18 / 104
過去との対話_有栖_3
有栖_3-5
しおりを挟む
「ぎゃ!」
まずは一人の若者が宙に舞った。彼が殴りかかったと同時にカウンターで突き上げの掌底が顎に炸裂したのだ。放ったのは殴られそうになった初老の男性だ。地面からまるで槍が飛び出たかのように美しく、完璧なタイミングの突きだった。
それでまずは一人がダウンした。他の二人も驚きはしたようだが、仲間の介抱よりはまずは敵の排除へと身体が動いたようだった。
「この野郎!」
今度は背後から殴りかかるが、初老の男性はそれを受け流し、相手の服を掴んで力の流れを変えてもう一人にぶつける。
「うわっ」
「くそっ」
ぶつかって体勢が崩れた一人に対して、初老の男性は水面蹴りを放ち、尻餅をつかせた。その肩を踏み台にもう一人の顔面に跳び膝蹴り。まるで夜空にむかって打ち上げたかのうように鼻血を吹き出して仰向けに倒れた。そして、初老の男性は着地と同時に数歩駆け出し、まだ地面に腰をつけている若者のみぞおちをサッカーボールのように蹴った。激痛だけでなく呼吸が強制的に止められたので、彼はのたうち回った。
「痛みがひいたら、風邪ひく前にそいつら起こして帰れよ」
初老の男性はそう言って、若者達に背を向けた。
数的不利も体格差も感じさせない圧倒的な体術。しかも、最後の一人はあえて意識を飛ばさないという戦術と頭の回転の速さ。
『私』は驚き、硬直し、確かに興奮していた。
――何、今の体術。戦い方。あれさえ会得できれば……『私』も誰とでも戦える? 誰にも負けない?
そんなことを考えると同時に身体が動いて、足は進み、公園から出た初老の男性へと近づいていた。
「あの!」
「お?」
『私』の声にその男性は反応し、振り返った。
「何だよ?」
面倒くさそうに『私』へに問いかける男性はきっと通報だとか、人を呼ぶだとか面倒なことになるのだと思ったに違いない。だから『私』はそうじゃないことを、決して敵意はないことを伝える為に、こう言った。
「肉まんとお菓子、あとチョコレートもあります。一緒に食べませんか?」
まずは一人の若者が宙に舞った。彼が殴りかかったと同時にカウンターで突き上げの掌底が顎に炸裂したのだ。放ったのは殴られそうになった初老の男性だ。地面からまるで槍が飛び出たかのように美しく、完璧なタイミングの突きだった。
それでまずは一人がダウンした。他の二人も驚きはしたようだが、仲間の介抱よりはまずは敵の排除へと身体が動いたようだった。
「この野郎!」
今度は背後から殴りかかるが、初老の男性はそれを受け流し、相手の服を掴んで力の流れを変えてもう一人にぶつける。
「うわっ」
「くそっ」
ぶつかって体勢が崩れた一人に対して、初老の男性は水面蹴りを放ち、尻餅をつかせた。その肩を踏み台にもう一人の顔面に跳び膝蹴り。まるで夜空にむかって打ち上げたかのうように鼻血を吹き出して仰向けに倒れた。そして、初老の男性は着地と同時に数歩駆け出し、まだ地面に腰をつけている若者のみぞおちをサッカーボールのように蹴った。激痛だけでなく呼吸が強制的に止められたので、彼はのたうち回った。
「痛みがひいたら、風邪ひく前にそいつら起こして帰れよ」
初老の男性はそう言って、若者達に背を向けた。
数的不利も体格差も感じさせない圧倒的な体術。しかも、最後の一人はあえて意識を飛ばさないという戦術と頭の回転の速さ。
『私』は驚き、硬直し、確かに興奮していた。
――何、今の体術。戦い方。あれさえ会得できれば……『私』も誰とでも戦える? 誰にも負けない?
そんなことを考えると同時に身体が動いて、足は進み、公園から出た初老の男性へと近づいていた。
「あの!」
「お?」
『私』の声にその男性は反応し、振り返った。
「何だよ?」
面倒くさそうに『私』へに問いかける男性はきっと通報だとか、人を呼ぶだとか面倒なことになるのだと思ったに違いない。だから『私』はそうじゃないことを、決して敵意はないことを伝える為に、こう言った。
「肉まんとお菓子、あとチョコレートもあります。一緒に食べませんか?」
0
あなたにおすすめの小説
有栖と奉日本『不気味の谷のアリス』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第五話。
マザー・エレクトロン株式会社が開催する技術展示会『サイバーフェス』
会場は『ユースティティア』と警察が共同で護衛することになっていた。
その中で有栖達は天才・アース博士の護衛という特別任務を受けることになる。
活気と緊張が入り混じる三日間――不可解な事故と事件が発生してしまう。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(twitter:@studio_lid)
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
有栖と奉日本『デスペラードをよろしく』
ぴえ
ミステリー
有栖と奉日本シリーズ第十話。
『デスペラード』を手に入れたユースティティアは天使との対決に備えて策を考え、準備を整えていく。
一方で、天使もユースティティアを迎え撃ち、目的を果たそうとしていた。
平等に進む時間
確実に進む時間
そして、決戦のときが訪れる。
表紙・キャラクター制作:studio‐lid様(X:@studio_lid)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
花嫁御寮 ―江戸の妻たちの陰影― :【第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞】
naomikoryo
歴史・時代
名家に嫁いだ若き妻が、夫の失踪をきっかけに、江戸の奥向きに潜む権力、謀略、女たちの思惑に巻き込まれてゆく――。
舞台は江戸中期。表には見えぬ女の戦(いくさ)が、美しく、そして静かに燃え広がる。
結城澪は、武家の「御寮人様」として嫁いだ先で、愛と誇りのはざまで揺れることになる。
失踪した夫・宗真が追っていたのは、幕府中枢を揺るがす不正金の記録。
やがて、志を同じくする同心・坂東伊織、かつて宗真の婚約者だった篠原志乃らとの交錯の中で、澪は“妻”から“女”へと目覚めてゆく。
男たちの義、女たちの誇り、名家のしがらみの中で、澪が最後に選んだのは――“名を捨てて生きること”。
これは、名もなき光の中で、真実を守り抜いたひと組の夫婦の物語。
静謐な筆致で描く、江戸奥向きの愛と覚悟の長編時代小説。
全20話、読み終えた先に見えるのは、声高でない確かな「生」の姿。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる