有栖と奉日本『ミライになれなかったあの夜に』

過去との対話_奉日本_6

奉日本_6-2

　伊東から電話があったあと、ある意味予想はできていたが店に陰険な嫌がらせが起こるようになった。
　無言電話、ゴミの散乱、デマ――犯人は明らかだが、そんなことをする暇があるならば少しでも遠くに逃げればいいのに、と呆れたものだ。

　当時の俺の判断は徹底的に無視をすること。相手にしないことだった。どうせ相手にはこんなことをし続ける余裕も時間もない。長期戦になれば勝手に自滅するか、諦めて離れるだろう。一応、一市民として警察とユースティティアに連絡はしたが、見回りを強化するとの一般的な回答を頂けたぐらいだ。

　俺はこれまで通り、営業を続ければ良い――そう考えていたのだが甘かった。いや、対応としては間違っていなかったのだろうが、それを上回るぐらいに伊東という男は愚かだった。そして、そんな人間が追い詰められた際には短絡的かつ飛躍した論理を持って行動をするのだ、と俺は学ぶことになる。