有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_有栖_3

有栖_3-9

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 先生との訓練は高校の三年間ほぼ毎日続いた。まぁ、時には休息が必要なので取るようにだったり、学業やその他の学生らしい友人付き合いもするようにだったり、と指示を受けたからだ。

 三年目には『私』の中で格闘術のスタイルが決まっていた。というより、先生の中では最初から決まっていたようだ。
 キックボクシングの打撃などの立ち技を主軸とし、そこから投げ技や関節技などに展開するスタイル。これは『私』がキックボクシングのジムに行っていたこと。それと、

「既にこのタイプを教えた奴がいる。その時は試行錯誤したが、今なら前例があるから効率的に教えられる」

 と、先生は言っていた。興味があったので一度だけ、過去に教えた人はどんな人なのか聞いたことがある。

「知らなくていいことだ。できることなら一生な」

 そう言った先生の表情に少しだけ後悔が混じっているように思えたので、『私』はそれ以上の追及はしなかった。

 このような感じで『私』の秘密の特訓は高校三年目の冬まで続いた。
 別れ、というのは唐突で年が明けて三が日の三日目に先生に挨拶をしにいったらいなかった。先生がいつもいた橋の下の檻のようなケースに入った蛍光灯には一枚の手紙が挟まっていて、『私』はそれが先生の残したものだと察した上で取り出した。

『悪いが旅に出る。教えるのはここまでだ、というかもう充分に教えた。お前は優秀な弟子だったよ

 俺が言うのも余計なお節介だが、もう少し青春だとか、学生らしい生活だとか……そういうのも少しは楽しんでおけ。俺が教えたことが『自分』の為に使われないことが一番だ。

 お前にとって俺との出会いもこの格闘術を学んだことも人生の寄り道であることを願う』

 二枚あった手紙の一枚目にはそのような別れの挨拶。そして、もう一枚には個人的に行えるトレーニングメニューが書かれていた。
 それを読み終えた『私』はいつも先生が座っていた蛍光灯の下に向かって一礼した。

 これが『私』と先生との出会いと別れだ。もう二度と先生と会うことはなかった。心残りがあったとすれば、組手で先生から一度も一本を取れなかったことかな。
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