ファットマンズアフタースクール

ぴえ

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第一章 正常性バイアス

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 ルイの考えは間違いではなかったし、一貫していた。
 行われる進路調査では就職を第一希望とし他を空欄にして提出。担任に空欄は駄目だと言われると、する気もなかった進学を記載していた。彼はそれが正しいと思っていたし、誰かが同情する素振りや否定するようなことをしても上手に見て見ぬ振りをすることができた。

 結果、ルイは望んだどおり進学という選択はせず、就職の道を選ぶ。そのことで神戸家の家計は安定し、弟と妹は無事に進学することが出来る――はずだった。そんな未来が待っていたのだろうが、その未来にはたどり着けない。それは彼が、いや、誰もが大学に進学もしくは高校を卒業して就職をし、生きていくようなこれまでの常識は瓦解するからだ。

 学力、財力、権力……様々な力がひしめき合うこの世界で、最も特出した力が生まれるからだ。

 それは『特殊能力』。今までの文明では解明できない、人智を超越した力。それが日本の一部の人間だけが使えるようになる。結果、これまでの常識は覆り、特殊能力を持つ者が人を越えた者として人類のトップに立ち、持たざる者を制圧していく。
 能力を持たざる者は戦い、抗う者もいれば、能力者の奴隷のように扱われる者も存在し、進んで媚びへつらう者も現れる。もちろん、何もできずに怯えて、逃げて生きる者も――。
 日本は世界から危険な国として認識され、特殊能力を持つ能力者達への対策ができるまでアンタッチャブルな国となる。

 それが2021年の二月から続く、この世界の現状だ。皮肉にも、ルイが有名企業の子会社の工場へと就職が決まり、あとは卒業を待つだけの日々を過ごすだけだったのに――だが卒業はすることなく世界は一変するのだ。能力者の存在が認められ、変わる。止められない。

 そして、ルイもまたその能力者の一人なのだ。自分には何もないと未来を諦め、家族の為に自分を圧し殺して生きることを選んだ彼が特殊能力を得たのは……神様の同情か、気まぐれか、それとも――。
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