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ちょす氏

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悪事を働いてる時が一番生を感じる

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 ――ボガン要塞応接間

 
 「いやぁ、騎士団長殿」
 「伯爵様⋯⋯このような自分など」

 恰幅が良すぎる40過ぎのおじさんが豪華な装飾が施されている騎士団長であるモルグを丁重にもてなしていた。
 わざわざ伯爵自らソファに座るように案内をすることなど無い。
 ──よっぽどのことが無い限りは。

 "これ以上は失礼に当たる⋯⋯か"
 貴族の言葉を断るのは2回までと暗黙の了解で決まっている。
 モルグは内心面倒だと思いつつも、一礼してソファに浅く腰を下ろした。

 「要塞はどうだね? 今回はかなり私達も力を入れたんだが」
 「はい。いつも防衛しているのでその差はハッキリと理解しております。感謝などという言葉では言い表せないくらいです」
 「そうか! それは良かった!」

 ムッチムチの太ももを数回叩き、伯爵は嬉しそうに笑う。
 伯爵としばらく会話を交わした後、モルグが軽く頭を下げ本題へと向かう。

 「閣下、何かあるのでしょう?」
 「はは。閣下などと言わなくていい。モルグ騎士団長、私のことは単に伯爵と呼んでくれればいい」

 ”この笑みが私は嫌いだ。当然のように自分たちが上だと思い、対等に話してやっているという、そんな笑顔だ"
 
 「失礼ながら、伯爵様が何もないのに私のような者をお呼びになるとは考えづらく」
 「よく分かっているな。本題はこれだ」

 そう二人を挟むローテーブルに置かれたのは、謎の袋に入った物。

 「開けても?」
 「もちろんだ。確認してくれたまえ」

 恐る恐る中身を確認すると、一瞬モルグの眉がピクリと動く。

 「これは?」
 「勘付いているのだろう?モルグ騎士団長」
 「私の知っているもので間違いでなければと思いましたので」
 「そうか。他の奴らなら後で何を言うか分かったものではないからな」

 中身は薬草に近い見た目をしているが、モルグはすぐに違うと察している。
 "この少し土臭さ⋯⋯アガリか。まさか伯爵家が関与していたとは"

 アガリは地球で言うところの大麻や麻薬などの効果を持っていて、量によって様々だ。

 「アガリ⋯⋯ですか」
 「私も見るのは初でね」
 「不躾な質問で申し訳ありませんが、なぜこれをお見せになったのでしょうか?」 
 「ふむ⋯⋯モルグ騎士団長にならば良い⋯⋯か」

 顎髭を苛つく手つきで触る伯爵が何かを決心した。

 「レンシアの奴ら、これが余ってしまうほどの格差があるようでな」
 「余りをこちらに⋯⋯ですか」
 「まぁそもそも、今回の戦争は運ぶ為のカモフラージュだ」
 「──なるほど」
 「我が国も、お隣に文句が言えないほど平民が落ちぶれているのも事実だ。アガリがあれば一時の娯楽となろう?」

 ギュウウウ。
 伯爵からは見えない位置で、モルグは無意識に拳を握り締めていた。

 「はい。伯爵様の仰る通りかと」
 「王家直轄でないから、問題はなかろう?金は弾む」

 モルグの前に出されたのは、白金貨2枚である。
 贅沢をしないでいれば、20年は安泰であろう金だ。

 「今は要塞だからな。懐にはこれくらいしかない。戻ったらもう3枚渡そう」
 「私達は従うのみです」

 "断ったら、どうなることか"
 モルグは内心鼻で笑い飛ばし、己の無力さに自らの首を断ちたいと今にもやりそうな勢いだった。

 "しかし、金がなければ妻も子供も逃げるように居なくなるのだから、悪くないのかもしれない"
 
 「中々騎士団長も話がわかるようで良かったぞ。断られたらどうしようかと思っていたところだ! あっははは」
 「あははは⋯⋯」

 



 二人が話している最中、次元が揺らぐ。
 時が止まる。

 「⋯⋯⋯⋯」

 確認の為に騎士団長に会いに行こうとしたら思わぬ話が聞けたな。
 いつもの癖で時間を止めて侵入しては色々な情報を盗んで事業と様々なことに活かすのが俺の生き方だ。

 ──やはり金は全てを解決してくれる。

 「アガリ⋯⋯ねぇ」

 アガリの事は噂程度しか知らなかったが、麻薬と似たような効能を言っていたことから、地球で言うところの売人なんかのアレだな。

 「んん⋯⋯どうするかなぁ」

 アガリを運んで一儲けするのもいいし、脅迫するのも「あり」だな。

 「しっかし⋯⋯一回脅迫したら殺すまでも視野に入れないと後が怖いなぁ。んん⋯⋯」

 そうボヤきながら寄りかかっていた壁際から離れ、組んでいた腕を解く。
 応接間に入り、二人の顔をしっかりと確認。
 デブとムッキムキのイケオジだ。
 
 「はぁ⋯⋯せちからぁ」

 団長の顔を見て俺は言わずにはいられなかった。
 夢の騎士団だったんだろうなぁ。
 こんな事を頼まれる為に生きてきた訳じゃなかろうに。

 「お、そうだった!」

 だがそんな事よりも大事な事がある。
 デブの後ろにある机を漁る事だ。
 まぁこんなことを自分から言うのはアレだが、時間をほぼ止めているに等しいこの能力で色んなことをやっている。
 だからこのような事も既に実施済みだと言うこと。

 昔は子供だったことをいいことに、美女の水浴びを目の前で拝んだり、不倫の現場をリアルタイムで覗いたり、あとは汚職まみれの村長の引き出しから貴重な物をぶんどって売り払ったり、な。
 ──つまり俺が今やっていることだ。

 「ほえー。結構なモンだろこれ」

 字面にすると真紅のような発光を魅せるこの5cm大の石は、所謂魔石だ。
 この魔石には様々な種類があるということから厳格な区分けがされている。

 何ランクのこれ~みたいな事だな。
 純度の高いやつは自ら発光していたり、まぁなんつーか存在感とやらが違うみたいな感じといえばわかるかな。

 「火の魔石⋯⋯恐らくはかなりの上物だな。下手したら白金貨数枚は行きそうな代物だな」

 魔石は様々なエネルギーの源だ。
 特に火と水は価値が高い。生活に必要な場面が最も多いからだ。

 「これだけやばかったら白金貨で売れるな」

 発光しているということは、内包されている魔力も半端ではない量が込められている証拠だ。
 このレベルだと2年は確実に使えるだろう。

 「娼館はねぇか⋯⋯」

 お気付きだと思うが、俺は案外性格が悪い。
 これも転生前に言っていた神様の混ぜるような発言から推測したことだ。

 ドサッっと高そうなソファに横になる。
 意外と寝心地悪いな。

 「金だけ持ってても意味ねぇんだよなぁ⋯⋯」
 
 今の俺は、ハッキリ言えばここにいる伯爵よりも金を持っている。
 ただ、あり過ぎても、使いみちに困るという事だ。

 「娼館なんてガラじゃないんだけど⋯⋯」

 娼館で働いている奴らの理由なんて、大半が家の為だなんだ⋯⋯大体が善良な訳あり民だ。
 それらを助けるのも一興でもある。

 「まぁなんつーか⋯⋯⋯⋯」

 "兄貴! 俺の妹に教えてくれたけんけんパー遊び滅茶苦茶ハマってさん連続までできるようになったんすよ!!"
 "弟がノアさんのおかげで太れるようになりました"
 "感謝しきれません。この先、ここは俺達が守りますから!"

 「⋯⋯⋯⋯」

 居場所、か。
 街の貧しいガキどもを使って、地下に貧しい奴らの為の、誰にも関与されない帝国を作る⋯⋯まぁ、悪くない話か。

 「メリットもなしに?」

 ⋯⋯。
 一瞬の静寂。俺の頭には色々な案が流れたが、左から右に流れていた。

 「まぁ施されているだけでも、罪悪感は生まれるだろうし、その時になったら考えればいいか」

 俺には余罪があるし。アイツ、元気にしてるかな。
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