げる。
 朧な視界には、見覚えがあって、聞き慣れた──

 「総合─────"一位"」

 「す、すま、ない」

 大将が危ない。
 誰か、頼む。

 「真壁銀譲。
 この人生、俺が見てきた中で、最も格好良かったぞ」

 最も憎たらしい声。
 だが、俺はその声を聞いた瞬間──どこか安堵して、意識を預けた。
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