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追憶_4

一色_二十二歳_2

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 方波見の指示どおり、俺は天使、という青年とバディを組んで仕事をすることになった。
 十八歳から『シニガミ』に所属する――俺と似たような彼に同情はなかった、と言えば嘘になる。しかし、それ以上に俺は転属、という甘い希望に目が眩んでいた。

 いや、転属、という名の組織から消去、という可能性も考慮せんかったわけやない。でも、たぶん、それでも良かったんやと思う。この状況から生死問わず脱却したかったんやわ。疲弊してたんかもな。せやったら、少しでも反旗を翻せばよかったのに。

 色々と考えているようで、考えてない……いや、考えないようにして惰性に生きる中で天使との出会いは一つの驚きやった。

 圧倒的な実力を持ってたんや。

 戦闘のセンスも頭の回転の速さも。
 そこには確実に鍛錬と努力があったやろうけど、他の人物はそれを認めたくなくなるほどに『天才』という言葉で片付けたくなる――それぐらいに優秀やった。恐怖を覚えるぐらいに。

 俺も『シニガミ』で任務に従事してきたから、実力にはそこそこ自負があったけど、天使は最初から俺と肩を並べてた。
 ホンマに教えるとしたら、ここで培った経験ぐらいやろか。意外と天使も俺の話や指示は聞いてくれたし、意見も言わんかったな。

 そんな天使とバディを組む中で、気づいていたけど目を逸らしていた部分がある。
『シニガミ』で仕事をすることで徐々に壊れていく人間性――それを俺は少しでも壊れないように努めていた。

 けど、天使は――最初から壊れてたんや。
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