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追憶_7

一色_三十九歳_3

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「最初はユースティティア内の目も厳しいと思うぞ」
 ユースティティアでの勤務初日、応接室でそう釘を刺してくれたんは佐倉、というユースティティアの出世頭やった。彼が俺をユースティティアに引き込むために色々と画策し、駆け回ってくれたおかげで随分とスムーズに転職はできたんやけど、ここからは俺の頑張り次第やという意味やろう。
「はい。では、これを……」
 そう言って、俺はとある資料を取り出し差し出した。
 佐倉さんが便宜を図ってくれたんは、その見返りがあるからやった。それが、この資料。
 ユースティティアの情報を警察へと横流しをしている内通者についてやった。俺は警察である程度の証拠を集めてきた。もちろん、誰にもバレずに。
 佐倉さんはその資料に目を通していく。そこに、
「やはり内通者は我孫子、という男です」
 と、互いに疑いを持っていた人物に間違いはないという答えを添えた。彼は一度頷くと、それでも資料の全てを猛スピードで読み解いていく。俺の言葉だけやなく、自身の中でも同じ回答になるか確かめてるんやろう。
 そして、全てを読み終えた佐倉さんは俺に笑ってみせる――と思ったんやけど、予想外にも渋い顔をして、大きな溜め息をついて頭を抱えた。
「え? どないしたんですか? 何かしら不備でも……」
 不可解な俺は率直に尋ねた。
「いや、違う。資料は完璧だ。問題ない。問題なのは『こちら側』だ」
「『こちら側』、というとユースティティア内ですか?」
「あぁ。恥ずかしい話だが、我孫子は今、別の問題を起こしている。確実に我孫子に非があるんだが、状況がややこしくなっているんだ」
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