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過去との対話_有栖_3

有栖_3-4

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「何だとコラァ!」
「ちょっと痛い目に合わせてやるよ」
「持ち金は授業料としてもらってやるよ!」

 その挑発に若者達は容易く乗った。というか、あえて乗った、と言った方が正しいのかもしれない。彼等としては暴力で相手を黙らし、ちょっとしたストレス解消もできて金も得られる……そんなチャンスだと思ったのだろう。

 ――これはマズイかも。

 安全地帯で傍観している『私』だったが、さすがにこの状況を見て見ぬ振りはしてはいけないと思った。
 一人対三人、という数的不利に加えて、初老の男性は細身だが若者達は健全でがっちりとした体格、と年齢と体格差のハンデまである。
 一瞬、脳裏に中学生のときに柔道部の顧問に手も足も出なかった場面がフラッシュバックした。それと同時に、仮に今『私』が助けに入っても意味はない、と察してしまった。

 ――助けを呼ぶ? 警察? いや、とりあえず大声を出せばあの人達も面倒ごとは避ける為に逃げるかも。

 そんなことを考え、どれが最良の選択か思考を巡らせた。だけど、それは衝撃の光景と共に強制的に止められることになる。
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