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国内無双編
なんかどうやら今年ヤバイらしい
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作者です。
こんにちこんばんは。
国の名前などが出てきますが、フィクションなので察してもらえると助かります。
今回の話はかなり情報量が多いです。
飛ばしてもらっても大丈夫です!
ただ、物語の核が結構散らばっていますので、気になる方は!
それではっ!とうっ!(彼方へ消える)
ーーーーー
「伊崎さん、どうぞ」
銀が終わり、石田もどうやら終わったようだ。
「ま、感想は後か」
「ですね」
捨て台詞を吐いて、階段を降りていく。
「後はまだ若い子だねぇ」
俺が入るとすぐ、そんな言葉を発した。
「どうも、占いのオバサン」
「お姉様とお呼び。女はまだまだ若く見られたいものだよ」
いや、十分オバサン──
「余計な事はいいの!」
ん?今俺発してないぞ?
「その顔を見れば何を考えているなんて誰でも分かるわ!」
⋯⋯素直にごめんなさい。
「それで? どんなことを占いたいんだい?」
一呼吸すると、オバサンはさっきとは別人のような空気で尋ねてくる。
「とりあえず⋯⋯色々?」
「総合的にやりたいって事でいいかい?」
「そうですね」
「じゃあ⋯⋯とりあえず生年月日。あとは産まれ時間と名前が知りたいねぇ」
こんな事もあろうかと、一応調べてきたんだよね。
「はい」
渡すとオバサンは凄い勢いでスラスラ何かを書き出していく。
全然なんて書いてあるかは分からないんだけども。
「ちなみに聞いてもいい?」
「どうしたんだい?」
「いや、よく当たるって言うからさ。色々やってる占い師さんなんでしょ?お姉さんは」
「あぁ。半分冗談で、半分本当だね」
「へぇ。ちなみに何やってるの?」
「一通りはやってるさね。中国に行ったり韓国に行って修行もしてるから、四柱推命、韓国式のサジュ。細かく言うなら紫微斗数っていうのとかを始めとした細かいのも修行したさ」
「えー、じゃあ東洋の占いは全制覇?」
「恐らくはね」
そう言うと、今度はカードを出して混ぜだしている。
「これは?」
「タロットさね。知らんのか?」
「ぜーんぜん」
「タロット、ホロスコープ。まぁ面倒くさい。
括ればほとんど全部の占いと呼ばれる類には触っているし学んでいるよ。正確に言えばね」
「じゃあ半分っていうのは?」
テーブルの上に出し切ったオバサン。
すると笑って、こう言った。
「アンタと"同じ"だよ」
「⋯⋯ほう?」
同じとな。
「おや? 驚かないのかい?他の皆は結構驚いて腰抜かしてたけどね」
ギャハハと豪快に笑っては、チリンと何かを鳴らし、お香みたいなのを焚き出す。
「では聞きたい。同じというのは?」
少し興味が出たので足を組む。
挑発混じりに机に肩肘をついて。
「おぉ。本物って事さね」
「本物?何が?」
オバサンとみつ合う。数秒。
張り詰めた空気が面白い。
まさかこんなところで緊張感があるとは。
「正確には何がとまで分からないね。
ただ出てるのは、言えばわかると言ったところか」
「つまり──同じというのはそっちも占いが本物すぎたって事か?」
そう言うと無言で頷く。
「なるほど。どうりでこんな場所でやってる訳だ」
「金なんぞ死ぬほどもろたわな。だけど、いかん。
あっちの奴らは我儘な連中さ⋯⋯ケッ!」
「そらそうだろう?本物なんだから。意地でも手にしたいだろう」
「それで。こんな会話してていいのかい?
時間は進んでいるよ」
「そんなのは良い。金ならある」
「ギャッハハハハ!さすが本物さね!
今日は金運がいっちばん良い日だって出てたんだよ」
嬉しそうに言うオバサンに思わずこっちも頬が緩む。
「そりゃ良かった」
「と言ったって、何が知りたい?総合的にと言ったところで、何から話して言いわからん」
「手相とかは良いのか?」
「ほら、見せてみ」
スッと両手を出す。
「おぉ! なんじゃこの手相はぁ!」
眼球飛び出すんじゃないかというくらい見開き、俺の手相をまじまじと見つめる。
「写真撮っていいかい?オマケするよ」
「そんなにか?なら、良いよ。撮りな」
謎の撮影タイムが終わると、オバサンは真面目に喋りだす。
「本当に面白いが、とりあえず基本からさね。
まず、伊崎湊翔という人間は、少々おかしな事になっとる」
「おかしなこと?」
「手相で見れる事を簡潔に話すと、基本手相は左が本来持っている資質を表してる。右にあるのが現在を表しているのが手相だ」
「ほうほう」
「細かいのは置いておくけど、左から見て取れるに安定、真面目、大樹のような大きな基盤が出ている。あと珍しい線がちょくちょくあるな。
加えて両手含め線がありすぎる。
これだけ若いのに両手にある線が多い・太いというのは、まず見かけによらず繊細だ」
「へぇ、そうなんだ」
「こんな老人みたいに大成してるような太い線は見たことないねぇ。資産家にはちょくちょくいるけどねぇ」
珍しいんだ。
「左は本来のチカラを。ここに出てるのは頭脳線、ほう?二重じゃないか。
感情線、運命線が全て適度に長くて綺麗。
この線を見るに、天才、狂人のどちらか。
常人よりも思考が深い。体力も数倍以上あるさね。おそらく体調悪くなったなんてないはず。
感情は豊かだけど、しっかり思いやりがある。太陽線もこれだけ細かくあって濃いから、若くしてカリスマ的存在になりやすく、人気者だね。
ただ、危険視される恐れもある。
私と同じだね。
運命線は独立、自力で切り拓く。
血縁を超えた因縁。
ふぅ、金運はそうだね⋯⋯ハッキリ出てるのは"絶対に困らない"
あとは1本神秘十字が強く出ていて、近くにも同様なのがいくつも散らばっているから、生まれついてのヒーラー。
珍しい線で言えば、有名な所を押し込んだみたいな手相をしてるよ。
さっき言った神秘十字を含めて、ソロモン、覇王線、慈悲線、おー、ヒーラーの線が多いねぇ」
⋯⋯俺そんな凄かったの?
ある意味別の動揺が凄まじいのだが。
「ただ──」
オバサンが少し首を傾げる。
「何か悪いことでもしたのかい?」
「いいや?」
「いやねぇ。障害線っていうのがあるんだけどねぇ?
これでもかって言うほどあるのさ」
「うん」
「手相でもあまり良くない線もチラホラ乗ってて判断に困るレベルだ。それに島という線もある。
これは表に出ないトラウマ、癒えない心の傷、幼少期から青年期で深い痛みを負う。
──ある意味呪われてるね。こりゃ笑いものだ」
呪われてる。
まぁ、言われて見れば思い当たるのしかねぇよ。
「あーやっぱりかい」
「ん?」
「生命線とか色々読み取ると、端的に言えば両親の縁が良くないねぇ。
宿命かねぇ?血縁を離れる宿命、縁が切れる。
それに家庭内の葛藤、秘密、確執。
先祖とか家系の縁が物凄く複雑さね。
感情線も基本的には良いけど、読み取り方を変えれば切れ目が多い。これが意味しているのは環境の不安定さ、"愛情不足"」
⋯⋯愛情不足?どういう事だ?
「ほー」
「右は左より色濃く出ているけど、褒めることしかないさね。ただ、多分色々なことを加味して言うけどね、多分女関係は酷くなるね。
さっきの若い女の子達もそうだけど、恐らくもっと酷い事になるよ。
感情線の途切れや枝分かれ、このソロモン近くにも丸いのがあるだろう?ここにも島の線がある。
これは不倫、三角関係、執着される、別れがこじれるなんて意味がある。
女の因縁を大量に抱える相をしてる。
ちなみに命式でも女難は私が見てきた中でも最も最悪だね。
10人20人なんかじゃ済まない。
あんたどんだけ女好きなのよ、尊敬するさ。
カッ!私が若いときに合わなくて正解だね!」
「そんなイジメないでよお姉さん」
まぉ嬉しい事この上ないんだけど。
「女難の相が右手に出ているということは、あの連れてる二人⋯⋯気を付けな」
「あの二人?問題ないよ、性格の良い子達だから」
そう言うと盛大に溜息をつかれた。
なんか変なこと言った?俺変人みてぇじゃん。
「まぁいいさ。一先ず手相で総合的に見れるのはこれだけ。
あとはさっき準備した本格的なやつをやるさね」
と、オバサンの手はノートとカードに向く。
「アンタの占いをするのは面倒だねぇー。
言わなくちゃいけない事が多いさね」
「そんなに?」
「当たり前さね。本物なんだから」
そんな言われると照れるなぁ。
「一先ず、今までやってきた物すべてをまとめて簡潔に言う。
分かりやすい単語にしてるから、初でも問題ないよ。
まず、生まれついての資質は、ほとんどが王者の星が多い。
つまり、生まれながらに人の上に立つということが必要とされている星や宮が言ってる。
人の言う事を聞くなんてできない。
自分でやらないと気が済まない。
借りを作るのを嫌悪する。
独学を好む。
あとカリスマや人を惹きつけると言った類だね。
性格は穏やかで並外れた思考力と感覚。
破壊と再生。光と闇。
こんな事を言ってる。
面白いねぇ。
穏やかなのに過激な手段をとって破壊して、新しいルール作り出す。または破壊してそこから這い上がるっていうことだ」
「王者ね」
「そう。あとは忍耐や修羅場が多い。
孤独な時間も多い。
忍耐力が並外れているのは明確にやる事があるからって出てるね。
そして運命だけど、これも明確に選ばれし者って強く出てる。
手相にもあったけど、沢山の霊や運に恵まれている。
絶対に普通の人生を歩めないと断言出来る。
備わってる才能や特別な所にそう出てる。
まとめると、頭は冷たいけど魂は熱い。
何かを壊して救う。
孤独を抱えて不器用。
ここは色々言いたい所があるけど、家族の縁が薄いから、誰よりも本当は他人と繋がろうとしてる。
好きになると深いし、独占欲もある。
だけど自己犠牲もある。
──つまり誰よりも人間臭い。
どうやっても普通の人生にはならない。
あとはオマケ程度の生まれ付き天才肌。こんなところかね」
⋯⋯なるほど、人気な訳だ。
「総合的にだもんねぇ。これでもかなり端的に言ったつもりだ。他にも特別な才能や細かいところまで言えるけど、とりあえず前世や過去世に移る。
ここで見える限り、引き継いでいるのは今世でやるべき事が多い。
とりあえず今世のテーマは、手相もあったけど"救済"。
今世は人を救うという事に全てを捧げていると言ってもいいくらいはっきり出てる。
きっと過去世にどうしようもなく嘆いていると言った事が出てるし⋯⋯おぉ、ここでも出ている。
呪い、試練、障害、多分解釈的には女難に近いね。
前世では恐らく、何も救えず何も出来ずに生涯を終えた人間って感じの言葉が出てきてる。
今回はその恵まれた力で、無意識に沢山の人々を救済して、引き連れる。
ただ、ここでハッキリ出てるのは、王者の星が多いって言ったのを覚えとるか?」
「ああ、言ってたね」
「そう。王様っていうのは、こっちの解釈で言うと民を導く存在。
我儘に民を支配するのは王様ではなく独裁者になる。
あまりこういう事は言いたくはないけど、アンタの命式を見ると、独裁者でも上手くいくみたいな摩訶不思議なモノが出てるけど、基本的に独裁者の最期は⋯⋯分かるね?」
なるほど。言いたいことは分かった。
「つまり、碌な最後にはならんって事だね」
「それをも覆す力がある事を示しているのがアンタの命式と波動、手相から見える事だ。
とんでもないよ。これは。
写真撮って正解だね」
またもギャッハハと笑うオバサン。
「と、後は今後10年と細かく数年を見る事ができたり、特別な才能や異能に近い物があるか見れる。
あとは霊能力者でもあるから、霊とか守護しているのはどんなのかとかも見れる」
「⋯⋯それでこんな値段でやってるのは反則じゃない?」
「ギャッハハハハ! だからさね!」
俺ならこんな風にやれねぇわ。
「とりあえずじゃあ全部頼むわ」
「もう結果はさっき書いたから⋯⋯照らし合わせてだね」
何やら見続けて2分。
「うん。とりあえず10年だね。
10年で大きく見た全体のテーマ。
とそれがここでも出てるんだけど、救済と管理。
人を救い、それを管理する。
金運はこれ以上ないくらい絶好調。
病とかもなんにもないだろうね。
ただ──管理、ここが肝だ」
「ほぉ」
「これは女難にも、人間関係にも通ずるけど、10年でも短く今年や来年という短いスパンで見たとしても、特に女だね。
物凄い勢いで増える。
この上なく。
さっきの二人だけなんかじゃ到底ない。
短く見た今年と来年のテーマや見えるものとしては、太陽、スター、煌めき、大いなる光、焦がす、これが出てる。
改めて見ても凄いねぇ。
まぁつまりだ、今年は絶対に何をしても人前に出る事になるし、沢山の人間がアンタと関わろうとしてくるはずだ」
おぉ、おぉ。
「え?俺に新たなおなごが!?」
佐藤さんと理沙ちゃん、この二人はオキニだからあれだとしても、控えというか、華やかさの為にいっぱいいるんだよ?
飯食わせてもらったり、飲み物くれたり、お風呂一緒に入ったり、寝たりするのはこの二人だけど、例えば寝るときなんかは近くにみんな寝てるから、もう既に側室までいーっぱいいるのにねぇ。
「そんな前のめりになりおって!
この女の敵めっ!南無三⋯⋯⋯⋯」
「ちょちょ!変な詠唱しないで!」
胸の前で指上げたらなんか体がゾクッとしたんだけど。
⋯⋯マジで焦ったわ。
「ふんっ!」
「おなごが増えるなんて⋯⋯幸せやぁ」
「と言っても」
一気に空気が張り詰める。
「良い事ばかりではない。管理と言ったよ?」
「管理?」
「そう。管理出来なければ、この先最悪さね」
「管理ねぇ」
「⋯⋯だからその、しっかり女一人一人を見てあげるってことさ!!」
「あぁあぁ、そういう事」
それならもうやってる気が⋯⋯。
「あとは他のキーワードは、華国、水、外国、女⋯⋯また女かい!
んー秘密、世界、宗教、褐色、注意、なんだこれは?全部何を指してるのか検討もつかないねぇ」
「華国? なんで?」
「ちょっと深ぼるかねぇ」
シャッシャやって手際よくカードを出し、別のやつでもスラスラ書き進める。
「おぉ」
「何?何その顔」
なんだか険しいぞ?
「本当──この女ったらしが!!!」
勢いよく立ち上がったと思ったら、突然キレだす。
「なんだよ! 俺まだ何もしてないって!」
「華国について深ぼった。
出てきた言葉は、最も深い縁、霊性、異能、女難!!!それから富、救世主、危険、根源」
華国に?俺が?
俺日本人だぞ?
「俺外国に行ったことなんてないよ?お姉さん」
「んー⋯⋯これは予想なんだけどねぇ⋯⋯」
「なに?何があるの?」
「最近華国のスパイが日本に出入りしているなんて言われてるだろ?」
あーはいはい。将来親華みたいになるやつね。
「うん」
「あんた、ハニトラに引っかかりそうだね。
可能性としては、あとは親が華国とかかねぇ」
「いいや? 二人とも日本人だよ」
「そうなのかい?んー⋯⋯」
「何をそんなに真剣に悩んでるの?」
「やっぱり止めとこうか。可能性が低い話をしても仕方ないね」
なんか気になるなぁ。
あの二人が華国出身?
「とりあえず、今年は隠れられないってことさね。
あとはこの感じ──モテる」
「なにぃ!?モテるだって!」
ひゃっほーい!
「はぁー。だから言いたくなかったんだよこの女ったらし!」
「はいはい怒らない怒らないっ」
満面の笑みで宥める。
「けっ!あとは⋯⋯って、もう結構経ってるねぇ」
「おー、本当だ」
「そしたらあとは霊だけ見て終わろうかね」
と、なんか目を瞑って何か唱えている。
降霊術か何かか?
向こうには死霊術とかそういう類のはあったが、禁忌とされている。
まぁ俺は平気で使うけどね。
「あら、なんだい、面白いのが憑いているね」
「まず憑いてるんだ」
「なーに。当たり前さね。アンタには数え切れない程の霊が憑いてる」
「そんなにか?」
「そんなに」
まぁ、色々あったしなぁ。
1000年。
「特に強いのが、100人」
「あ、桁が違った」
「だから面白いのが憑いてるって言ったんだ」
「なんて言ってるの?」
「流石に特定は難しい。ただ、一人は強くこう言ってる───」
"そーくん、ごめんね"
「⋯⋯っ」
浮かぶ言葉に⋯⋯少しずつ目が無意識に開いた。
俺は、何も言えなかった。
「ほっ、アンタがそんな顔をする人間とはねぇ。
こんな変わった男を好きになるなんて面白い女だねぇ」
ヤバい。口が上手く動かん。
そうしてしばらく声を出せないでいると。
「でもなんかねぇ。アンタがモテる理由が分かった気がするよ」
両肘テーブルの上に乗せて、ここぞとばかりに言ってくる。
⋯⋯うるせぇよオバサン。
「良くも悪くも純粋。不器用だけど思いやりがあって、女が好きだとは言っても愛情は注いでくれる。
なるほどねぇ。裏表があまりない男はモテるからねぇ」
「⋯⋯はっ、俺はクズだからな」
「そんな女が抱いていた感情は、謝罪と感謝」
「⋯⋯⋯⋯」
謝るな。俺が悪いんだから。
頼む。俺を責めてくれ。
「この娘、明らかに大人だね。
アンタに最後まで謝ってる」
「──そう」
「あとは、"ちゃんと聞いてたよ"」
あー。
ちゃんと⋯⋯届いていたのか。
「⋯⋯ふぅ。そっか」
少し上を見ながらぼうっとする俺に、嬉しそうに喋るオバサン。
「いいねぇ。アンタみたいなのがそんな顔で固まっとるのを見ると、余程だよ」
「はぁ。うっせぇ」
「また強がる。不器用は恋愛の天敵だよ。
あと、色々な魂があるが、強いのは恋愛、愛情、尊敬、感謝、喜び、はぇー凄いねぇ。
アンタには数え切れない程の感謝と憎悪が同じくらい宿ってるね」
そうして俺は立ち上がる。
「もういいのかい?」
これ以上聞いてたら──しんみりしちまう。
「いつか」
「ん?」
「いや。まぁ、居場所と金に困ったら──ここに連絡しろよ、ばあさん」
「アンタねぇ! お姉さんとお呼び!!」
何か後ろで言っていたが、俺はそのまま何とも言えない顔をして、外に出た。
こんにちこんばんは。
国の名前などが出てきますが、フィクションなので察してもらえると助かります。
今回の話はかなり情報量が多いです。
飛ばしてもらっても大丈夫です!
ただ、物語の核が結構散らばっていますので、気になる方は!
それではっ!とうっ!(彼方へ消える)
ーーーーー
「伊崎さん、どうぞ」
銀が終わり、石田もどうやら終わったようだ。
「ま、感想は後か」
「ですね」
捨て台詞を吐いて、階段を降りていく。
「後はまだ若い子だねぇ」
俺が入るとすぐ、そんな言葉を発した。
「どうも、占いのオバサン」
「お姉様とお呼び。女はまだまだ若く見られたいものだよ」
いや、十分オバサン──
「余計な事はいいの!」
ん?今俺発してないぞ?
「その顔を見れば何を考えているなんて誰でも分かるわ!」
⋯⋯素直にごめんなさい。
「それで? どんなことを占いたいんだい?」
一呼吸すると、オバサンはさっきとは別人のような空気で尋ねてくる。
「とりあえず⋯⋯色々?」
「総合的にやりたいって事でいいかい?」
「そうですね」
「じゃあ⋯⋯とりあえず生年月日。あとは産まれ時間と名前が知りたいねぇ」
こんな事もあろうかと、一応調べてきたんだよね。
「はい」
渡すとオバサンは凄い勢いでスラスラ何かを書き出していく。
全然なんて書いてあるかは分からないんだけども。
「ちなみに聞いてもいい?」
「どうしたんだい?」
「いや、よく当たるって言うからさ。色々やってる占い師さんなんでしょ?お姉さんは」
「あぁ。半分冗談で、半分本当だね」
「へぇ。ちなみに何やってるの?」
「一通りはやってるさね。中国に行ったり韓国に行って修行もしてるから、四柱推命、韓国式のサジュ。細かく言うなら紫微斗数っていうのとかを始めとした細かいのも修行したさ」
「えー、じゃあ東洋の占いは全制覇?」
「恐らくはね」
そう言うと、今度はカードを出して混ぜだしている。
「これは?」
「タロットさね。知らんのか?」
「ぜーんぜん」
「タロット、ホロスコープ。まぁ面倒くさい。
括ればほとんど全部の占いと呼ばれる類には触っているし学んでいるよ。正確に言えばね」
「じゃあ半分っていうのは?」
テーブルの上に出し切ったオバサン。
すると笑って、こう言った。
「アンタと"同じ"だよ」
「⋯⋯ほう?」
同じとな。
「おや? 驚かないのかい?他の皆は結構驚いて腰抜かしてたけどね」
ギャハハと豪快に笑っては、チリンと何かを鳴らし、お香みたいなのを焚き出す。
「では聞きたい。同じというのは?」
少し興味が出たので足を組む。
挑発混じりに机に肩肘をついて。
「おぉ。本物って事さね」
「本物?何が?」
オバサンとみつ合う。数秒。
張り詰めた空気が面白い。
まさかこんなところで緊張感があるとは。
「正確には何がとまで分からないね。
ただ出てるのは、言えばわかると言ったところか」
「つまり──同じというのはそっちも占いが本物すぎたって事か?」
そう言うと無言で頷く。
「なるほど。どうりでこんな場所でやってる訳だ」
「金なんぞ死ぬほどもろたわな。だけど、いかん。
あっちの奴らは我儘な連中さ⋯⋯ケッ!」
「そらそうだろう?本物なんだから。意地でも手にしたいだろう」
「それで。こんな会話してていいのかい?
時間は進んでいるよ」
「そんなのは良い。金ならある」
「ギャッハハハハ!さすが本物さね!
今日は金運がいっちばん良い日だって出てたんだよ」
嬉しそうに言うオバサンに思わずこっちも頬が緩む。
「そりゃ良かった」
「と言ったって、何が知りたい?総合的にと言ったところで、何から話して言いわからん」
「手相とかは良いのか?」
「ほら、見せてみ」
スッと両手を出す。
「おぉ! なんじゃこの手相はぁ!」
眼球飛び出すんじゃないかというくらい見開き、俺の手相をまじまじと見つめる。
「写真撮っていいかい?オマケするよ」
「そんなにか?なら、良いよ。撮りな」
謎の撮影タイムが終わると、オバサンは真面目に喋りだす。
「本当に面白いが、とりあえず基本からさね。
まず、伊崎湊翔という人間は、少々おかしな事になっとる」
「おかしなこと?」
「手相で見れる事を簡潔に話すと、基本手相は左が本来持っている資質を表してる。右にあるのが現在を表しているのが手相だ」
「ほうほう」
「細かいのは置いておくけど、左から見て取れるに安定、真面目、大樹のような大きな基盤が出ている。あと珍しい線がちょくちょくあるな。
加えて両手含め線がありすぎる。
これだけ若いのに両手にある線が多い・太いというのは、まず見かけによらず繊細だ」
「へぇ、そうなんだ」
「こんな老人みたいに大成してるような太い線は見たことないねぇ。資産家にはちょくちょくいるけどねぇ」
珍しいんだ。
「左は本来のチカラを。ここに出てるのは頭脳線、ほう?二重じゃないか。
感情線、運命線が全て適度に長くて綺麗。
この線を見るに、天才、狂人のどちらか。
常人よりも思考が深い。体力も数倍以上あるさね。おそらく体調悪くなったなんてないはず。
感情は豊かだけど、しっかり思いやりがある。太陽線もこれだけ細かくあって濃いから、若くしてカリスマ的存在になりやすく、人気者だね。
ただ、危険視される恐れもある。
私と同じだね。
運命線は独立、自力で切り拓く。
血縁を超えた因縁。
ふぅ、金運はそうだね⋯⋯ハッキリ出てるのは"絶対に困らない"
あとは1本神秘十字が強く出ていて、近くにも同様なのがいくつも散らばっているから、生まれついてのヒーラー。
珍しい線で言えば、有名な所を押し込んだみたいな手相をしてるよ。
さっき言った神秘十字を含めて、ソロモン、覇王線、慈悲線、おー、ヒーラーの線が多いねぇ」
⋯⋯俺そんな凄かったの?
ある意味別の動揺が凄まじいのだが。
「ただ──」
オバサンが少し首を傾げる。
「何か悪いことでもしたのかい?」
「いいや?」
「いやねぇ。障害線っていうのがあるんだけどねぇ?
これでもかって言うほどあるのさ」
「うん」
「手相でもあまり良くない線もチラホラ乗ってて判断に困るレベルだ。それに島という線もある。
これは表に出ないトラウマ、癒えない心の傷、幼少期から青年期で深い痛みを負う。
──ある意味呪われてるね。こりゃ笑いものだ」
呪われてる。
まぁ、言われて見れば思い当たるのしかねぇよ。
「あーやっぱりかい」
「ん?」
「生命線とか色々読み取ると、端的に言えば両親の縁が良くないねぇ。
宿命かねぇ?血縁を離れる宿命、縁が切れる。
それに家庭内の葛藤、秘密、確執。
先祖とか家系の縁が物凄く複雑さね。
感情線も基本的には良いけど、読み取り方を変えれば切れ目が多い。これが意味しているのは環境の不安定さ、"愛情不足"」
⋯⋯愛情不足?どういう事だ?
「ほー」
「右は左より色濃く出ているけど、褒めることしかないさね。ただ、多分色々なことを加味して言うけどね、多分女関係は酷くなるね。
さっきの若い女の子達もそうだけど、恐らくもっと酷い事になるよ。
感情線の途切れや枝分かれ、このソロモン近くにも丸いのがあるだろう?ここにも島の線がある。
これは不倫、三角関係、執着される、別れがこじれるなんて意味がある。
女の因縁を大量に抱える相をしてる。
ちなみに命式でも女難は私が見てきた中でも最も最悪だね。
10人20人なんかじゃ済まない。
あんたどんだけ女好きなのよ、尊敬するさ。
カッ!私が若いときに合わなくて正解だね!」
「そんなイジメないでよお姉さん」
まぉ嬉しい事この上ないんだけど。
「女難の相が右手に出ているということは、あの連れてる二人⋯⋯気を付けな」
「あの二人?問題ないよ、性格の良い子達だから」
そう言うと盛大に溜息をつかれた。
なんか変なこと言った?俺変人みてぇじゃん。
「まぁいいさ。一先ず手相で総合的に見れるのはこれだけ。
あとはさっき準備した本格的なやつをやるさね」
と、オバサンの手はノートとカードに向く。
「アンタの占いをするのは面倒だねぇー。
言わなくちゃいけない事が多いさね」
「そんなに?」
「当たり前さね。本物なんだから」
そんな言われると照れるなぁ。
「一先ず、今までやってきた物すべてをまとめて簡潔に言う。
分かりやすい単語にしてるから、初でも問題ないよ。
まず、生まれついての資質は、ほとんどが王者の星が多い。
つまり、生まれながらに人の上に立つということが必要とされている星や宮が言ってる。
人の言う事を聞くなんてできない。
自分でやらないと気が済まない。
借りを作るのを嫌悪する。
独学を好む。
あとカリスマや人を惹きつけると言った類だね。
性格は穏やかで並外れた思考力と感覚。
破壊と再生。光と闇。
こんな事を言ってる。
面白いねぇ。
穏やかなのに過激な手段をとって破壊して、新しいルール作り出す。または破壊してそこから這い上がるっていうことだ」
「王者ね」
「そう。あとは忍耐や修羅場が多い。
孤独な時間も多い。
忍耐力が並外れているのは明確にやる事があるからって出てるね。
そして運命だけど、これも明確に選ばれし者って強く出てる。
手相にもあったけど、沢山の霊や運に恵まれている。
絶対に普通の人生を歩めないと断言出来る。
備わってる才能や特別な所にそう出てる。
まとめると、頭は冷たいけど魂は熱い。
何かを壊して救う。
孤独を抱えて不器用。
ここは色々言いたい所があるけど、家族の縁が薄いから、誰よりも本当は他人と繋がろうとしてる。
好きになると深いし、独占欲もある。
だけど自己犠牲もある。
──つまり誰よりも人間臭い。
どうやっても普通の人生にはならない。
あとはオマケ程度の生まれ付き天才肌。こんなところかね」
⋯⋯なるほど、人気な訳だ。
「総合的にだもんねぇ。これでもかなり端的に言ったつもりだ。他にも特別な才能や細かいところまで言えるけど、とりあえず前世や過去世に移る。
ここで見える限り、引き継いでいるのは今世でやるべき事が多い。
とりあえず今世のテーマは、手相もあったけど"救済"。
今世は人を救うという事に全てを捧げていると言ってもいいくらいはっきり出てる。
きっと過去世にどうしようもなく嘆いていると言った事が出てるし⋯⋯おぉ、ここでも出ている。
呪い、試練、障害、多分解釈的には女難に近いね。
前世では恐らく、何も救えず何も出来ずに生涯を終えた人間って感じの言葉が出てきてる。
今回はその恵まれた力で、無意識に沢山の人々を救済して、引き連れる。
ただ、ここでハッキリ出てるのは、王者の星が多いって言ったのを覚えとるか?」
「ああ、言ってたね」
「そう。王様っていうのは、こっちの解釈で言うと民を導く存在。
我儘に民を支配するのは王様ではなく独裁者になる。
あまりこういう事は言いたくはないけど、アンタの命式を見ると、独裁者でも上手くいくみたいな摩訶不思議なモノが出てるけど、基本的に独裁者の最期は⋯⋯分かるね?」
なるほど。言いたいことは分かった。
「つまり、碌な最後にはならんって事だね」
「それをも覆す力がある事を示しているのがアンタの命式と波動、手相から見える事だ。
とんでもないよ。これは。
写真撮って正解だね」
またもギャッハハと笑うオバサン。
「と、後は今後10年と細かく数年を見る事ができたり、特別な才能や異能に近い物があるか見れる。
あとは霊能力者でもあるから、霊とか守護しているのはどんなのかとかも見れる」
「⋯⋯それでこんな値段でやってるのは反則じゃない?」
「ギャッハハハハ! だからさね!」
俺ならこんな風にやれねぇわ。
「とりあえずじゃあ全部頼むわ」
「もう結果はさっき書いたから⋯⋯照らし合わせてだね」
何やら見続けて2分。
「うん。とりあえず10年だね。
10年で大きく見た全体のテーマ。
とそれがここでも出てるんだけど、救済と管理。
人を救い、それを管理する。
金運はこれ以上ないくらい絶好調。
病とかもなんにもないだろうね。
ただ──管理、ここが肝だ」
「ほぉ」
「これは女難にも、人間関係にも通ずるけど、10年でも短く今年や来年という短いスパンで見たとしても、特に女だね。
物凄い勢いで増える。
この上なく。
さっきの二人だけなんかじゃ到底ない。
短く見た今年と来年のテーマや見えるものとしては、太陽、スター、煌めき、大いなる光、焦がす、これが出てる。
改めて見ても凄いねぇ。
まぁつまりだ、今年は絶対に何をしても人前に出る事になるし、沢山の人間がアンタと関わろうとしてくるはずだ」
おぉ、おぉ。
「え?俺に新たなおなごが!?」
佐藤さんと理沙ちゃん、この二人はオキニだからあれだとしても、控えというか、華やかさの為にいっぱいいるんだよ?
飯食わせてもらったり、飲み物くれたり、お風呂一緒に入ったり、寝たりするのはこの二人だけど、例えば寝るときなんかは近くにみんな寝てるから、もう既に側室までいーっぱいいるのにねぇ。
「そんな前のめりになりおって!
この女の敵めっ!南無三⋯⋯⋯⋯」
「ちょちょ!変な詠唱しないで!」
胸の前で指上げたらなんか体がゾクッとしたんだけど。
⋯⋯マジで焦ったわ。
「ふんっ!」
「おなごが増えるなんて⋯⋯幸せやぁ」
「と言っても」
一気に空気が張り詰める。
「良い事ばかりではない。管理と言ったよ?」
「管理?」
「そう。管理出来なければ、この先最悪さね」
「管理ねぇ」
「⋯⋯だからその、しっかり女一人一人を見てあげるってことさ!!」
「あぁあぁ、そういう事」
それならもうやってる気が⋯⋯。
「あとは他のキーワードは、華国、水、外国、女⋯⋯また女かい!
んー秘密、世界、宗教、褐色、注意、なんだこれは?全部何を指してるのか検討もつかないねぇ」
「華国? なんで?」
「ちょっと深ぼるかねぇ」
シャッシャやって手際よくカードを出し、別のやつでもスラスラ書き進める。
「おぉ」
「何?何その顔」
なんだか険しいぞ?
「本当──この女ったらしが!!!」
勢いよく立ち上がったと思ったら、突然キレだす。
「なんだよ! 俺まだ何もしてないって!」
「華国について深ぼった。
出てきた言葉は、最も深い縁、霊性、異能、女難!!!それから富、救世主、危険、根源」
華国に?俺が?
俺日本人だぞ?
「俺外国に行ったことなんてないよ?お姉さん」
「んー⋯⋯これは予想なんだけどねぇ⋯⋯」
「なに?何があるの?」
「最近華国のスパイが日本に出入りしているなんて言われてるだろ?」
あーはいはい。将来親華みたいになるやつね。
「うん」
「あんた、ハニトラに引っかかりそうだね。
可能性としては、あとは親が華国とかかねぇ」
「いいや? 二人とも日本人だよ」
「そうなのかい?んー⋯⋯」
「何をそんなに真剣に悩んでるの?」
「やっぱり止めとこうか。可能性が低い話をしても仕方ないね」
なんか気になるなぁ。
あの二人が華国出身?
「とりあえず、今年は隠れられないってことさね。
あとはこの感じ──モテる」
「なにぃ!?モテるだって!」
ひゃっほーい!
「はぁー。だから言いたくなかったんだよこの女ったらし!」
「はいはい怒らない怒らないっ」
満面の笑みで宥める。
「けっ!あとは⋯⋯って、もう結構経ってるねぇ」
「おー、本当だ」
「そしたらあとは霊だけ見て終わろうかね」
と、なんか目を瞑って何か唱えている。
降霊術か何かか?
向こうには死霊術とかそういう類のはあったが、禁忌とされている。
まぁ俺は平気で使うけどね。
「あら、なんだい、面白いのが憑いているね」
「まず憑いてるんだ」
「なーに。当たり前さね。アンタには数え切れない程の霊が憑いてる」
「そんなにか?」
「そんなに」
まぁ、色々あったしなぁ。
1000年。
「特に強いのが、100人」
「あ、桁が違った」
「だから面白いのが憑いてるって言ったんだ」
「なんて言ってるの?」
「流石に特定は難しい。ただ、一人は強くこう言ってる───」
"そーくん、ごめんね"
「⋯⋯っ」
浮かぶ言葉に⋯⋯少しずつ目が無意識に開いた。
俺は、何も言えなかった。
「ほっ、アンタがそんな顔をする人間とはねぇ。
こんな変わった男を好きになるなんて面白い女だねぇ」
ヤバい。口が上手く動かん。
そうしてしばらく声を出せないでいると。
「でもなんかねぇ。アンタがモテる理由が分かった気がするよ」
両肘テーブルの上に乗せて、ここぞとばかりに言ってくる。
⋯⋯うるせぇよオバサン。
「良くも悪くも純粋。不器用だけど思いやりがあって、女が好きだとは言っても愛情は注いでくれる。
なるほどねぇ。裏表があまりない男はモテるからねぇ」
「⋯⋯はっ、俺はクズだからな」
「そんな女が抱いていた感情は、謝罪と感謝」
「⋯⋯⋯⋯」
謝るな。俺が悪いんだから。
頼む。俺を責めてくれ。
「この娘、明らかに大人だね。
アンタに最後まで謝ってる」
「──そう」
「あとは、"ちゃんと聞いてたよ"」
あー。
ちゃんと⋯⋯届いていたのか。
「⋯⋯ふぅ。そっか」
少し上を見ながらぼうっとする俺に、嬉しそうに喋るオバサン。
「いいねぇ。アンタみたいなのがそんな顔で固まっとるのを見ると、余程だよ」
「はぁ。うっせぇ」
「また強がる。不器用は恋愛の天敵だよ。
あと、色々な魂があるが、強いのは恋愛、愛情、尊敬、感謝、喜び、はぇー凄いねぇ。
アンタには数え切れない程の感謝と憎悪が同じくらい宿ってるね」
そうして俺は立ち上がる。
「もういいのかい?」
これ以上聞いてたら──しんみりしちまう。
「いつか」
「ん?」
「いや。まぁ、居場所と金に困ったら──ここに連絡しろよ、ばあさん」
「アンタねぇ! お姉さんとお呼び!!」
何か後ろで言っていたが、俺はそのまま何とも言えない顔をして、外に出た。
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