STORM

2話 ブルガム

「あなた…まさか…師匠？」
「正解だ。」
リンは驚きと喜びの入り混じった笑顔で、少年に思い切り抱きついた。
「えぇ～！？」
兵士たちは声を上げて驚く。
「隊長に師匠なんていたのか？」
「俺も聞いたことなかったぞ。」
「あんな子どもが、隊長の師匠！？」
兵士たちは顔を見合わせ、呆然としていた。
そのとき、少年が一歩前に出て口を開いた。
「名前を言うのが遅れたな。俺の名前は――ゲノ・レイだ。よろしく。」
その名を聞いた瞬間、兵士たちはさらに動揺した。
「ゲノ・レイ！？！？」
「あの、世界一凶悪な魔物と言われた――？」
「ああ……間違いない……」
兵士たちは一斉に剣を抜き、ゲノに刃を向ける。
「復活など許さない！ここで仕留める！」
兵士たちが一斉に襲いかかる――が、次の瞬間。
ゲノは、一人の兵士の刀の上にしゃがんでいた。
「喧嘩……売って大丈夫か？」
その目は、全てを見透かすように冷たく光っていた。
それでも兵士たちは諦めずに攻撃を続けようとする。

だが――。

「やめて！！」
リンが割って入り、叫んだ。
「この人は“凶悪な魔物”なんかじゃない！」
「隊長……ですが……」
戸惑う兵士たちに、リンは真剣な表情で続けた。
「私が責任を持って、この人を管理します。もし人間に危害を加えるようなことがあったら……そのときは私を殺して！」
兵士たちはしばらく沈黙したのち、
「……そこまで言うなら……わ、わかりました」
ようやく剣を下ろした。
リンは安心したように微笑み、
「聞きたいことはたくさんあるけど……とりあえず、ブルガム王国に向かいましょうか」
ゲノは少し戸惑った表情を見せたが、すぐにうなずいた。

ブルガム王国。剣の王国と呼ばれ、「THUNDER」もその軍に仕えている。そして、世界三大王国のひとつでもある。

その道中――。

「ヒナって、覚えてる？」リンがふいに話しかける。

「ああ、覚えてる。」
「実はね……あの子、ブルガム王国の王女なの」
「王女！？ちょっと情報量が多すぎてパンクしそうだ……」
「ふふ。来週、王国成立200周年の王国祭があるの。そこで会えるわ」
「……まずは、王国に着いてからだな」

そしてついに、ブルガム王国の門が見えてきた。

ゲノは懐かしそうに街並みを見渡し、目を細めた。

「久しぶりだな……」
「カフェでも行きましょう。あなたたちはもう帰っていいわ」
兵士たちはまだ不安そうだったが、命令に従って渋々立ち去っていった。

カフェでは、案の定――
「なんでそんな姿になったの？」
「封印されたときの副作用的なものじゃないかと思ってる」
「それと……ヒナの王国祭、サプライズ出演してほしいの」
「……全国民からバッシング受けるだろ」
「わかってる。でも、国民の前じゃなくていいわ。ただ、ヒナに会ってあげて」
そして――あっという間に一週間が過ぎた。
いよいよ、王国祭の幕が上がる――！