16 / 104
過去との対話_有栖_3
有栖_3-3
しおりを挟む
その日は確か――金曜日の夜だった。次の日が休みで何となく夜更かしをしたくなって深夜にコンビニへ夜食を買いに外に出た。外は心地よい気温で、今年の夏は暑かったなぁ、とか思っていたから確か秋頃だったかな。
『私』の住んでいた地域はそこまで治安が悪いわけではなく、街灯も整備されていたので夜道が危ない、という感覚は薄かった。そこには格闘技の経験がある、という過信もあったと思う。
コンビニまでの道中、『私』が誰かに襲われることはなかった。
けど、肉まんとスナック菓子とチョコレートを買った帰り道。深夜一時頃だったかな。行きにも通った公園が帰り道では少し騒がしかった。
若い男達が周囲の迷惑も、自身の声の大きさも理解せずに騒いでいた。彼等がいた公園はベンチとブランコと滑り台、砂場が一つずつしかない小さな場所だ。そんな場所だからこそ若者達が酒盛りでもして騒いでいるのだろう、と思い、絡まれないように素通りしようとした。
「こういう奴って実は金を貯め込んでるって聞いたぜ」
「持ってても仕方ないだろ? 俺らが有効に使ってやるよ」
その声は明らかに誰かに投げかけるようで、威圧的なものだった。仲間同士の他愛ない雑談ではない。だから、『私』は一度素通りをしたあとで足を止めて、戻って物陰から覗くように確認した。
騒いでいる若者は三人。いかにも素行が悪そうな奴らだった。そんな彼等が取り囲んでいるのはベンチに座る初老の男性だった。おそらく五十歳ぐらいで細身でボロボロの紺の作務衣を着ていた。髪もヒゲも黒いけど手入れをしていないのか頭はボサボサで目が隠れ、口元は無精髭のようになっている。
一見、ホームレスのように見えたし、若者達はそのように勘違いしたのだと思う。だけど、『私』はその人が一般的に見かけるホームレスとは少し違うように見えた。なんとなく旅人のような、世捨て人のような……まぁ、家を持たず放浪しているという点ではホームレスに該当するのかもしれないけど。
そのように観察していると、その男性はそれはそれは面倒くさそうに吐き捨てるように言った。
「飯でも奢る気がないなら話しかけるなクソガキども」
『私』の住んでいた地域はそこまで治安が悪いわけではなく、街灯も整備されていたので夜道が危ない、という感覚は薄かった。そこには格闘技の経験がある、という過信もあったと思う。
コンビニまでの道中、『私』が誰かに襲われることはなかった。
けど、肉まんとスナック菓子とチョコレートを買った帰り道。深夜一時頃だったかな。行きにも通った公園が帰り道では少し騒がしかった。
若い男達が周囲の迷惑も、自身の声の大きさも理解せずに騒いでいた。彼等がいた公園はベンチとブランコと滑り台、砂場が一つずつしかない小さな場所だ。そんな場所だからこそ若者達が酒盛りでもして騒いでいるのだろう、と思い、絡まれないように素通りしようとした。
「こういう奴って実は金を貯め込んでるって聞いたぜ」
「持ってても仕方ないだろ? 俺らが有効に使ってやるよ」
その声は明らかに誰かに投げかけるようで、威圧的なものだった。仲間同士の他愛ない雑談ではない。だから、『私』は一度素通りをしたあとで足を止めて、戻って物陰から覗くように確認した。
騒いでいる若者は三人。いかにも素行が悪そうな奴らだった。そんな彼等が取り囲んでいるのはベンチに座る初老の男性だった。おそらく五十歳ぐらいで細身でボロボロの紺の作務衣を着ていた。髪もヒゲも黒いけど手入れをしていないのか頭はボサボサで目が隠れ、口元は無精髭のようになっている。
一見、ホームレスのように見えたし、若者達はそのように勘違いしたのだと思う。だけど、『私』はその人が一般的に見かけるホームレスとは少し違うように見えた。なんとなく旅人のような、世捨て人のような……まぁ、家を持たず放浪しているという点ではホームレスに該当するのかもしれないけど。
そのように観察していると、その男性はそれはそれは面倒くさそうに吐き捨てるように言った。
「飯でも奢る気がないなら話しかけるなクソガキども」
0
あなたにおすすめの小説
有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第五話。
マザー・エレクトロン株式会社が開催する技術展示会『サイバーフェス』
会場は『ユースティティア』と警察が共同で護衛することになっていた。
その中で有栖達は天才・アース博士の護衛という特別任務を受けることになる。
活気と緊張が入り混じる三日間――不可解な事故と事件が発生してしまう。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
有栖と奉日本『デスペラードをよろしく』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第十話。
『デスペラード』を手に入れたユースティティアは天使との対決に備えて策を考え、準備を整えていく。
一方で、天使もユースティティアを迎え撃ち、目的を果たそうとしていた。
平等に進む時間
確実に進む時間
そして、決戦のときが訪れる。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(X:@studio_lid)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる