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追憶_4

一色_二十二歳_3

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「お疲れさん、天使。何か気になることや体調に問題はないか?」
「大丈夫です」

 硝煙と血の匂いが混じる中で俺は何度か天使にコミュニケーションを試みたことがある。
 まぁ、なんというか初めてのバディでもあったし、後輩でもあったからな。心配もしてたし、気には掛けていたんよ。けど、天使の返事はいつも上辺だけやったな。
 アホみたいな冗談も言ったけど笑わんかった。アイツが笑ってたんは相手が力なく倒れたときか屈服したときぐらいや。
 気味が悪いと思ったこともあったけど、それでも話続けたな。空回りやった気もするけど、不思議なことに天使は俺の話は絶対に聞くねんな。
 最終的には呆れた溜め息ぐらいは返してくれるようになったわ。

 そんな日々を繰り返す内に方波見が俺の転属を急ぐようになっていった。

 当時はその意味が解らんかったけど、今なら解る。
 方波見は恐れてたんやと思う、俺が天使に悪影響を与えることに。

 方波見は天使に俺以上の素質を見出し、育て上げることに決めてたんやろな。
 警察の暗部の為に動く、『最強の人形』に。

 その為に、悪影響となる余計な思考や感情を与える可能性がある俺を遠ざけたかったんや。
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