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月下、陽光の昇りようを知る
彼岸花
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夕方になると、天乃宮学園のガラス壁は茜色を深く吸い込み、廊下の床に長い光の帯を敷いた。その帯を踏み越えるたび、靴底が柔らかく鳴る。僕は職員棟の奥――清潔区画の前に立っていた。目的地は、澪と外界をつないでいる唯一の物理的ルート、パスボックス。だが、ここに来る前から僕は知っていた。ここは“通すための箱”に見えて、実際は“通さないための工程”そのものだ、と。
担当教員が淡々とした口調で最終説明をする。「入庫、予備洗浄、薬液ミスト、接触時間管理、乾燥、紫外線、最終スキャン。工程は可変ですが、結果は一つ。『安全』が担保されるまで中へは行かない」――言葉の端に冷たさはない。けれど、言外に「あなたの気持ちの形はここではいったんゼロに戻る」とでも言われている気がした。
「まずは“見て”理解しよう」
教員の提案で、白紙を一枚トレイに置く。何も書いていない紙。けれど僕の中では「手紙」という形で既に意味が宿っている。透明のシャッターが滑り、箱の内奥でランプが黄色に灯る。わずかに遅れて、きめの細かい音――霧の噴出音が耳の奥をくすぐった。
ミストは目に見えないノイズの粒として、やがて紙面の白に影を生んだ。ささやかな湿りが繊維の間をつなぎ、反射の質が変わる。次に、白が「張り」を失った。表面の微細な凹凸が均され、薄膜のようにぬめり、端がわずかに波打つ。乾燥工程に切り替わると、空気の流れが狭い箱の中で渦を巻き、紙は平静を装いながら中心へ引かれていく。最後に、紫外線。短い瞬きのような強烈な白が差し込み、紙は一気にコシを失った。角がひと呼吸ぶんだけ黒ずみ、触れられていないのに触れられた痕のように、脆さが生まれる。吸気口が静かに開き、紙片は“汚染物”として認定された塵とともにフィルタへ吸われていく。
消滅ではない。破壊でもない。けれど、**結果は「届かない」**だ。
「これが、消毒だよ」教員が小声で言う。「この箱は“入れるために壊す”のではなく、“壊してでも入れない”ための仕組み。分かるね?」
僕は頷くしかなかった。理屈として知っていたことを、いま、目が身体へ教え直している。喉の奥で飲み込んだ音が、肺に張り付く。
背後で、メイク研究会の先輩が腕を組んだ。「じゃあ、ハードケースなら? 完全密閉のプラとか金属とか」
報道班の彼が即答する。「プラは白濁する。素材によっては薬液で応力割れ。中身まで届かなくても『不可逆変質』扱いでアウト。金属は紫外線が届かないから“消毒成立せず”でアウト。規定で弾かれる」
舞の子が付け加える。「布は繊維が潰れて終わり。糸と糸の間に残る想いとか、そういうのこそ、この箱は嫌う」
僕は三人の横顔を見た。誰の目にも嘲りはない。むしろ、一度はそれぞれの身近なものをここで試し、同じ説明を受け、同じ映像を見て、帰っていったのだと分かる眼差しだ。最初から諦めていたわけじゃない。**みんな、関わろうとした。**それでも、通らなかった。その積み重ねの果てに、今は遠隔のモニターが“普通”になった。
「プレゼント、カード、本、写真、折り紙、プリントアウト……なんでも来たよ」教員は箱の上に肘を置かず、正面に立ったまま呟く。「誰も責めなかった。誰も笑わなかった。ただ、みんな『見て』から、遠隔に切り替えた。相手の空気を乱さないって決めたんだ」
パスボックスの側面に埋め込まれた小窓に、僕の顔が二重に映る。手前の僕は幼い。奥の僕は硬い。二つがうまく重ならない。僕は、次の工程――“説明されなかった例外”を想像した。液体の手紙は? 匂いは? 音は? 光は? 「入れる」ベクトルを少しでも違えることはできないか。
「雨野君」教員が僕の思考を戻す。「ここでやめてもいい。『知った』という事実は、十分な前進だ」
「……いえ。知ったから、やっと次に行けます」
言葉にしてみると、思ったより静かな声だった。体の奥で、何かが形を変える音がする。諦めじゃない。反発でもない。適応に“別の角度”で加わる意志だ。真っ向勝負で扉を叩くことをやめて、壁の性質を測り、壁の表面に文字を書く。中へ入れないなら、外から見せる。――それはまだ“方法”にも“計画”にもなっていない。ただの予感。けれど、充分だった。
いったん区画を離れ、僕たちはモニター面談の記録室へ向かった。遠隔が“普通”になるまでの、短くない歴史が残っている。入院中の子がクラス発表に参加できるように編み出されたテンポ。声の高さを互いに合わせる足場。相手の一日のリズムにこちらの生活を寄せる工夫。画面越しでも、ちゃんと“隣”になるための技術。ノウハウの束の向こうに、疲れ果てて椅子にもたれる何人もの背中が見える気がした。**冷徹でも無関心でもない。**ただ、続けるために選んだ一番確かな道だ。
閲覧端末を閉じると、窓の外は群青に傾いていた。四階の左から三つ目の窓――昼間よりもよく分かる。そこに、生活の断面が灯っている。僕は手すりに肘を置き、斜め上を見た。遠い、のではない。届かないのだ。距離ではなく、手段の問題。
報道班の彼がぽつりと言う。「“直接渡せない”って、すごく雑な言い方だよね。本当は“直接渡すという概念が、ここでは定義できない”って話でさ」
舞の子が肩をすくめる。「だから“間接”でやるしかなかった。舞台の袖から支えるみたいに」
メイクの子は、僕の横で静かに言葉を置いた。「でも、光は、間接じゃないよ」
僕は横顔を見た。彼女は窓の外、白く浮いた校舎の壁を見ている。「光は、直接。触れなくても“届く”。間を満たす。消毒も嫌わない。だって、この箱の向こうにあるのは、いつも光でしょ?」
胸の内側で、何かがはっきりと輪郭を持った。光。薬液でも布でも金属でもなく、壁の表面を滑るもの。パスボックスの規定が扱うのは搬入物で、光は搬入物ではない。届けるのではなく、示す。入れるのではなく、見せる。
教員が微かに笑った。「そこまで言えれば、今日は十分だ。遠回りに見えて、一番早い」
「先生」僕は正面を向く。「――明日、準備をします」
準備、と口にした瞬間、頭の中に連鎖が走る。理科室の棚に眠っていた蛍光マーカー。黒い樹脂キャップの下に潜む小さな芯。アルコールで抽出して薄めると、乾けば透明で、紫外線でだけ浮かび上がる夜のインク。文化祭の大道具箱に混ざっていたペン型のブラックライト。予備電池。風で紙が煽られないように留めるテープ。滑り止めの手袋。膝と肘の保護具。登るための道具ではない。落ちないための道具。
外に出る。夜気は昼の喧騒の名残を静かに洗い流し、校庭を薄い銀で覆っていた。芝の端に落ちた月光が、一本の糸のようにまっすぐ伸びる。四階の窓の位置を、僕は身体に刻み込む。庇、縦樋、避難梯子の根元、手がかりの感触を目で触る。壁は敵じゃない。壁の性質を測り、壁と“共演”する。
「無理は、しない」自分に言い聞かせる。「無理は、“下手さ”の別名だ」
携帯端末に自分用のメモを作る。
――明日、理科準備室 / 蛍光マーカー抽出
――ブラックライト動作確認 / 電池
――紙:厚手・薄手の比較 / 風対策
――練習:暗室で文字可視化 / 距離5m、10m
――装備:手袋、膝肘、靴底、テープ
――ルート:踊り場→庇→樋→窓縁(帰路の方が危険)
――言葉は短く(光は長文に弱い)
――澪のために、僕のために(見せるのは“彼女だけ”)
画面を閉じると、夜が一段濃くなった。どこかの教室で電源が落ち、別のどこかで保安灯が点く。学園という大きな生き物が、ゆっくりと姿勢を変える音がする。僕は手すりから手を離し、踏み出した。足音が、さっきよりも軽い。知ったことの重さが、逆に身体を空けてくれる。
廊下の角を曲がると、いろはが壁にもたれていた。驚かない。彼女は大抵、僕が立ち止まる場所に先回りしている。
「どう?」とだけ問われて、僕は短く答える。「分かった。入れないって、やっと身体で分かった。だから、見せる」
いろはは口元だけで笑い、「じゃあ、私の役目は“整える”だね」と言った。「手袋、滑り止め、髪はまとめる。紙は厚手と薄手を両方。風の癖は校舎の角で変わるから、先に歩く。――ほら、明日の君、もう少しだけ綺麗に」
そう言って、彼女は僕の前髪を指で摘み、耳にかけてくれた。視界が少しだけ広くなる。夜の光が、まっすぐに入ってくる。
**渡せないからこそ、渡る光がある。**その言葉が、胸の中央に静かに座った。遠隔のモニターが当たり前になるまでに培われた“隣にいる技術”は、これからも続ける。けれど同時に、壁の外から“君にだけ見える”光で、僕は僕の番をやる。その両方が、きっとこの学園の正解だ。
パスボックスの透明な扉は、もう背中にある。僕は振り返らない。廊下の先、夜の窓に映る自分の輪郭は、昼よりも薄く、そして昼よりも確かだった。明日、僕は夜のインクを作る。明日、僕は光の手紙を書く。明日、僕は壁の外から彼女に会いに行く。
そう決めて、僕は深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。肺の中の空気が入れ替わるたび、世界が少しだけ、見える。
担当教員が淡々とした口調で最終説明をする。「入庫、予備洗浄、薬液ミスト、接触時間管理、乾燥、紫外線、最終スキャン。工程は可変ですが、結果は一つ。『安全』が担保されるまで中へは行かない」――言葉の端に冷たさはない。けれど、言外に「あなたの気持ちの形はここではいったんゼロに戻る」とでも言われている気がした。
「まずは“見て”理解しよう」
教員の提案で、白紙を一枚トレイに置く。何も書いていない紙。けれど僕の中では「手紙」という形で既に意味が宿っている。透明のシャッターが滑り、箱の内奥でランプが黄色に灯る。わずかに遅れて、きめの細かい音――霧の噴出音が耳の奥をくすぐった。
ミストは目に見えないノイズの粒として、やがて紙面の白に影を生んだ。ささやかな湿りが繊維の間をつなぎ、反射の質が変わる。次に、白が「張り」を失った。表面の微細な凹凸が均され、薄膜のようにぬめり、端がわずかに波打つ。乾燥工程に切り替わると、空気の流れが狭い箱の中で渦を巻き、紙は平静を装いながら中心へ引かれていく。最後に、紫外線。短い瞬きのような強烈な白が差し込み、紙は一気にコシを失った。角がひと呼吸ぶんだけ黒ずみ、触れられていないのに触れられた痕のように、脆さが生まれる。吸気口が静かに開き、紙片は“汚染物”として認定された塵とともにフィルタへ吸われていく。
消滅ではない。破壊でもない。けれど、**結果は「届かない」**だ。
「これが、消毒だよ」教員が小声で言う。「この箱は“入れるために壊す”のではなく、“壊してでも入れない”ための仕組み。分かるね?」
僕は頷くしかなかった。理屈として知っていたことを、いま、目が身体へ教え直している。喉の奥で飲み込んだ音が、肺に張り付く。
背後で、メイク研究会の先輩が腕を組んだ。「じゃあ、ハードケースなら? 完全密閉のプラとか金属とか」
報道班の彼が即答する。「プラは白濁する。素材によっては薬液で応力割れ。中身まで届かなくても『不可逆変質』扱いでアウト。金属は紫外線が届かないから“消毒成立せず”でアウト。規定で弾かれる」
舞の子が付け加える。「布は繊維が潰れて終わり。糸と糸の間に残る想いとか、そういうのこそ、この箱は嫌う」
僕は三人の横顔を見た。誰の目にも嘲りはない。むしろ、一度はそれぞれの身近なものをここで試し、同じ説明を受け、同じ映像を見て、帰っていったのだと分かる眼差しだ。最初から諦めていたわけじゃない。**みんな、関わろうとした。**それでも、通らなかった。その積み重ねの果てに、今は遠隔のモニターが“普通”になった。
「プレゼント、カード、本、写真、折り紙、プリントアウト……なんでも来たよ」教員は箱の上に肘を置かず、正面に立ったまま呟く。「誰も責めなかった。誰も笑わなかった。ただ、みんな『見て』から、遠隔に切り替えた。相手の空気を乱さないって決めたんだ」
パスボックスの側面に埋め込まれた小窓に、僕の顔が二重に映る。手前の僕は幼い。奥の僕は硬い。二つがうまく重ならない。僕は、次の工程――“説明されなかった例外”を想像した。液体の手紙は? 匂いは? 音は? 光は? 「入れる」ベクトルを少しでも違えることはできないか。
「雨野君」教員が僕の思考を戻す。「ここでやめてもいい。『知った』という事実は、十分な前進だ」
「……いえ。知ったから、やっと次に行けます」
言葉にしてみると、思ったより静かな声だった。体の奥で、何かが形を変える音がする。諦めじゃない。反発でもない。適応に“別の角度”で加わる意志だ。真っ向勝負で扉を叩くことをやめて、壁の性質を測り、壁の表面に文字を書く。中へ入れないなら、外から見せる。――それはまだ“方法”にも“計画”にもなっていない。ただの予感。けれど、充分だった。
いったん区画を離れ、僕たちはモニター面談の記録室へ向かった。遠隔が“普通”になるまでの、短くない歴史が残っている。入院中の子がクラス発表に参加できるように編み出されたテンポ。声の高さを互いに合わせる足場。相手の一日のリズムにこちらの生活を寄せる工夫。画面越しでも、ちゃんと“隣”になるための技術。ノウハウの束の向こうに、疲れ果てて椅子にもたれる何人もの背中が見える気がした。**冷徹でも無関心でもない。**ただ、続けるために選んだ一番確かな道だ。
閲覧端末を閉じると、窓の外は群青に傾いていた。四階の左から三つ目の窓――昼間よりもよく分かる。そこに、生活の断面が灯っている。僕は手すりに肘を置き、斜め上を見た。遠い、のではない。届かないのだ。距離ではなく、手段の問題。
報道班の彼がぽつりと言う。「“直接渡せない”って、すごく雑な言い方だよね。本当は“直接渡すという概念が、ここでは定義できない”って話でさ」
舞の子が肩をすくめる。「だから“間接”でやるしかなかった。舞台の袖から支えるみたいに」
メイクの子は、僕の横で静かに言葉を置いた。「でも、光は、間接じゃないよ」
僕は横顔を見た。彼女は窓の外、白く浮いた校舎の壁を見ている。「光は、直接。触れなくても“届く”。間を満たす。消毒も嫌わない。だって、この箱の向こうにあるのは、いつも光でしょ?」
胸の内側で、何かがはっきりと輪郭を持った。光。薬液でも布でも金属でもなく、壁の表面を滑るもの。パスボックスの規定が扱うのは搬入物で、光は搬入物ではない。届けるのではなく、示す。入れるのではなく、見せる。
教員が微かに笑った。「そこまで言えれば、今日は十分だ。遠回りに見えて、一番早い」
「先生」僕は正面を向く。「――明日、準備をします」
準備、と口にした瞬間、頭の中に連鎖が走る。理科室の棚に眠っていた蛍光マーカー。黒い樹脂キャップの下に潜む小さな芯。アルコールで抽出して薄めると、乾けば透明で、紫外線でだけ浮かび上がる夜のインク。文化祭の大道具箱に混ざっていたペン型のブラックライト。予備電池。風で紙が煽られないように留めるテープ。滑り止めの手袋。膝と肘の保護具。登るための道具ではない。落ちないための道具。
外に出る。夜気は昼の喧騒の名残を静かに洗い流し、校庭を薄い銀で覆っていた。芝の端に落ちた月光が、一本の糸のようにまっすぐ伸びる。四階の窓の位置を、僕は身体に刻み込む。庇、縦樋、避難梯子の根元、手がかりの感触を目で触る。壁は敵じゃない。壁の性質を測り、壁と“共演”する。
「無理は、しない」自分に言い聞かせる。「無理は、“下手さ”の別名だ」
携帯端末に自分用のメモを作る。
――明日、理科準備室 / 蛍光マーカー抽出
――ブラックライト動作確認 / 電池
――紙:厚手・薄手の比較 / 風対策
――練習:暗室で文字可視化 / 距離5m、10m
――装備:手袋、膝肘、靴底、テープ
――ルート:踊り場→庇→樋→窓縁(帰路の方が危険)
――言葉は短く(光は長文に弱い)
――澪のために、僕のために(見せるのは“彼女だけ”)
画面を閉じると、夜が一段濃くなった。どこかの教室で電源が落ち、別のどこかで保安灯が点く。学園という大きな生き物が、ゆっくりと姿勢を変える音がする。僕は手すりから手を離し、踏み出した。足音が、さっきよりも軽い。知ったことの重さが、逆に身体を空けてくれる。
廊下の角を曲がると、いろはが壁にもたれていた。驚かない。彼女は大抵、僕が立ち止まる場所に先回りしている。
「どう?」とだけ問われて、僕は短く答える。「分かった。入れないって、やっと身体で分かった。だから、見せる」
いろはは口元だけで笑い、「じゃあ、私の役目は“整える”だね」と言った。「手袋、滑り止め、髪はまとめる。紙は厚手と薄手を両方。風の癖は校舎の角で変わるから、先に歩く。――ほら、明日の君、もう少しだけ綺麗に」
そう言って、彼女は僕の前髪を指で摘み、耳にかけてくれた。視界が少しだけ広くなる。夜の光が、まっすぐに入ってくる。
**渡せないからこそ、渡る光がある。**その言葉が、胸の中央に静かに座った。遠隔のモニターが当たり前になるまでに培われた“隣にいる技術”は、これからも続ける。けれど同時に、壁の外から“君にだけ見える”光で、僕は僕の番をやる。その両方が、きっとこの学園の正解だ。
パスボックスの透明な扉は、もう背中にある。僕は振り返らない。廊下の先、夜の窓に映る自分の輪郭は、昼よりも薄く、そして昼よりも確かだった。明日、僕は夜のインクを作る。明日、僕は光の手紙を書く。明日、僕は壁の外から彼女に会いに行く。
そう決めて、僕は深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。肺の中の空気が入れ替わるたび、世界が少しだけ、見える。
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