自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

文字の大きさ
151 / 247
世界征服編

祈り

しおりを挟む
 アニキ⋯⋯頼む!

 「真壁の兄貴⋯⋯!」

 武部が負傷者を治している中、俺と数人の軽傷者たちはアニキの戦いを最後まで見ていた。

 最初は武器持ち相手に善戦していたが、やはり相手はプロそのもの。

 あのアニキが防戦一方。

 「くっ、真壁の兄貴⋯⋯俺達がもっと万全だったら!」
 「言うなよ太史。兄貴は漢だ。
 もしもの話をするな」

 隣で言い合ってる舎弟たちの言うとおりだ。
 俺達の掟はサシであれば邪魔をしない。

 ──漢と漢の戦いだから。

 だが、これでは。

 ヤツの動きは間違いない。
 身のこなし、戦いの筋力のようなものが今までの相手とは段違いだ。

 こうすればいいという決定的な答えを持ち合わせていない。

 イタチごっこだ。
 アニキに持っているものは相手も持っていて、逆にアニキにない物を相手は持っている。

 「駄目だ⋯⋯」

 数人の連中が弱音をボソッと吐いているのを聞いた俺は、無意識に俯いてる髪を掴んで上げさせる。

 「例え負けても、文句を言うな。
 俺達のアニキだ──黙って最後まで見届けるのも俺達の仕事であり、責務だ」

 「⋯⋯責務ってなんすか、石田の兄貴」

 それは調べろよ馬鹿が。
 
 「黙れ、馬鹿太史」

 いや俺も人の事は言えないか。
 小卒だし。

 「hehe!!!」

 バチィッ、と突然シルヴァの動きが変わる。
 伊崎さんと戦った時のアイツみたいだ。

 薄々気付いていたが、伊崎さんも⋯⋯多分普通ではないんだろうな。

 だからさ、エロガキ伊崎さん──頼むよ。
 アニキがボコボコだ。

 俺達の頭がピンチなんだよ。

 ほら、見てくれよ。
 俺も太ももが貫通して動かないんだよ。

 頼むよ。伊崎さん。

 アンタなら何とかしてくれるだろう?
 俺を助けてくれたあの時みたいに。

 「EASY!!!!!!」

 見てくれよ。伊崎さん。
 アニキを殴って嬉しそうに笑ってるんだよ。

 アンタ。
 なんだかんだ⋯⋯俺達を好いてくれてたろ?

 なんでもするよ。
 
 「ぐっ!!」

 頼むよ。

 「ぃッッ⋯⋯ぅァァァ!!」

 来てくれ。頼むよ。

 祈るからさ。
 神でも、悪魔でも良い。

 契約でも何でもするよ。

 「石田先輩!?駄目です!!」

 動けよ、俺の身体。
 太ももが痙攣してる。

 知らねぇよ。動けって!!

 「ヴヴッ⋯⋯⋯⋯なんだ」

 「え?」

 ここで貧血かよ。
 視界がぐらつく。

 「真壁⋯⋯ッ銀譲⋯⋯はっ⋯⋯ハァ、ハァ」

 脳裏によぎったのは、初めて会ったあの日。


 "ぐわっ!"

 ーーガキが、こんなことしてどうしたんだ

 "うるさい!
 俺達はこうでもしないと生きていけないんだ!"

 ーーはぁ。お前、名前は?

 "え?い、石田!"

 ーー名前は

 "龍司!!石田龍司!!
 これから誰よりも強くなる男だ!"

 ーー⋯⋯フッ、まだ小学生だろう?
 とりあえずそこでパスタでも食え

 
 「俺⋯⋯達の⋯⋯救世主で⋯⋯王⋯⋯なんだよっ⋯⋯」

 「石田の兄貴!
 やめてください!本当に死にますよ!」

 ポタポタ血が垂れているのは知ってる。
 だが──

 
 ーー石田。
 俺はな、お前らとこうする為に強く生まれてきたのかもしれない

 
 「ッグッ⋯⋯ァ、うるせぇ。
 俺達は最強なんだよ。

 無敗の夜叉なんだよ⋯⋯アニキが勝つに決まってんだよ」

 その時、目の前のアニキから⋯⋯白い炎が湧いているように見えた。

 全員がその光景に唖然とした。

 「な、なんだよ⋯⋯アレ」
 「兄貴が⋯⋯突然強くなったぞー!!」

 アニキ⋯⋯。

 「アニキィィィ!!!!」

 直後──目の前が煙が上がって見えなくなった。

 なんだ?何があったんだ!?

 「お前ら!立ち上がれ!アニキを⋯⋯」

 あぁっ、まずい。足がビクともしない。

 「先輩!何してんすか!」

 「うるせぇ」

 無理やり肩を組まされ、預ける他ない。

 「あなたにとって大事なのはわかります。
 しかし生きてこそですよ」

 「⋯⋯アニキが、どうなった?」

 「見えません。
 でも、生きてたとしても⋯⋯重傷です。
 元に戻る事は──石田先輩?」

 音が聞こえる。

 コツ、コツ、コツ。

 硬い音。
 こんな戦場みたいな場所に向かって、誰かが歩いてきている。

 「おい、軽傷者!外から誰かがくる!
 構えろ!」

 「え!?誰もいないっすよ!」

 「いいから見ろ!」

 「⋯⋯兄貴が!」

 っ、舎弟の言葉が聞こえ、すぐさま向くと。

 「アニキ!!!」

 腕重心で立ってるのが精一杯のアニキ。
 良かった。

 「⋯⋯勝った」

 シルヴァめ。
 うつ伏せで倒れてやがる。

 アニキもボロボロだが、アイツは倒れてる。
 だが。

 「やっぱりアニキも普通じゃなかったのか」

 一面あった壁が、人間の力を超えた威力でこじ開けた穴が幾つもある。

 これをただの怪力というのは無理がある。
 だが関係ない。

 「俺達は、まだまだ轟く⋯⋯っ!?」

 た、立ち上がろうと?
 しかも、何か言いながら、飲み干してる。

 「MAKABE、○uck」

 くそっ。動け。

 「お前ら早くアニキの所へ!!」

 まずい。
 あの様子⋯⋯突然回復したような挙動を見せてる。

 あれじゃ⋯⋯。

 突然硬い足音が近くに現れ。

 ──ガチャリ。
 近くの扉が音を立てる。

 「う、うわぁ!!」

 「っ?」

 全員の視線が集まる。
 そこには腰が抜けて声を上げるしかなかった舎弟と。

 「っ、あ」

 俺は絶句した。
 人生で初めて。

 「ねぇ胸ばっかり触ってちゃいやー」

 「あァ? 女はここが魅力的なんだろ?
 良い男の隣には、美人のお前みたいな女がいねぇと。

 こうやって触れるから魅力が上がるんだろう?」

 ⋯⋯は?
 な、なんで。

 「おぉ」

 口を尖らせ、俺を凝視しながら笑い現れたのは──草薙。

 「な、何よここ!」

 「ん?んだよ⋯⋯イベントだよイベント」

 「こ、こんな危ない所に連れてこないでよ!」

 スタスタ女の方は走り去っていき、悲しそうに揉んだ感触を確かめるようにグーパーしている。

 「⋯⋯お。
 タイミングは良かったみたいだな」

 最悪だ。
 なんでこのタイミングで⋯⋯コイツが!

 「おい草薙!今は⋯⋯」

 くっ!無視して俺達の横を。
 今にも倒れそうなアニキの方へと優雅に向かいやがった!

 「⋯⋯お前ら!!」

 「無理っす!
 俺達じゃアレを止めれないっす!!」

 ちくしょう⋯⋯!!
 舌を噛みきって死にたい!

 だが、次の瞬間──俺の予想した最悪のシナリオとは打って変わった。

 「え」

 奴は倒れかけのアニキを手で抱き、受け止めた。

 「真壁銀譲⋯⋯総合、一位」

 な、なんの事だ?

 「おい、そこのイケ好かねぇイケメン君」

 「⋯⋯なんだよ、草薙」

 「ふっ、取って食ったりしねぇよ。
 ほら、お前らのリーダーだ。
 頭を大切にしろよー?」

 「アニキ⋯⋯!」

 拳を握り締める。
 皮膚が爛れ、骨が見えてる。

 全身傷だらけで、生きているのが不思議なくらいだ。

 「お疲れ様でした。アニキ」

 前が見えない。
 伊崎さん、助けてくれ。

 泣いてる場合じゃないのに。

 「くっ⋯⋯うぅっ!!」

 「そうそう」

 「なんだ」

 何を要求されるわかったものではない。
 渋々殺意を込めながら、上を見上げる。

 「石田、そうだ。
 お前の名前は石田だったな?」

 「だからなんだ」

 「なんだよそんな面しやがってー。
 お前んとこのリーダーが大金はたいて俺をここまで呼んだんだぜ?

 ⋯⋯感謝しろよな」

 てことは、伊崎さんが?
 コイツを呼んだのか?

 「本当か?」

 「ん?あぁ。それは間違いない。
 俺の役職を賭けてもいい。

 まぁ。
 女と三回戦もしてたから身体が疲れてるがなー。

 いやぁまじで海外女は最高だったわ。
 積極的で、金さえ払えばサービス良くってさぁ?」
 
 クソッ。よりにもよって。

 「とりあえず、アイツだろ?」

 親指で背後で震えながらも動こうとするシルヴァを指す草薙。

 「ああ。なら働いてくれ」

 死んでも構わん。
 アニキが生きてるから。

 「ふんっ、舐めやがってクソガキが」

 嗤われ、そうして黒スーツに身を包み、草薙は両手をポケットに突っ込んだまま、背を向けてシルヴァに向かって歩いていく。

 「ッたく、楽して大金稼げると思ったのによー」

 クソッ。
 正直、アイツが味方だとこんなに頼もしいなんて思うことが、どれほど屈辱か。

 「⋯⋯くそっ!!!」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...