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奉日本_4
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奉日本は有栖が出て行ったあと、バーへ切り替える前に気分転換にコーヒーを飲むことにした。
キャニスターから豆をすくい上げるとハンドミルに入れて、ゆっくりと回す。がりがり、と豆が挽かれていく間に彼は考え事をしていた。
落の情報については、奉日本も知っていた。実の父である彼が息子を探したことも、見つからなかったことも、そのあと色んな人に騙されて、色んな人に利用されたことも。
結果的に命を落としたときには、何の感情もわかなかった。それほどまでに興味がなかったのだろう。
伊東が落に接触していたことも、我孫子によって殺害されたことも、後に知ったときには、
――割と近くにいたんだな
それぐらいにしか思わなかったのだ。だが、『レシエントメンテ』を止めるワクチンである『デスペラード』のパスワード、それも最後に関わっていた人物になるとは思わなかった。
「おっと」
いつの間にかハンドミルを回す力が軽くなり、音もなっていないことに気づく。蓋を開けるとマンデリンの香りが漂った。
――そういえば、あの人の好きな豆もマンデリンでしたね
毎朝、機嫌を良くする為に淹れていたコーヒー。上手く淹れられた日は笑っていた父が頭に浮かんだ。そんな彼が持っていたパスワードがCOFFEEだったのは偶然だろうか。
「……今となっては、もうどうでもいいことですね」
奉日本はフィルターの中に入れた豆に、ハンドリップでお湯を注ぐ。
今まで何度も淹れたコーヒーなのに、今日だけは懐かしい香りだと思い、ゆっくりと抽出される時間を穏やかな気持ちで楽しんだ。
キャニスターから豆をすくい上げるとハンドミルに入れて、ゆっくりと回す。がりがり、と豆が挽かれていく間に彼は考え事をしていた。
落の情報については、奉日本も知っていた。実の父である彼が息子を探したことも、見つからなかったことも、そのあと色んな人に騙されて、色んな人に利用されたことも。
結果的に命を落としたときには、何の感情もわかなかった。それほどまでに興味がなかったのだろう。
伊東が落に接触していたことも、我孫子によって殺害されたことも、後に知ったときには、
――割と近くにいたんだな
それぐらいにしか思わなかったのだ。だが、『レシエントメンテ』を止めるワクチンである『デスペラード』のパスワード、それも最後に関わっていた人物になるとは思わなかった。
「おっと」
いつの間にかハンドミルを回す力が軽くなり、音もなっていないことに気づく。蓋を開けるとマンデリンの香りが漂った。
――そういえば、あの人の好きな豆もマンデリンでしたね
毎朝、機嫌を良くする為に淹れていたコーヒー。上手く淹れられた日は笑っていた父が頭に浮かんだ。そんな彼が持っていたパスワードがCOFFEEだったのは偶然だろうか。
「……今となっては、もうどうでもいいことですね」
奉日本はフィルターの中に入れた豆に、ハンドリップでお湯を注ぐ。
今まで何度も淹れたコーヒーなのに、今日だけは懐かしい香りだと思い、ゆっくりと抽出される時間を穏やかな気持ちで楽しんだ。
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