有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_有栖_3

有栖_3-5

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「ぎゃ!」

 まずは一人の若者が宙に舞った。彼が殴りかかったと同時にカウンターで突き上げの掌底が顎に炸裂したのだ。放ったのは殴られそうになった初老の男性だ。地面からまるで槍が飛び出たかのように美しく、完璧なタイミングの突きだった。
 それでまずは一人がダウンした。他の二人も驚きはしたようだが、仲間の介抱よりはまずは敵の排除へと身体が動いたようだった。

「この野郎!」

 今度は背後から殴りかかるが、初老の男性はそれを受け流し、相手の服を掴んで力の流れを変えてもう一人にぶつける。

「うわっ」
「くそっ」

 ぶつかって体勢が崩れた一人に対して、初老の男性は水面蹴りを放ち、尻餅をつかせた。その肩を踏み台にもう一人の顔面に跳び膝蹴り。まるで夜空にむかって打ち上げたかのうように鼻血を吹き出して仰向けに倒れた。そして、初老の男性は着地と同時に数歩駆け出し、まだ地面に腰をつけている若者のみぞおちをサッカーボールのように蹴った。激痛だけでなく呼吸が強制的に止められたので、彼はのたうち回った。

「痛みがひいたら、風邪ひく前にそいつら起こして帰れよ」

 初老の男性はそう言って、若者達に背を向けた。
 数的不利も体格差も感じさせない圧倒的な体術。しかも、最後の一人はあえて意識を飛ばさないという戦術と頭の回転の速さ。
『私』は驚き、硬直し、確かに興奮していた。

 ――何、今の体術。戦い方。あれさえ会得できれば……『私』も誰とでも戦える? 誰にも負けない?

 そんなことを考えると同時に身体が動いて、足は進み、公園から出た初老の男性へと近づいていた。

「あの!」
「お?」

『私』の声にその男性は反応し、振り返った。

「何だよ?」

 面倒くさそうに『私』へに問いかける男性はきっと通報だとか、人を呼ぶだとか面倒なことになるのだと思ったに違いない。だから『私』はそうじゃないことを、決して敵意はないことを伝える為に、こう言った。

「肉まんとお菓子、あとチョコレートもあります。一緒に食べませんか?」
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