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第一章
サブクエスト〈1〉
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扉から出た二人を見た佐々木は、好奇心溢れた瞳でそれを眺めていた。
何でアイツはこの状況を冷静に見ているんだ?普通もっとこいつらみたいに地獄みてぇな面しながら、葬式みてぇなクソ空気を発してるはずだが?特にあの詠視って奴は──コレについて何か知ってる⋯⋯あの反応はなぁ。
「おい、俺達も外に出るぞ」
「え?でも」
「あ?あの詠視って奴の話だと、武器があれば安心⋯⋯ではねぇって言っただろ?話をまともに聞くなら、武器で対抗出来ないなにかが起こるって事だろう?つまりここに居たら──マズいってのを俺らに助言したわけだ」
「それを信じろっていうのかね!?こんなふざけた状況で!」
佐々木の言葉に半狂乱で口を挟む教授。
だが、佐々木は全く動揺を見せることなく淡々と言葉に出す。
「じゃあおっさん?俺達にどうすればいいか指示を出せって~。分かんねぇから思考停止はあんたら年寄りの得意技なだけだろ」
「なっ!?」
佐々木はそのまま講義室の中で行ったり来たりうろちょろしながら全員を見回す。
「どうする?俺は出来るだけ協力的な策をとろうとしてるだけだが?どいつこいつも反応なしかよ~⋯⋯」
大きく溜息をつきながらうろちょろしている佐々木に、数人の男が集まる。
「あぁ?」
「お前に着いていけば安全って本当か?」
「そりゃ分かんねぇよ?俺だってこんなゲームみたいで、命を賭ける真似なんてやったことないんだから」
睨み合う双方。
少しの間沈黙が訪れた後、静かに結託したように握手を交わしている。
「名前は?」
「俺は鈴村潤。こっちは斎藤」
「こんちわっす」
「そんで大吉」
「ちっす」
「佐々木だ。そんじゃあ、俺らも行くとするか~」
ヤンキー集団のように固まって行動を始め、そのまま扉の方へと歩き出した。
「なっ!君達!」
「もう学生じゃないんで~」
そう言って佐々木達は講義室から姿を消した。
「おい詠視!」
あれからしばらく早歩きで広い大学の中を進む二人。質問に答えずに黙って進む詠視の肩を掴み、そう声を張る雄大。
「さっきの事まだ怒ってるのか?」
「違う、何か理由があるなら話せって言いたいだけだ」
「理由?雄大は気付かないか?」
「何に?」と不思議そうに目を不自然にパチパチ瞬きして、首を傾げながら着いていく雄大。
「なんで指示がとにかく生き残れだけだと思う?」
「え?なんで?って?」
「そう。わざわざゲームなんてしなくたってさ、一瞬で潰せばいいと思わない?だって殺そうと思ったら一瞬じゃん?俺達の事だって」
そう。
俺も最初の方はおんなじ事を思ってたんだ。だってさ?地球外生命なんて奴等がいたとして、わざわざゲームとかいう形式、それに細かくコレをやりますってやればもっと良いはずなのに──その形式をとってまで俺達を試すような真似⋯⋯なんでやりたいんだろうって。
「分かんないな。そもそもあれって宇宙人なのか?」
「そう。正確には多分少し違うんだろうけど」
その言葉と同時に詠視がある部屋の前で止まる。
「保健センター?何を取りにきたんだ?」
「念の為。雄大⋯⋯今からこの世界はゾンビ映画と同じような世界観だと思って行動するべきだ」
「つまり⋯⋯食料や医療用具が必要って事か?」
詠視は鼻でふんと鳴らして返事を返す。そのまま絆創膏やアルコール関連の物を急いでリュックに詰め始める。
「急げよ~、もう少ししたら他の奴も似たような反応になって──地獄絵図が始まるから」
「⋯⋯?」
理解出来ないといった雄大の困惑した表情。
「よし!ある程度終わったよな?」
「⋯⋯ごっ、これ担いだまま移動するのか?詠視ぃ」
見れば正気かと疑う程の医療用品を、修学旅行に持っていくような80L弱のボストンバッグが非常用備品としてロッカーに入っており、それとプラス、それぞれ二人の持っているリュックの中にも詰めている。
まぁ一言でこの状況を言えば──とても移動するにはかさばり過ぎているということだ。
そして、馬鹿みたいに重たい重量を二人で担いでも踏ん張る声が出てしまうくらいだ。
どうやってこれで移動するのかと言いたい雄大の顔は詠視も分かっている。
「大丈夫だ、それを解決する為に──今から地獄みたいな場所へ向かおうとしているんだから」
「え?」
[制限時間です]
[隠しサブクエスト:虫退治を始めます]
というウインドウが二人の前に突如現れる。
「もう時間かよ」
そう焦りながら呟く詠視が、急いでボストンバッグの中に入っているあるものを探している。
「おい!何探してるんだ?」
「消毒用アルコール!」
「おっけ!!」
「雄大!全力でカバンからアルコールスプレーを全部出せ!」
さっきまで穏やかだった二人。だが今は血眼になって消毒スプレーを取り出しては次のスプレーを探す。
「何個あった?」
「こっちは10個!」
'足りるか⋯⋯?'
詠視の瞳が曇る。
こっちは6個。全部で16個でなんとか足りれば良いが⋯⋯。
「バッグはチャック閉めて俺達の後ろへ!」
雄大は詠視の指示を聞いて全力でバッグを後ろへと移動させる。
ピロン。
[隠しサブクエストが開始します]
迫りくる虫を退治しましょう!
難易度D+
制限時間10分
報酬小さいポーチ
失敗時--死亡
何でアイツはこの状況を冷静に見ているんだ?普通もっとこいつらみたいに地獄みてぇな面しながら、葬式みてぇなクソ空気を発してるはずだが?特にあの詠視って奴は──コレについて何か知ってる⋯⋯あの反応はなぁ。
「おい、俺達も外に出るぞ」
「え?でも」
「あ?あの詠視って奴の話だと、武器があれば安心⋯⋯ではねぇって言っただろ?話をまともに聞くなら、武器で対抗出来ないなにかが起こるって事だろう?つまりここに居たら──マズいってのを俺らに助言したわけだ」
「それを信じろっていうのかね!?こんなふざけた状況で!」
佐々木の言葉に半狂乱で口を挟む教授。
だが、佐々木は全く動揺を見せることなく淡々と言葉に出す。
「じゃあおっさん?俺達にどうすればいいか指示を出せって~。分かんねぇから思考停止はあんたら年寄りの得意技なだけだろ」
「なっ!?」
佐々木はそのまま講義室の中で行ったり来たりうろちょろしながら全員を見回す。
「どうする?俺は出来るだけ協力的な策をとろうとしてるだけだが?どいつこいつも反応なしかよ~⋯⋯」
大きく溜息をつきながらうろちょろしている佐々木に、数人の男が集まる。
「あぁ?」
「お前に着いていけば安全って本当か?」
「そりゃ分かんねぇよ?俺だってこんなゲームみたいで、命を賭ける真似なんてやったことないんだから」
睨み合う双方。
少しの間沈黙が訪れた後、静かに結託したように握手を交わしている。
「名前は?」
「俺は鈴村潤。こっちは斎藤」
「こんちわっす」
「そんで大吉」
「ちっす」
「佐々木だ。そんじゃあ、俺らも行くとするか~」
ヤンキー集団のように固まって行動を始め、そのまま扉の方へと歩き出した。
「なっ!君達!」
「もう学生じゃないんで~」
そう言って佐々木達は講義室から姿を消した。
「おい詠視!」
あれからしばらく早歩きで広い大学の中を進む二人。質問に答えずに黙って進む詠視の肩を掴み、そう声を張る雄大。
「さっきの事まだ怒ってるのか?」
「違う、何か理由があるなら話せって言いたいだけだ」
「理由?雄大は気付かないか?」
「何に?」と不思議そうに目を不自然にパチパチ瞬きして、首を傾げながら着いていく雄大。
「なんで指示がとにかく生き残れだけだと思う?」
「え?なんで?って?」
「そう。わざわざゲームなんてしなくたってさ、一瞬で潰せばいいと思わない?だって殺そうと思ったら一瞬じゃん?俺達の事だって」
そう。
俺も最初の方はおんなじ事を思ってたんだ。だってさ?地球外生命なんて奴等がいたとして、わざわざゲームとかいう形式、それに細かくコレをやりますってやればもっと良いはずなのに──その形式をとってまで俺達を試すような真似⋯⋯なんでやりたいんだろうって。
「分かんないな。そもそもあれって宇宙人なのか?」
「そう。正確には多分少し違うんだろうけど」
その言葉と同時に詠視がある部屋の前で止まる。
「保健センター?何を取りにきたんだ?」
「念の為。雄大⋯⋯今からこの世界はゾンビ映画と同じような世界観だと思って行動するべきだ」
「つまり⋯⋯食料や医療用具が必要って事か?」
詠視は鼻でふんと鳴らして返事を返す。そのまま絆創膏やアルコール関連の物を急いでリュックに詰め始める。
「急げよ~、もう少ししたら他の奴も似たような反応になって──地獄絵図が始まるから」
「⋯⋯?」
理解出来ないといった雄大の困惑した表情。
「よし!ある程度終わったよな?」
「⋯⋯ごっ、これ担いだまま移動するのか?詠視ぃ」
見れば正気かと疑う程の医療用品を、修学旅行に持っていくような80L弱のボストンバッグが非常用備品としてロッカーに入っており、それとプラス、それぞれ二人の持っているリュックの中にも詰めている。
まぁ一言でこの状況を言えば──とても移動するにはかさばり過ぎているということだ。
そして、馬鹿みたいに重たい重量を二人で担いでも踏ん張る声が出てしまうくらいだ。
どうやってこれで移動するのかと言いたい雄大の顔は詠視も分かっている。
「大丈夫だ、それを解決する為に──今から地獄みたいな場所へ向かおうとしているんだから」
「え?」
[制限時間です]
[隠しサブクエスト:虫退治を始めます]
というウインドウが二人の前に突如現れる。
「もう時間かよ」
そう焦りながら呟く詠視が、急いでボストンバッグの中に入っているあるものを探している。
「おい!何探してるんだ?」
「消毒用アルコール!」
「おっけ!!」
「雄大!全力でカバンからアルコールスプレーを全部出せ!」
さっきまで穏やかだった二人。だが今は血眼になって消毒スプレーを取り出しては次のスプレーを探す。
「何個あった?」
「こっちは10個!」
'足りるか⋯⋯?'
詠視の瞳が曇る。
こっちは6個。全部で16個でなんとか足りれば良いが⋯⋯。
「バッグはチャック閉めて俺達の後ろへ!」
雄大は詠視の指示を聞いて全力でバッグを後ろへと移動させる。
ピロン。
[隠しサブクエストが開始します]
迫りくる虫を退治しましょう!
難易度D+
制限時間10分
報酬小さいポーチ
失敗時--死亡
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