泡立つ脳

伊阪証

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倫理を外れて

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照明が、白く交差した。
スモークが舞い、観客席のざわめきが波のように寄せては引いた。その中心に、ミナがいた。細い脚に光を受けながら、スタンドマイクの前に立ち、ゆっくりと息を吸う。
いつものように、笑っていた。
袖から出てくる直前、スタッフが心配そうに声をかけていたが、ミナは平気だと答えた。いつも通り。いつもの声を届けにきただけ──そう言って、彼女は笑った。
この日のライブは、告知もほとんど行われていなかった。観客の大半は知人関係や医療チーム、数人のファンと関係者。演出も控えめ、音響も最小限。だが、それでも舞台は存在していた。彼女のためだけに、そこにあった。
一曲目は滑らかだった。声もまだ保たれていた。二曲目、サビの途中で少しだけ掠れたが、誰も気にしなかった。むしろそれが、彼女らしさだと思った者もいた。
三曲目の中盤、伴奏の上で、彼女の声がふと遅れた。まだ他の人は気付けなかった。
四曲目で、音が外れた。薬の副作用か。
五曲目──立ち位置を変えるための一歩を踏み出そうとした瞬間、彼女の膝が崩れた。
観客席がざわめいた。演出と受け取るには、不自然な沈黙。ミナの肩が揺れ、マイクに手を伸ばしかけたが、それも空を掴んで止まった。手が、上がらない。言葉が、出ない。
スポットライトだけが、彼女を照らしていた。眩しすぎるほどに。
スタッフが走るより前に、何人かが立ち上がろうとした。だが、それよりも早く、ミナの身体がその場に崩れ落ちた。照明が遅れて落ち、音楽が止まり、静寂だけが会場に満ちていった。
──歌では、治らない。
医療の世界には、「笑いが治療になる」「音楽が免疫を高める」といった言葉が並ぶ。それが希望のように語られ、研究もなされている。確かに有効な場面はある。効果が出る例も、実際にある。
けれど、この病だけは違った。
彼女が抱えた病は、身体のなかで静かに、確実に脳を削っていく。免疫も、意志も、記憶も──声も──そこに抗体を持たない。どれだけ明るく笑っても、どれだけ音に託しても、その手は届かない。
“癒し”という概念そのものが、この病の前では無力だった。
ステージの上で、彼女はただ崩れ、手だけをわずかに伸ばしていた。届かない何かを掴もうとするように。
透は、その場にいなかった。
彼は研究室にいた。病の構造を崩すための、新しい理論を書き起こしていた。ステージのことは、報告で知らされることになる。
だが──この瞬間。
誰もが、もう“終わりが始まっている”ことに、初めて気づかされた。歌では届かない場所が、確かに存在することを。そして、そこにミナが──到達してしまったのだと。

ミナが倒れてから、まだ二日しか経っていない。それでも、透の周囲は激変していた。
当初、透がアリス経由で病状の悪化を医療関係者に連絡した際、それは限られた範囲で共有されるはずだった。彼女の容体は、誰にでも明かせる情報ではない。だが、翌日──突如として彼の名前と研究内容が、幾つかのニュースサイトで「独占的に」取り上げられた。
「・・・透君?」
記事の冒頭には、「若き研究者が不治の病に挑む」「音楽家との静かな闘病支援」といった見出しが躍り、読み進めれば理論の先進性や社会的影響、倫理的懸念にまで踏み込んだ詳細な考察が続いていた。
「アリスさん、これは何が・・・?」
「透君が・・・彼女の治療法を恐らく確立した。でも、来ないのはおかしい・・・。」
なぜ流出したのかは分からない。だが──その情報は、“確実に意図を持って”広められていた。
奇妙なことに、それと同時に、透の元には各方面からの資金援助の申し出が相次ぎ始めた。海外の財団、AI企業、老舗の医療機器メーカー、さらには個人名義の多額の寄付まで。
「・・・チームが無駄足だと切り捨てられるのを警戒して裏切ったか!?」
研究室の端末には、秒単位で更新される寄付情報と問い合わせが絶え間なく流れ込んでいた。サーバーの処理速度すら遅くなるほどの通信量。その異様な熱量の中に、透はひとり、静かに座っていた。
「・・・透!」
疲弊していた。けれど、同時に──興奮してもいた。彼は眠っていなかった。ミナが倒れてから、正確には52時間以上、目を閉じていない。食事もとっていない。だが思考は止まらなかった。目の前で瓦解しかけていた希望を、もう一度かたちにするために。
そして──彼は辿り着いた。
プリオン病。正常なタンパク質が異常プリオンによって構造を変えられ、脳神経に壊滅的な影響を及ぼすこの病に対し、透が設計したのは・・・。
結局、タンパク質の構造の際であるなら、増産してしまえばいい。
そのために彼が構築したのは、特定の指示タンパクを受け取った際に“異常プリオンの生産を過剰にする、同時に身体全体に補充を頻繁化、エネルギー切れは酷くなるだろうが・・・。
神経細胞だけでなく、筋肉、皮膚、内臓組織──加齢すら制御可能な特性を一部に見せ始めた。
彼はまだその意味を誰にも伝えていなかった。この技術が、回復の医療を越えて、「永続性」や「若さの保持」といった極端な応用まで射程に入れてしまうことを。
どれだけ革命的であっても、それがミナに届かなければ意味はない。彼にとってのゴールは、ただそれだけだった。
──それでも。
システムを一通り書き上げ、シミュレーションを実行したその瞬間、透の体内で何かが途切れた。
静かだった。
端末の光が流れる中で、彼の身体が、ふっと前のめりに傾く。椅子の上で姿勢を保っていた彼の腕がだらりと下がり、次いで、重力に従うように身体ごと崩れた。
無音の倒れ方だった。呼吸はあった。心拍もかろうじて維持されていた。だが、その脳はすでに“活動をやめよう”としていた。
透もまた、限界だった。
誰よりも思考し、誰よりも耐えて、そして、誰よりも先に倒れた。
研究室の灯りはまだ消えていない。だが、その中心にある意志が、今、静かに横たわっていた。
「・・・よく頑張った・・・。」
アリスは、そう告げて抱き留める。
資産家の真剣な眼差しを受け止めるように、これまで検討されてきた幾つかの技術案を順に語った。彼女自身が関与したものもあれば、他所の研究者が提案した案もある。そのいずれにも、救いたいという祈りと、冷徹な見積もりとが交錯していた。
まず挙げられるのは、ニューロン移植だった。
実験動物では機能回復の兆しがある。だが人間では、接続の精度も、定着の安定性も、倫理的制限も重くのしかかる。実用には、まだ遠い。
幹細胞による神経再生も取り沙汰された。
iPS細胞から視床の機能再構築を図る案だが、病巣が深すぎる。加えて、脳内の空間配置を保つ制御技術が追いついていない。時間がかかりすぎる。
ナノロボットによる修復は、最も未来的な案のひとつだった。
分子サイズのロボット群が損傷部位に直接作用する構想は魅力的だが、その制御系と安全性は未だ空想に近い。実現性は、ほぼゼロに等しい。
透は、常に複数の線を並行して考えていた。中には今となっては現実性の薄い案も混ざっていたが、それでもどれも彼なりの覚悟と緻密さがあった。
神経構造の破壊を逆手に取る形で、タンパク質の結晶化による記憶の固定を目指したこともある。だがそれは、変化を受け入れない脳を作るということで、結局は「ただ生きているだけ」に近づいてしまうという懸念があった。
導電性の高い微細素材を使い、神経線維を人工的に補修する案も出た。ナノレベルのポリマーで電気信号を導くというものだったが、現実には異物反応の問題がどうしても解決できなかった。
さらに、上位中枢の回復が困難ならば、脳幹から認知系を補助する──という極端な思考にも至ったようだった。確かに生命維持は可能だが、それでは彼女が彼女である理由が、全て置き去りにされてしまう。
磁場共鳴を利用して微小管の活動そのものを外部から調律するという試みもあった。量子干渉を視野に入れたアイデアだったが、これは装置のサイズと精度の限界によって、今は現実性が薄いと判断された。
また、光刺激による記憶の定着促進──音楽的訓練のように脳へ焼き付ける方法──も考えられた。だがこれも、保存には向いても、再生や回復には届かない。
いずれも透の頭から零れ落ちた断片だ。だが、それらは決して夢物語ではなかった。彼にとって「現実と夢」の境界線は、努力と執念だけだったのだから。
機械義体の導入という極論も一部から出た。
記憶や思考を外部へ移し、意識そのものを再構成するという仮説的アプローチ。だが、その前提となる「記憶の総体」が未だ正確には定義されていない。
現段階では、机上の空論。
そして──アリスは、ためらいながら最後の一連に触れた。
透が進めている技術群。彼だけが、これらを「現実」と信じて組み上げている。
プリオンタンパク質による神経構造の制御。
異常プリオンの増産を逆手に取り、特定の信号を受けた細胞が構造の恒常性を保つよう設計された代謝モデル。
可能性はある。ただしリスクも、致命的に高い。
CaMKⅡを記憶構造と見なした保存モデル。
記憶を担う酵素構造の再現・補強によって、思考と認知の再構築を目指す。
根拠はある。ただし未解明な領域が多く、仮説としては非常に繊細だ。
微小管と量子現象の連関を視野に入れた信号伝達理論。
量子脳仮説に基づき、記憶や意識が微小管内で保持されているという構想の延長。
科学というより思想に近い。だが、透はそれを実装に乗せ始めている。
アリスは、資産家の反応を伺うように視線を向けた。
どれもが危うい綱渡りだった。だが同時に、それ以外にもう残された道は、ほとんどなかった。
「・・・ああ・・・これは・・・。」
「・・・。」
「これでは・・・空想的過ぎる。」
資産家視点でも分かる、ナノボットはガン対策でも使用されているが修復では間違いなく役に立たないだろう。
彼は所詮、どこまで言っても数学者なのだ。
そして、カラーコピーには涙の痕が残り続けていたのだ。

・・・一先ず、現実的なのはタンパク質の強制的な補充とニューロンに関しては移植、IPS細胞の利用、オルガノイドの利用か。
「この計画が基準らしい。」
「今動かせる金はこれに使えばいいのか。」
「いや、半分までだ。医療機械がまだだ。」
「・・・医療機械か。しかし、ネット上を見る限り相当妨害されるだろうな。」
「・・・億を掛けて妨害しても、それ以上のリターンになりうるからな。」
現時点で偉人としての素質がある彼だが、他の学問に引き裂いた結果がこの非現実的な解答である。
数学は半ば哲学の理論であり、科学とはまた別の思想であるが・・・どちらも信仰で成り立つものであるというのは相変わらずだ。
「ここからはプロの仕事だ、彼が理想を夢見るなら、理想を叶える為に最大限の努力を・・・だな。」
「・・・うん?」
「どうかしたか?ローガン。」
「・・・いや、この資料なんだが・・・。」
資産家は書類仕事の慣れからある違和感に気付いていた。紙の色が変わったにしては、厚さが合わない。
「立ち入れるのは彼とチーム以外ない、プリンターは紙の細かい枚数までチェックされている・・・。ゴミ箱を。」
「・・・通信機だ、情報盗難用の。恐らく透の目を盗んで付けて、それに気付かれて剥がされたが実験を優先、その結果・・・。」
「薬を飲まされて、あのザマだ。」
「資料が三つ飛んでいる、しかもページ数で言えば数百、流出したのはこれじゃないか?」
「・・・証拠も残らない、下手すればかなり強いものだ、記憶を一時的に失うどころか生涯に影響しうるぞ。」
それが一番マズい。更に、下手すれば自分の行動は美談ではなく悲劇になる。助けられているかどうかとその価値は全く違うのだ。
・・・プリオン病はどうにか解決する病ではなく、予め抑制しなければ手遅れになる・・・そういう病である。既存の治療法は全て通用しない、その上に感染や発症も起きる確率自体がほぼない。
正直、これに向き合うのは無駄だと言って差し支えない。
しかし、別の感染方法が起きたら?人の手抜き次第で幾らでも発生しうるし、様々な手段で達成しうる病である。

部屋の空気は重たかった。機器の光だけが青白く机の上を照らしていたが、その中心にいるべき男はもういない。椅子は引き倒されたまま、床には透の名残が静かに残っている。
アリスはその場に膝をつき、淡々と記録装置の電源を落としていく。一方で、ローガンは何かを探るように、整頓されたはずのデスクへと手を伸ばした。
「彼のファイルはここだな・・・。」
指先で引き出しを開く。紙の書類はほとんどなく、光ディスクと、古いUSB端子の束、そしてメモ帳。驚くほど整理されていたが、それが逆に不自然だった。あの透が、急にこんな整頓をするだろうか。
「根こそぎ持ってかれたか、なんて酷い。だが、盗まれなかったものも多いな・・・。」
ローガンはそう呟くと、ディスクの一枚を手に取った。無記名のそれは何かのバックアップだろうか。軽く振っても音はせず、慎重に光へ透かすと、外周部に小さく文字が彫られているのが見えた。普通のラベルではない。彫り込まれたものだ。
アリスが立ち上がり、そのディスクを覗き込む。
「それ・・・見覚えがないわ。いつの間にあんなのを?」
「多分、最近だ。いや──わざと、見せなかったんだろう。」
ローガンは言った。その目には、薄い怒りと、冷静な敬意が混ざっていた。現実の研究としては、あまりに飛躍しすぎている先のタイトル群。読めば読むほど、ありえない言葉が並んでいる。だが、書き方そのものには奇妙な規則性があった。一度読み終えたところで、ローガンは顔を上げる。静かに口を開いた。
「・・・これ、暗号じゃないか?」
「え?」
アリスの声は少し震えていた。ローガンは構わず言葉を継ぐ。
「彼は数理学の人間だろう? だから少し思ったんだ。自分も経験がある。」
ページの中央に書かれた数式を指差す。
「・・・まさか。」
「現実的でない内容に、暗号がある。」
そして、ローガンは手に持っていたプリントをアリスに渡した。
「チームから引き抜く・・・これは任せたわ。」
アリスは小さく頷きながら、手元の端末を操作した。ローガンは椅子にもたれ、彼女の指先を見つめる。
「ああ。それで本題は?純粋に気になるんだ。」
問いかけには軽さがあったが、その視線には深い関心が滲んでいた。だがアリスはすぐには応えず、何かを読み込むように黙り込む。
「・・・ちょっと待ってね・・・。」
ページをめくる手が一瞬止まる。アリスの眉がわずかに動いた。普段の彼女なら見せない、微かな戸惑い。
「・・・これ、治療法でもあるけど・・・治療法以上に・・・。」
視線を落としたまま、言葉が空中でしばらく浮いていた。ローガンが身を乗り出す。
「どうしたんだ?」
彼の声は静かだったが、芯に重さを含んでいた。アリスはようやく目を上げる。
「・・・タンパク質の数を増やせば脳の性能を上げる・・・言わば、プリオンの克服。ストレス等も記憶しなければいけないけど・・・それ以上に・・・あまりにも。」
声に感情が乗っていた。誇張ではなく、本気で驚いている様子だった。しばらくの沈黙の後、彼女は言葉を絞り出す。
「・・・人類の今後が変化する技術になりうるわ。」
その言葉は、静かな確信として響いた。研究成果の一端が、単なる病の治療を超え、進化の扉に手を掛けていることを──ローガンもまた、理解し始めていた。
彼は、彼女の治療と同時に、生命として一線越えさせてしまうという恐怖に遭遇したのだ。
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