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第一話
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今作はストーリーはガン無視、戦争のリアリティを存分に書いてみたいなぁと思い日記刑を参考に書きました。なんか句読点バグってるのは気にしないで。よくわからん。
ちなみに二か月目から本格的に動くので貯めといたほうがいい。
朝の空気は乾いていて、舌の上が粉を噛んだみたいにざらつく 。寝床の布をめくると、すぐ下に硬い土と小石があった 。小石の冷たさが足の裏に張りつく 。遠くで何かが金属を叩く音がして、音の間に風が入り込む 。
銃は膝の上にあった 。親から渡されたままの重さ 。肩に掛ける紐が、擦れて毛羽立っている 。指で撫でると、毛羽が爪に引っかかった 。油の匂いが鼻の奥に残る 。布で拭いたところだけ黒が濃くなって、他の部分は砂を飲んだ色のまま鈍い 。
一緒に遊ぶ子が二人、寝床の外でしゃがんでいた 。片方は石を三つ握って、指の隙間から落として音を鳴らしている 。もう片方は棒切れを肩に担いで、棒の先を空に向けたり地面に向けたりしていた 。声は小さく、短い 。
「おい、次はお前が交代だ。あっちの岩場で見張りに立ってこいよ。早く行け。」
言われた言葉はそれだけだった 。だから頷いて、少し高い石の陰に移る 。石の陰は影が濃い 。影の中に入ると、体が冷えていく 。影の境目の線を踏まえないようにして足を置く 。遊びのときの癖が勝手に出る 。
石の陰から見える場所に、あの大砲がある 。砲身は太く、台座は低い 。周りだけ地面が固められている 。靴の跡が、そこだけ少ない 。そこだけ布が掛かっていたり、縄が張られていたりする 。縄は細い 。細いけど、誰も跨がない 。跨いだ子を見たことがない 。大人がいるときは、近づく前に肩を掴まれる 。
大砲の近くにいる古い兵士が一人、布を直していた 。布の端を持つ指が、砂で白くなっている 。布を引く音が、乾いた 。
風が止まると、音が増える 。金属、布、咳 。どれも短い 。誰も長く喋らない 。喋ると喉が痛むからだ 。水が少ないからだ 。水が少ないことは、十歳でも分かる 。
石の陰に座ったまま、銃の重さを膝で確かめる 。握るところの冷たさが、少しだけ指に残った 。親の手を思い出す 。指が大きかった 。叱るときの指も、銃を渡すときの指も同じだった 。声は低く、言葉は短かった 。だからそのまま覚えている 。
「いいか、どんなことがあってもこの銃だけは絶対に手放すんじゃないぞ。お前の命そのものなんだからな。」
それだけ 。
その言葉が頭の中に残っているから、銃はいつも膝の上にある 。
昼が近づくと、空が白くなる 。白いのに眩しい 。眩しさで目が乾く 。瞬きをすると、目の奥が痛い 。口を開けると、砂が入るから閉じる 。
そのとき、音が来た 。
最初は遠い 。風の音に混ざっている 。混ざっているのに、違う 。遊びのときに、誰かが口でやっていた音に似ている 。ぶーん、じゃない 。もっと硬い 。もっと尖っている 。耳の内側を指でこすられるみたいに、細い 。
石を鳴らしていた子が手を止めた 。棒を担いでいた子が棒を落とした 。棒が石に当たって乾いた音を出す 。大人たちも空を見上げる 。見上げるだけで、誰も走らない 。慌てているのに、動かない 。
空の端に黒い点が現れて、すぐに形になった 。翼 。腹 。尾 。光が反射して、目が細くなる 。黒い点が大きくなるにつれて、音が太くなる 。太くなっても、まだ高くない 。高いところにいるのに、低く感じる 。影が地面に落ちてくる 。影が滑っていく 。
遊びのときなら、ここで伏せる 。影に入る 。息を止める 。指で数える 。数えるのは、逃げるタイミングを当てるため 。
だから数えた 。
一、二 。
息が勝手に短くなる 。胸の中の空気が軽い 。軽いのに、呼吸が乱れる 。乱れているのに、頭の中は静かになる 。石の陰が狭く感じる 。影の線が濃くなる 。影の中にいるのに、影が動く 。
飛行機が通り過ぎるとき、風が来る 。風に砂が混じっている 。砂が頬に当たる 。肌が引っ張られる 。目を閉じたくなる 。閉じたら見えない 。見えないと、遊びで負ける 。負けるのが嫌だから、目を開ける 。涙が出る 。涙が出ても砂が入る 。
誰かが短く叫んだ 。
「おい、撃つな! 下手に撃って位置を悟られるな! 全員動かずに伏せていろ!」
それだけ 。
十歳には、その言葉の理由までは分からない 。理由は聞かない 。聞いても返事は長くならない 。長い返事は、ここでは出ない 。
飛行機は戻ってこないのに、空気は戻らない 。音が残る 。耳の中に、細い線が残る 。線が消えない 。線が消えないまま、大砲の方を見る 。
大砲の周りが動いている 。布が外される 。縄の向こう側で靴が鳴る 。誰かが砲身に手を当てる 。手が滑る 。誰かが笑うような音を出しそうになって、喉で止める 。笑いは出ない 。笑いが出る場所じゃない 。
飛行機がもう一度、同じ辺りに来た 。さっきより少しだけ低い 。低いと、大きく見える 。大きいと、近い気がする 。近いと、影が濃い 。
大砲の近くで、声が短く落ちた 。
「やめろ、作業は中止だ! 早く大砲を隠して元に戻せ!」
その次に、別の声が短く割れた 。
「急げ、急いで布を掛けろ! 位置を完全に元へ戻すんだ!」
言葉の意味が十歳の頭の中で並ぶ 。並ぶだけで、整理されない 。整理する時間がない 。風が来る 。音が太くなる 。影が滑る 。
その瞬間、音が割れた 。
大砲の音は、耳で聞く音じゃない 。胸でぶつかる 。腹が叩かれる 。舌の根が跳ねる 。歯が鳴って、口の中で鉄の味がする 。目の前が白くなって、白い中に黒い点が刺さる 。刺さった点が震える 。
耳の奥に線が走る 。線はさっきより太い 。太いのに、一本にまとまる 。一本の線が、空の一点を指す 。指すというより、そこだけが空じゃなくなる 。
体が勝手に動いた 。石の陰から半歩だけ出て、目を上げる 。上げた瞬間、風が頬を叩く 。砂が目に入る 。涙が勝手に出る 。出ても目を逸らせない 。
空で何かが弾けた 。光が散って、散ったものが消えないまま落ちてくる 。落ちてくるものは砂じゃない 。砂より硬い 。硬いのに小さい 。小さいのに速い 。音が遅れて追いついてくる 。
飛行機の翼が、わずかに変な角度になった 。角度は小さい 。小さいのに、次の動きが変わる 。鼻が上がる 。尾が揺れる 。揺れが戻らない 。戻らない揺れが、地面に近づく揺れになる 。
落ちた 。
落ちるまでの間、息が止まっていたことに気づかなかった 。気づいたのは、落ちたあとだ 。胸が勝手に膨らんで、空気が喉を擦る 。喉が痛い 。痛いのに声が出ない 。声は必要ない 。必要なのは次だ 。遊びなら、次が来る 。次が来るから、動く 。
だから膝の上の銃を握り直した 。握り直すと、指の裏に油が付く 。油の匂いが戻ってくる 。戻ってくる匂いは、いつも「大丈夫だった」の匂いだ 。
大人が駆けてくる 。走る足が砂を蹴る 。砂が跳ねる 。砂が目に入る 。目を閉じたい 。閉じない 。
誰かの手が肩を掴んだ 。掴む力が強い 。強いのに、怒鳴り声は出ない 。怒鳴り声が出ないのが、怖い 。怖いとは言わない 。喉が詰まる 。胃が縮む 。手のひらが汗で滑る 。
「空を見るんじゃない。いいから目を伏せていろ。お前はただ、それをしっかり持っておけばいいんだ。」
言葉は短い 。
見るなと言われても、目は空を見たままだった 。空の線が残っている 。耳の中の線が残っている 。線が消えない 。線が消えないまま、大砲の方を見る 。
大砲の周りが動いている 。布が外される 。縄の向こう側で靴が鳴る 。誰かが砲身に手を当てる 。手が滑る 。誰かが笑うような音を出しそうになって、喉で止める 。笑いは出ない 。笑いが出る場所じゃない 。
飛行機がもう一度、同じ辺りに来た 。さっきより少しだけ低い 。低いと、大きく見える 。大きいと、近い気がする 。近いと、影が濃い 。
大砲の近くで、声が短く落ちた 。
「もうやめろ、作業中止だ。早く覆いをして戻せ。」
その次に、別の声が短く割れた 。
「おい、急いで布を掛けろ。元の位置に戻すんだ。」
言葉の意味が十歳の頭の中で並ぶ 。並ぶだけで、整理されない 。整理する時間がない 。風が来る 。音が太くなる 。影が滑る 。
その瞬間、音が割れた 。
大砲の音は、耳で聞く音じゃない 。胸でぶつかる 。腹が叩かれる 。舌の根が跳ねる 。歯が鳴って、口の中で鉄の味がする 。目の前が白くなって、白い中に黒い点が刺さる 。刺さった点が震える 。
耳の奥に線が走る 。線はさっきより太い 。太いのに、一本にまとまる 。一本の線が, 空の一点を指す 。指すというより、そこだけが空じゃなくなる 。
体が勝手に動いた 。石の陰から半歩だけ出て、目を上げる 。上げた瞬間、風が頬を叩く 。砂が目に入る 。涙が勝手に出る 。出ても目を逸らせない 。
空で何かが弾けた 。光が散って、散ったものが消えないまま落ちてくる 。落ちてくるものは砂じゃない 。砂より硬い 。硬いのに小さい 。小さいのに速い 。音が遅れて追いついてくる 。
飛行機の翼が、わずかに変な角度になった 。角度は小さい 。小さいのに、次の動きが変わる 。鼻が上がる 。尾が揺れる 。揺れが戻らない 。戻らない揺れが、地面に近づく揺れになる 。
落ちた 。
落ちるまでの間、息が止まっていたことに気づかなかった 。気づいたのは、落ちたあとだ 。胸が勝手に膨らんで、空気が喉を擦る 。喉が痛い 。痛いのに声が出ない 。声は必要ない 。必要なのは次だ 。遊びなら、次が来る 。次が来るから、動く 。
だから膝の上の銃を握り直した 。握り直すと、指の裏に油が付く 。油の匂いが戻ってくる 。戻ってくる匂いは、いつも「大丈夫だった」の匂いだ 。
大人が駆けてくる 。走る足が砂を蹴る 。砂が跳ねる 。砂が目に入る 。目を閉じたい 。閉じない 。
誰かの手が肩を掴んだ 。掴む力が強い 。強いのに、怒鳴り声は出ない 。怒鳴り声が出ないのが、怖い 。怖いとは言わない 。喉が詰まる 。胃が縮む 。手のひらが汗で滑る 。
「空をあまり見るんじゃない。目を伏せていろ。お前はただ、それをしっかり持っておけばいいんだ。」
言葉は短い 。
見るなと言われても、目は空を見たままだった 。空の線が残っている 。耳の中の線が残っている 。線が消えない 。線が消えないまま、大砲の方を見る 。
次も 。
そう思った瞬間、口の中の鉄の味が強くなった 。唾を飲み込むと喉が痛い 。痛いのに、胸の奥が軽い 。軽いのに、体が震える 。震えは止まらない 。止まらない震えは、遊びのときにもあった 。勝ったときの震え 。負けたときの震え 。どっちか分からない震え 。
夕方、空は少しだけ色が落ちる 。落ちても熱は落ちない 。影だけが長くなる 。影が長くなると、遊びは終わりの合図だった 。
でも今日は終わらない 。
上から来た大人が二人、紙を抱えていた 。紙は白い 。砂の色の中で白い 。白い紙を持つ手が汗で濡れて、端が少し波打っている 。白い紙を見るだけで、周りの大人の顔が硬くなる 。
大砲の周りは、急に静かになる 。さっきまで動いていた手が止まる 。布が掛け直される 。縄が張り直される 。縄の位置が少し変わる 。少し変わるだけで、近づける場所が減る 。減っても、誰も文句を言わない 。
肩を掴んだ手が、今度は腕を掴んだ 。引かれる 。引かれる方向は、砲座から離れる方向 。銃は膝の上から外れそうになる 。外れそうになって、指が勝手に強くなる 。指の力で銃が戻る 。
「おい、その銃はそこへ置くんじゃない。肌身離さず持っていなさい。」
言われたのは銃じゃない 。置くなと言われても、何を置くのか分からない 。分からないまま、足が動く 。足が動くのは、命令に慣れているからだ 。遊びでも、役は勝手に変えられた 。役を変えられても、動くししかわなかった 。
夜、寝床に戻っても、耳の線は消えない 。線は静かな場所で太くなる 。太くなる線が、砂の上で鳴る足音を拾う 。拾った足音が近い気がする 。近いのに、誰も来ない 。来ないのに、耳の線が止まらない 。
銃を抱いて横になる 。抱くと重い 。重いのに安心する 。安心とは言わない 。肩の筋肉が緩む 。指の力が少し抜ける 。抜けた瞬間、耳の線がまた一本になる 。一本の線が、昼の空を指す 。
次も 。
口の中で言葉にならないまま、舌が動く 。唇が乾いて割れている 。割れているのに、口角が勝手に上がる 。上がったまま、眠りに落ちる 。
夜は静かだ 。静かなのに、耳の中だけが昼のままだった 。
ちなみに二か月目から本格的に動くので貯めといたほうがいい。
朝の空気は乾いていて、舌の上が粉を噛んだみたいにざらつく 。寝床の布をめくると、すぐ下に硬い土と小石があった 。小石の冷たさが足の裏に張りつく 。遠くで何かが金属を叩く音がして、音の間に風が入り込む 。
銃は膝の上にあった 。親から渡されたままの重さ 。肩に掛ける紐が、擦れて毛羽立っている 。指で撫でると、毛羽が爪に引っかかった 。油の匂いが鼻の奥に残る 。布で拭いたところだけ黒が濃くなって、他の部分は砂を飲んだ色のまま鈍い 。
一緒に遊ぶ子が二人、寝床の外でしゃがんでいた 。片方は石を三つ握って、指の隙間から落として音を鳴らしている 。もう片方は棒切れを肩に担いで、棒の先を空に向けたり地面に向けたりしていた 。声は小さく、短い 。
「おい、次はお前が交代だ。あっちの岩場で見張りに立ってこいよ。早く行け。」
言われた言葉はそれだけだった 。だから頷いて、少し高い石の陰に移る 。石の陰は影が濃い 。影の中に入ると、体が冷えていく 。影の境目の線を踏まえないようにして足を置く 。遊びのときの癖が勝手に出る 。
石の陰から見える場所に、あの大砲がある 。砲身は太く、台座は低い 。周りだけ地面が固められている 。靴の跡が、そこだけ少ない 。そこだけ布が掛かっていたり、縄が張られていたりする 。縄は細い 。細いけど、誰も跨がない 。跨いだ子を見たことがない 。大人がいるときは、近づく前に肩を掴まれる 。
大砲の近くにいる古い兵士が一人、布を直していた 。布の端を持つ指が、砂で白くなっている 。布を引く音が、乾いた 。
風が止まると、音が増える 。金属、布、咳 。どれも短い 。誰も長く喋らない 。喋ると喉が痛むからだ 。水が少ないからだ 。水が少ないことは、十歳でも分かる 。
石の陰に座ったまま、銃の重さを膝で確かめる 。握るところの冷たさが、少しだけ指に残った 。親の手を思い出す 。指が大きかった 。叱るときの指も、銃を渡すときの指も同じだった 。声は低く、言葉は短かった 。だからそのまま覚えている 。
「いいか、どんなことがあってもこの銃だけは絶対に手放すんじゃないぞ。お前の命そのものなんだからな。」
それだけ 。
その言葉が頭の中に残っているから、銃はいつも膝の上にある 。
昼が近づくと、空が白くなる 。白いのに眩しい 。眩しさで目が乾く 。瞬きをすると、目の奥が痛い 。口を開けると、砂が入るから閉じる 。
そのとき、音が来た 。
最初は遠い 。風の音に混ざっている 。混ざっているのに、違う 。遊びのときに、誰かが口でやっていた音に似ている 。ぶーん、じゃない 。もっと硬い 。もっと尖っている 。耳の内側を指でこすられるみたいに、細い 。
石を鳴らしていた子が手を止めた 。棒を担いでいた子が棒を落とした 。棒が石に当たって乾いた音を出す 。大人たちも空を見上げる 。見上げるだけで、誰も走らない 。慌てているのに、動かない 。
空の端に黒い点が現れて、すぐに形になった 。翼 。腹 。尾 。光が反射して、目が細くなる 。黒い点が大きくなるにつれて、音が太くなる 。太くなっても、まだ高くない 。高いところにいるのに、低く感じる 。影が地面に落ちてくる 。影が滑っていく 。
遊びのときなら、ここで伏せる 。影に入る 。息を止める 。指で数える 。数えるのは、逃げるタイミングを当てるため 。
だから数えた 。
一、二 。
息が勝手に短くなる 。胸の中の空気が軽い 。軽いのに、呼吸が乱れる 。乱れているのに、頭の中は静かになる 。石の陰が狭く感じる 。影の線が濃くなる 。影の中にいるのに、影が動く 。
飛行機が通り過ぎるとき、風が来る 。風に砂が混じっている 。砂が頬に当たる 。肌が引っ張られる 。目を閉じたくなる 。閉じたら見えない 。見えないと、遊びで負ける 。負けるのが嫌だから、目を開ける 。涙が出る 。涙が出ても砂が入る 。
誰かが短く叫んだ 。
「おい、撃つな! 下手に撃って位置を悟られるな! 全員動かずに伏せていろ!」
それだけ 。
十歳には、その言葉の理由までは分からない 。理由は聞かない 。聞いても返事は長くならない 。長い返事は、ここでは出ない 。
飛行機は戻ってこないのに、空気は戻らない 。音が残る 。耳の中に、細い線が残る 。線が消えない 。線が消えないまま、大砲の方を見る 。
大砲の周りが動いている 。布が外される 。縄の向こう側で靴が鳴る 。誰かが砲身に手を当てる 。手が滑る 。誰かが笑うような音を出しそうになって、喉で止める 。笑いは出ない 。笑いが出る場所じゃない 。
飛行機がもう一度、同じ辺りに来た 。さっきより少しだけ低い 。低いと、大きく見える 。大きいと、近い気がする 。近いと、影が濃い 。
大砲の近くで、声が短く落ちた 。
「やめろ、作業は中止だ! 早く大砲を隠して元に戻せ!」
その次に、別の声が短く割れた 。
「急げ、急いで布を掛けろ! 位置を完全に元へ戻すんだ!」
言葉の意味が十歳の頭の中で並ぶ 。並ぶだけで、整理されない 。整理する時間がない 。風が来る 。音が太くなる 。影が滑る 。
その瞬間、音が割れた 。
大砲の音は、耳で聞く音じゃない 。胸でぶつかる 。腹が叩かれる 。舌の根が跳ねる 。歯が鳴って、口の中で鉄の味がする 。目の前が白くなって、白い中に黒い点が刺さる 。刺さった点が震える 。
耳の奥に線が走る 。線はさっきより太い 。太いのに、一本にまとまる 。一本の線が、空の一点を指す 。指すというより、そこだけが空じゃなくなる 。
体が勝手に動いた 。石の陰から半歩だけ出て、目を上げる 。上げた瞬間、風が頬を叩く 。砂が目に入る 。涙が勝手に出る 。出ても目を逸らせない 。
空で何かが弾けた 。光が散って、散ったものが消えないまま落ちてくる 。落ちてくるものは砂じゃない 。砂より硬い 。硬いのに小さい 。小さいのに速い 。音が遅れて追いついてくる 。
飛行機の翼が、わずかに変な角度になった 。角度は小さい 。小さいのに、次の動きが変わる 。鼻が上がる 。尾が揺れる 。揺れが戻らない 。戻らない揺れが、地面に近づく揺れになる 。
落ちた 。
落ちるまでの間、息が止まっていたことに気づかなかった 。気づいたのは、落ちたあとだ 。胸が勝手に膨らんで、空気が喉を擦る 。喉が痛い 。痛いのに声が出ない 。声は必要ない 。必要なのは次だ 。遊びなら、次が来る 。次が来るから、動く 。
だから膝の上の銃を握り直した 。握り直すと、指の裏に油が付く 。油の匂いが戻ってくる 。戻ってくる匂いは、いつも「大丈夫だった」の匂いだ 。
大人が駆けてくる 。走る足が砂を蹴る 。砂が跳ねる 。砂が目に入る 。目を閉じたい 。閉じない 。
誰かの手が肩を掴んだ 。掴む力が強い 。強いのに、怒鳴り声は出ない 。怒鳴り声が出ないのが、怖い 。怖いとは言わない 。喉が詰まる 。胃が縮む 。手のひらが汗で滑る 。
「空を見るんじゃない。いいから目を伏せていろ。お前はただ、それをしっかり持っておけばいいんだ。」
言葉は短い 。
見るなと言われても、目は空を見たままだった 。空の線が残っている 。耳の中の線が残っている 。線が消えない 。線が消えないまま、大砲の方を見る 。
大砲の周りが動いている 。布が外される 。縄の向こう側で靴が鳴る 。誰かが砲身に手を当てる 。手が滑る 。誰かが笑うような音を出しそうになって、喉で止める 。笑いは出ない 。笑いが出る場所じゃない 。
飛行機がもう一度、同じ辺りに来た 。さっきより少しだけ低い 。低いと、大きく見える 。大きいと、近い気がする 。近いと、影が濃い 。
大砲の近くで、声が短く落ちた 。
「もうやめろ、作業中止だ。早く覆いをして戻せ。」
その次に、別の声が短く割れた 。
「おい、急いで布を掛けろ。元の位置に戻すんだ。」
言葉の意味が十歳の頭の中で並ぶ 。並ぶだけで、整理されない 。整理する時間がない 。風が来る 。音が太くなる 。影が滑る 。
その瞬間、音が割れた 。
大砲の音は、耳で聞く音じゃない 。胸でぶつかる 。腹が叩かれる 。舌の根が跳ねる 。歯が鳴って、口の中で鉄の味がする 。目の前が白くなって、白い中に黒い点が刺さる 。刺さった点が震える 。
耳の奥に線が走る 。線はさっきより太い 。太いのに、一本にまとまる 。一本の線が, 空の一点を指す 。指すというより、そこだけが空じゃなくなる 。
体が勝手に動いた 。石の陰から半歩だけ出て、目を上げる 。上げた瞬間、風が頬を叩く 。砂が目に入る 。涙が勝手に出る 。出ても目を逸らせない 。
空で何かが弾けた 。光が散って、散ったものが消えないまま落ちてくる 。落ちてくるものは砂じゃない 。砂より硬い 。硬いのに小さい 。小さいのに速い 。音が遅れて追いついてくる 。
飛行機の翼が、わずかに変な角度になった 。角度は小さい 。小さいのに、次の動きが変わる 。鼻が上がる 。尾が揺れる 。揺れが戻らない 。戻らない揺れが、地面に近づく揺れになる 。
落ちた 。
落ちるまでの間、息が止まっていたことに気づかなかった 。気づいたのは、落ちたあとだ 。胸が勝手に膨らんで、空気が喉を擦る 。喉が痛い 。痛いのに声が出ない 。声は必要ない 。必要なのは次だ 。遊びなら、次が来る 。次が来るから、動く 。
だから膝の上の銃を握り直した 。握り直すと、指の裏に油が付く 。油の匂いが戻ってくる 。戻ってくる匂いは、いつも「大丈夫だった」の匂いだ 。
大人が駆けてくる 。走る足が砂を蹴る 。砂が跳ねる 。砂が目に入る 。目を閉じたい 。閉じない 。
誰かの手が肩を掴んだ 。掴む力が強い 。強いのに、怒鳴り声は出ない 。怒鳴り声が出ないのが、怖い 。怖いとは言わない 。喉が詰まる 。胃が縮む 。手のひらが汗で滑る 。
「空をあまり見るんじゃない。目を伏せていろ。お前はただ、それをしっかり持っておけばいいんだ。」
言葉は短い 。
見るなと言われても、目は空を見たままだった 。空の線が残っている 。耳の中の線が残っている 。線が消えない 。線が消えないまま、大砲の方を見る 。
次も 。
そう思った瞬間、口の中の鉄の味が強くなった 。唾を飲み込むと喉が痛い 。痛いのに、胸の奥が軽い 。軽いのに、体が震える 。震えは止まらない 。止まらない震えは、遊びのときにもあった 。勝ったときの震え 。負けたときの震え 。どっちか分からない震え 。
夕方、空は少しだけ色が落ちる 。落ちても熱は落ちない 。影だけが長くなる 。影が長くなると、遊びは終わりの合図だった 。
でも今日は終わらない 。
上から来た大人が二人、紙を抱えていた 。紙は白い 。砂の色の中で白い 。白い紙を持つ手が汗で濡れて、端が少し波打っている 。白い紙を見るだけで、周りの大人の顔が硬くなる 。
大砲の周りは、急に静かになる 。さっきまで動いていた手が止まる 。布が掛け直される 。縄が張り直される 。縄の位置が少し変わる 。少し変わるだけで、近づける場所が減る 。減っても、誰も文句を言わない 。
肩を掴んだ手が、今度は腕を掴んだ 。引かれる 。引かれる方向は、砲座から離れる方向 。銃は膝の上から外れそうになる 。外れそうになって、指が勝手に強くなる 。指の力で銃が戻る 。
「おい、その銃はそこへ置くんじゃない。肌身離さず持っていなさい。」
言われたのは銃じゃない 。置くなと言われても、何を置くのか分からない 。分からないまま、足が動く 。足が動くのは、命令に慣れているからだ 。遊びでも、役は勝手に変えられた 。役を変えられても、動くししかわなかった 。
夜、寝床に戻っても、耳の線は消えない 。線は静かな場所で太くなる 。太くなる線が、砂の上で鳴る足音を拾う 。拾った足音が近い気がする 。近いのに、誰も来ない 。来ないのに、耳の線が止まらない 。
銃を抱いて横になる 。抱くと重い 。重いのに安心する 。安心とは言わない 。肩の筋肉が緩む 。指の力が少し抜ける 。抜けた瞬間、耳の線がまた一本になる 。一本の線が、昼の空を指す 。
次も 。
口の中で言葉にならないまま、舌が動く 。唇が乾いて割れている 。割れているのに、口角が勝手に上がる 。上がったまま、眠りに落ちる 。
夜は静かだ 。静かなのに、耳の中だけが昼のままだった 。
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公式HP:アラウコの叫び
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