有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

ぴえ

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過去との対話_奉日本_4

奉日本_4-7

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 中学生になってから、一つの考えを持っていた。
 それは、働けるようになったらこの家を出よう、ということ。それがいつになるのかは曖昧だったのは子供だったからだろう。
 高校を卒業したら頃合いか……それぐらいにしか考えていなかった。当時は金を稼ぐ術なんて解らなかったし、なんだかんだで父の稼いだ金で生きていることは解っていたから。

 だが、甘い考えの俺を神様は待ってくれなかった――いや、父は待ってくれなかった。

 中学二年生になったときに、父は退職。突然の決断に驚いたものだが、彼には考えはあった。
 それは忘年会で会った同僚から後日連絡が来て、事業を始めるので一緒にやらないか、と誘いを受けたそうだ。父としてもこのままではいけない、という思いがあったのだろう。彼は心機一転の気持ちで会社を退職。退職金もその事業の協力金として同僚に渡した。
 先に言っておくと、この話は詐欺ではなかった。始めたのは飲食店だったそうだが、一年目は好調だったと思う。その間は暴力の数も少なく、父は仕事に没頭していた。

 ただ二年目で近くに大手のファミリーレストランが建つと、次々と客は奪われていき、数ヶ月で赤字経営となった。詐欺ではないと言ったのは、この二人に飲食業をやる商才なんてなかっただけだから。何処かで修行したわけでもなく、ノウハウもなく軌道に乗せられるほど甘くはない。
 結果的に赤字経営をしばらく続けた後に閉店。そして、借金だけが残った。

 さてこの間――俺は何をしていたか?

 逃げ出す準備を画策していた。上手くいったなら家に、もうしばらく残ればいいが、そうでない場合はこの家にはいられないと思っていた。
 きっと上手くいく――なんて楽観的な考えは持てるわけもなく、寧ろ、失敗することを想定していた。結果は話した通りだ。
 生きていけるからこの家にいたけれど、それも危うくなったらこの場所にはいれない。全てを失った人間の暴力に耐えるなんて考えられない。今度こそ命が危ないかもしれない。

 そして、俺は中学卒業と同時に家を出た。父を残して……

 そこからの日々は艱難辛苦ではあったけれど、家よりはマシだった。だって、受ける苦痛も現れる困難も自分が生きる為に必要なことだったから。
 中学を卒業したばかりのガキでも働こうと思えば働けた。それが表社会であっても、裏社会であっても、選別する贅沢をしなければ。

 そして、俺は様々な人脈を作りながら――大人になっていった。
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