有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_有栖_3

有栖_3-8

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 そこから『私』は『先生』からオリジナルの武術を学ぶことになった。『先生』というのは名前を聞いても教えてもらえなかったこと、だけど、それでは呼ぶときに困る、ということになったので、

「テキトーに呼べ」
「じゃあ、『先生』で」
「……なんか恥ずかしいな」

 そんなやり取りがあった後、そう呼ぶことが決まった。

 先生との稽古は好きなときに来たら良い、と言われていたが大体は毎日は夜の十時から深夜の一時。『私』は親にバレないようにこっそり抜け出していた。特に何も要求されていないけど、一応食べ物を持って行くことにしていた。
 そこからの毎日は『私』にとっては衝撃的で、刺激的で、最高の毎日だった。『先生』が教えてくれる戦い方は革新的であり、理論的で、一対一や複数人をも考慮していた。タイミングや呼吸の仕方――教わったことは数知れない。ただ、それを会得する為に必要だったのは基礎の反復だった。『先生』が考えた基礎練習は打撃、投げ、極め技全てに置いて基礎を高めていくものだった。

「普通の人間なら挫けて、諦めてるぞ」

『先生』が『私』にその基礎練習を毎日欠かさずやっている。しかも、それを楽しそうにやっているのだから驚くより、呆れてそう言った。
 実際、『私』は楽しかった。その基礎練習はやればやるほどに自身のパラメータが綺麗にその範囲を広くしていくのが解ったからだ。それが五角形なのか六角形なのかは知らないけど、その形を保ったまま大きくなる――それが自覚できるのだから『私』は楽しくて仕方なかった。
 一方でこの武術――千変万化を開発した『先生』を素直に尊敬した。これはあらゆる格闘術の根幹となる戦い方であり、考え方だった。これを学べば、一通りの格闘術を習得することができるし、練習を続ければ一流になれる。
 これを世に広めればお金持ちになれるのではないか、と馬鹿な質問をしたことがある。

「こんな練習を肉体も精神も壊さず出来ている奴は世の中にそういない。俺が知っている限りではお前ともう一人ぐらいだ」

 そんな答えが返ってきたのを覚えている。
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